「オールザッツ」の感想を読んで考えてみる

まあ単純に言ってしまうとキワモノ芸って、狙って出してくると大抵外すよね、ということでも良いのかも知れないんですが、それだけでは何なので、もう少し書いていきたいと思います。その前に前提となる過去のエントリーを紹介しておきます。

僕はこの雑誌での陣内に対するオールザッツに関するインタビューを高く評価しています。いやはっきりいって、この特集記事自体や他のインタビューはダメでしたが、陣内だけは現状の問題を凄く分かっていたし、結果的に去年末のオールザッツは陣内の含んでいた通りの結果になりました。

ヨイ★ナガメ:オールザッツ漫才2008

僕にとってのオールザッツの黄金時代というのは、オール阪神巨人の司会時代で、まだ若手トーナメントやる前の時代でした。というか若手トーナメントになってから温度が下がったので、はっきりいって今のネット世代のお笑いファンよりは、年齢的には違うんですけど、一世代前のこの番組のファンだと思う、だから視聴者としてはおそらく陣内さんと近い感覚があるからかもしれないんですが、僕は今のオールザッツは今回だけの問題ではないと思っています。
おそらく2008年のオールザッツは『「神様コント」や「エロ詩吟」をもう一度!!』というのが、出演者側も、番組演出側も、そして視聴者も期待していたことだと思うのですよ、でもそういうのって狙って出来るものじゃないよね、というのもあるんだけど、それはもう年末の大阪吉本のお祭り番組である、「オールザッツ漫才」でわざわざやることなのか? という事もあると思います。
だって現代は「あらびき団」とか、毎週のようにやっている時代なわけじゃないですか、オールザッツの一番濃いような要素を抽出した番組を、毎週やってる番組がある時代に、オールザッツという年に一度のお祭りがそういうことをすることが、差別化にはならないでしょう。僕は何度も言ってますが、「あらびき団」「爆笑レッドカーペット」「やりすぎコージー」「ジャイケルマクソン」といった番組は、昔のオールザッツの面白かった要素を巧く組み込んでますよね、そこに出ていた芸人や視聴者が、いま司会者やスタッフになったりしているんだから、当たり前といえば当たり前なんでしょうが。
そしてもうすっかり一週遅れの番組になっているのに、それを認識することが出来ないまま、「オールザッツは大阪の一番濃い部分を年に一度出してる祭りだ」なんて思っていては、それはさらに周回遅れを招くだけでしょう。
というか「やりすぎコージー」と「あらびき団」があったら、もう現状のままのオールザッツはいらないんですよね、この二つの番組の二時間スペシャルをつなぎ合わせた方が、おそらく「オールザッツ的なモノ」が好きな人に、よりレベルの高い求めるものを提供出来るでしょう。という番組自体の寿命とか存在価値という話は、まずしておきますが、この日の単体の番組として見ても、僕は演出上に大きな問題があったと考えています。

社会人が仕事もそっちのけでTVにRADIO:オールザッツ漫才2008(12/29) 〜その1〜

いやそりゃ今の大阪のお笑いファンは、ユウキロック知らんでしょう(笑)。M-1オンバトに出ていたのは、もう六年も前になっていて、その後にテレビ露出が、NHKぐらいでしか無いんだから、あと有名所が出ると盛り上がるというのは、健全なことだと思いますよ(笑)。普通のゴールデンの番組みたいになっている、ということですが、バッファロー吾郎がそれを言ってこの番組辞めたのは、もう何年も前の話なんだから、やっぱりそこでこの番組は陣内の言うように切り替えるべきだったと思うのです。
しかしソラシドやジャンクション、ミサイルマン、ヘッドライトを出す一方で、ドレッドノートやミルクボーイ、野球家族なんかを抜擢していて、その間の2008年にbaseよしもとのレギュラーになった層が、ほとんどバッサリと出演していない間がないという状況は、今回のこの番組のバランスを欠いた一番大きなミスだと思う。

社会人が仕事もそっちのけでTVにRADIO:オールザッツ漫才2008(12/29) 〜その2〜

実は今回はベテラン勢というか、中堅勢も結構酷かったと思うのですが、そんな中で後藤秀樹土肥ポン太の所だけは、僕も「あーオールザッツだなあ」と思いましたね、ちなみにリアルタイムではプラン9のネタ終わりで寝ました(笑)。

