『第14回ABCお笑い新人グランプリ』1993年1月15日放送分

難波で時間が空いたときは、ワッハの資料室でいつテレビ局に撤収されるか分かんないので、資料映像からこの時代の賞レースを中心に、懐かしい映像で、自分の第一次お笑いブームを振り返るのです。やはり僕の中では、1992年から1995年ぐらいの大阪のお笑いシーンというのは、自分の漫才やコントの原体験ですね。この時代に自分の好きなもの、そして今の大阪のお笑い界の問題点の元が、全て揃っていますね(笑)。メモとか出来なかったので、審査員とか覚えてないです。高田文夫がいたような気がする。

ジャリズム 漫才「動物と会話→ジャリズムのテーマ」

ジャリズムは次の年の印象も良かったんですが、この年はもっと良かったですね。ジャリズムは翌年の審査員特別賞ですが、もっと良い賞を貰っても良かったと思う。ただこのネタをジャリズム、最近まで同じようにやっていたのがなあ、FUJIWARAもこの時代のネタを、いまだにやっているけど、キャラクターギャグショーのFUJIWARAと、作家先生のナベアツのいるジャリズムじゃあ、事情が違ってくるよなあ。ただ当時の僕は、山下のツッコミが浜ちゃんのものまねだと言って、好きじゃなかったんですけどね。

チュパチャップス コント「旅館」

チュパはこの時代の代表作、もう隅々まで記憶していた(笑)。ビデオで繰り返し見たりして、100回見たと言っても言い過ぎじゃないからなあ、十数年ぶりに見て、ほとんど覚えていたことに感動しました。
しかしほっしゃん。宮川大輔も、二人とも全く変わっていない。そして二人ともムチャクチャかわいい、そりゃ中身は別にして、外見がこんなかわいらしい二人組がいたら、芸人でアイドルグループでもさせようという気になるわ(笑)。
チュパは今見ると、味わい深いですね。タレント性の高い二人組、いまの『爆笑レッドシアター』とかに入っていても、人気者になっていたと思う。ただこの二組はいまだにコンビ続けていても、どっちみちそれぞれピンの仕事が多くなって、今みたいな活動にそれぞれなっていたような気もします。それでコンビでは月に一回ぐらい、昔のネタをルミネでやるぐらいになってたかな?

やるじゃねぇかーず 漫才「バンド」

当時は大波乱という印象でしたが、いま見直したら納得、ネタとキャラの両方でドカンドカン受けてましたから、もう文句なしでしょう。2丁目芸人では、登場時の歓声が一番無かったのに、ネタ中の笑い声が一番大きいんだから、審査員としても印象良いでしょうし、漫才の内容もツッコミの矢部は、木訥な感じのクラシカルなツッコミで、浦井は一見すると松本・ジュニア病のようなボケなんですけど、少し違うんですよね、暗さがもう一歩、本当に深いところにある感じが、審査員しているような玄人もくすぐる感じがある。WACHACHAブームの前に解散したのが惜しまれる。
ただこの賞レースは、この前後の四年間、TEAM-0、ナインティナイン、この年のやるじゃねぇかーず、そして翌年のますだおかだと、四年連続で波乱の結果だったんだけど、その後に売れた人も売れなかった人も、全てこの結果自体は大英断の大成功ばかりだったと思います。

電車道 コント「漫才講座のビデオ」

あっここも前に向かってツッコむネタだった(笑)。
なんていうか電車道は、僕も当時のお笑いファンの常識として、当時大好きだったわけですが、多人数のお笑いユニットって、僕らの基準が完全に、電車道になってますね。
電車道より面白いか、奇抜か、新しいか、ちゃんとしてるか、そういうのが全て電車道が基準になっているし。プラン9を見たら「電車見たら思い出す」と言われるのも仕方ないと思う、似ているというか、影響受けているのがやっぱり一目ですわ。まあ実際に似たようなネタも多いですからね。
電車道は面白いです。ここと比べたら、プラン9超新塾パップコーンも全部ダメですね、ここに名前あがらなかった所は、比べるまでもないというところです。ただここまでべた褒めしますが、ただいまの大阪芸人の悪いところの原点は全部ある(笑)。
四人とも地味で、ネタがメタで照れ屋で、ボケは全部考え落ちだし、天丼も多用していますし(笑)。まあ電車道だった人達が、いま作家や養成所の講師になってね、後進を育てたり評価しているんですから、そうなって当然なんでしょうけど。

笑福亭鶴笑 パペット落語「西遊記

ここはリアルタイムの記憶が凄くあったので、もっと大爆笑を取ったイメージだったのですが、それって受賞後の二本目だったんですね。そっちは子供が目をキラキラさせながらみている絵が、何度もカメラで抜かれたし、場内も大爆笑、それに乗せられて普段より汗の量が多い、大熱演の印象が強かったので、この舞台も客席の中を走り回る大熱演だったのに、少し抑え気味に見えてしまった(笑)。
鶴笑さんは、この後でシンガポールやロンドンに渡って、海外での公演を重ねてきましたが、日本にもう帰られていると思うので、是非とも『レッドカーペット』とか、出てきて欲しいところです。

千原兄弟 コント「父とティッシュ配りのバイト」

僕は当時、千原兄弟が好きじゃなかったんですが、その中で唯一好きだったネタでしたが、今回改めて見て、さらに好きになりました。これは凄い笑えますわ。バカバカしいことこの上なくて、これはやっぱり、僕は好きですよ。大好きです。この路線で進化してくれていたら、大ファンになっていたと思います。
この年に賞あげても良かったと思いましたよ。翌年の電車のネタの頃は、もうダウンタウン病が加速されていましたけど、こういうネタでもっと評価されていたら、どうだったんだろうと思ってしまいました。
ネタも二人のキャラに合ってますし、せいじのこの頃のツッコミ、鶴の舞とか言われてた頃のは、やっぱり面白いです。ジュニアのボケで「ラーメン肘伸ばして二杯食べきった」というボケは、知ってたのに吹いて笑いました(笑)やっぱりこのネタは千原で一番面白い、電車のネタとかと比べたら、五段階はこっちの方が上です。

矢野・兵動 漫才「顔指される、他」

この年が初の決勝でラストチャンスだったそうですが、もう何ていうか、いまと一緒としか言えない(笑)。ビックリするぐらい、いまと完全に一緒でした(笑)。
ネタも「ゴリ」とかいまと一緒でしたね、違ったのは矢野さんの髪型と、「ゴリ」のボケを天丼にしてオチにしていたのが、ちょっとだけ若手っぽかった(笑)。

へびいちご コント「喫茶店

島川さん演じる喫茶店のマスターがホモのネタ。という説明しかできない(笑)。賞レースでシモネタはダメだよなあと思うけど、当時のもう一つの代表作「マイム」は、もっと賞レース向きじゃないからなあ。ただなんか「マイム」とこのネタ、僕の中で少しごっちゃになってましたね、このネタも最後に二人で踊って終わるし。へびいちごは年齢が行ってから、漫才だけになってますけど、いまもこの路線でコントやってた方が、ゆーとぴあさん的な面白さが出たような気がしました。オッサンなってるのに、最後は男同士で愛し合うようになって踊って終わり、そんなのオッサンなってやってる面白味ってあると思うんですが(笑)。

ダックスープ 漫才「CMに文句→格好付ける台詞」

ここはダックスープの世界、ナオユキさんの世界でしたね。世界観は当時から、ある程度出来上がっているのは流石でした。翌年に受賞は持ち越しますが、翌年の方が良い漫才だったから、それは良かったんじゃないでしょうか。
しかしダックスープのげんきさんとか、へびいちごの高橋さん、やるじゃの矢部さん、あとこの頃の矢野さんもそうでしたが、みんなこの時点ではツッコミ巧くないんですけど、華があるというか、色がある突っ込みの人が多いですね、辞めた矢部さんは仕方ないにしても、げんきさんとか、高橋さんが日陰な感じになっているのは、やっぱりもったいないですねこの三人には、評価しにくい色気みたいなのがありました。
とりあえずせいじと山下と矢野さんだけでも、何かイベントしてくれないかなあ、この三人の面白さを引き出すというか、引き出さなくても良いから、この三人でイベントやったら見に行きますよ、どんなにつまらないトークでも、絶対に面白いです(笑)。
そしてこの三人にへびいちごと、ゲストで松竹からげんきさんも呼んで、六人でイベントやって欲しいなあ、もう絶対に俺は観に行くよ、他何人ぐらい客が来るのか知らないけど(笑)。

結果発表

結果は、最優秀新人賞がやるじゃねぇかーず、優秀新人賞が矢野・兵動笑福亭鶴笑、審査員特別賞が電車道でした。僕が見ても、やるじゃ、千原、鶴笑、やのひょうは、横一線でレベルが高かったので、翌年にチャンスのある千原兄弟はおいといて、この並びの受賞は納得ですね。
ただ電車道は来年もあったはずだから、審査員特別賞はチュパでも良かったような気がしますね、先に見た二年後のゆんぼーもそうですが、彼らは今見た方が面白いですね。特にチュパは、レッドシアターでいまでも見たい感じでした。
いやでもこの年は本当にレベルが高くて、僕は13回、15回、16回、14回という順で見ましたが、この回が唯一、イヤホンを耳から離して「これは困ったなー」という思いにさせるコンビがいなかった。だからこの年の最優秀のやるじゃが解散している、二人とも芸人でないというのが寂しいですね。

ナインティナイン 漫才「友達を作るためのカウンセリング」

前年の受賞者によるゲスト漫才で登場、このネタだったのが凄く嬉しかったです。このネタは漫才の中では、当時の岡村さんの個性や特性が活きてるし、矢部さんも保護者的なポジションキャラが出て、やっぱり当時のナイナイは圧倒的に違いますね。この時期にこの違いに、大阪の関係者の多くが気付いていなかった。気付いていたのが藤本義一だけだった(笑)。というのは大阪のお笑い界の不幸の始まりでしたね。

ナインティナインのオールナイトニッ本 (vol.1)ナインティナインのオールナイトニッ本 (vol.1)
岡村隆史

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