なんかこういう野爆になりたがってる人も今年多かった気するしな。
今年マジで全然正統派な漫才ってなかったんじゃw

これはもう「オールザッツ」だけでなく、いまの大阪のお笑いシーン全てに言えることだと思うんですが、リットン調査団とかシベリア文太とかは、別にあんな風になりたくてなった訳じゃないと思うんですよ、どちらかというと気が付いたらなってしまっていた、という所だと思うんですよ、あれはもう生き様とか運命に導かれた芸風だから、目指してなれるものじゃないし、なりたいと思った時点でなれない。
僕がバッファロー吾郎に対して醒めたのは、「あーバッファって、こういう風になってしまったんじゃなくて、こうなりたかったんだ」という事に気付いたからで、その辺の匂いは野性爆弾とか、中山功太の一時期のネタの傾向とかにも感じていますし、プチ野爆やプチ功太が凄い増えているのは、僕も気になっています。
結局こういうキワモノ芸みたいなのを、みんなネタとしてやっているんですよね、でもリットンさんやシベリアさん、例えばショージさんとかもそうでしょうが、もうあの人たちはネタとしてやってるんじゃなくて、生き様の表れとしてやっているんですよね、だからみんな中途半端なんですよ、極悪連合が賞レースになると普通の漫才する、というのがそれを一番分かりやすくしているんですが、賞レースになったら普通の漫才出来るというのは、身体の中からそれが出ていない証拠ですよね、所詮は頭で考えたキワモノ芸なんでしょう。
だから僕は極悪連合とかバイク川崎バイクが、「オールザッツを分かっているネタ選び」というのは間違っていると思うのです。普段飛び道具みたいな芸をしている人は、オールザッツでは正統派のネタしないとダメでしょう。極悪連合はオールザッツでやったネタを、ABCやNHKの予選でやって、こういう賞レースの予選でやってるようなネタを、スーツにネクタイでオールザッツでやるべきなんですよ。

社会人が仕事もそっちのけでTVにRADIO:オールザッツ漫才2008(12/29) 〜その3〜

ケンコバやたむけんに、この番組で爆発させたいと思うのなら、やっぱり芸人席には師匠クラスの芸人を並べて、出番順はトップとかにしないとダメでしょうね、超ホームでやりやすい時間帯にネタやっても、陣内が言うところの「ベテラン勢が身を削る」という状況にはならないですよね。
そしてジャルジャルが決勝で普通にネタやって優勝したのは、批判も多いとは思うんですが、僕は当然だろうと思うのです。
この番組でリットン調査団が、SNOBが、ぴのっきをが、未来世紀01・02が、ショウショウが輝いた時代は、みんな普通にネタをやっていたから、だから飛び道具が混ざると爆発したんですよね、みんながみんなで飛び道具をやっていたら、そりゃネタやってる方が目立ちますよ、笑福亭松之助師匠じゃないですが、「世間で長髪が流行ったら髪を切れ、世間で短髪が流行ったら髪を伸ばせ」というのは、やはり芸人において全ての基本なんだと思う。トミーズやハイヒールが普通にネタをしている中だからこそ、そういう事を一番やらなさそうな、圭・修がブリーフ一丁でタクシーのコントをやったから、芸人席が大盛り上がりになった。
あと「ルールの中で暴れる」というのは、僕はそんなに良い言葉だとは元々思っていないんですが、それは無しにしても、ここ何年かの大阪のお笑い界って、ルールの幅が凄い狭くなっているから、その中で暴れるというのは限界ありますよね、結果的にみんな小さい枠の中でやるか、最初から枠が見えていない不器用な人がやりすぎてしまう。もうそろそろルールから意図的に半歩外れるような人が出てきて欲しい。それをするには今の吉本の中堅は、賢い人が多すぎるんですよね、高橋とか$10とかプラン9とか、みんなルールの枠の境界線をギリギリ歩く術を身につけすぎている。
オールザッツ改革をしたいのなら、向こう数年のレベルダウンを覚悟して、旧うめだ勢を大規模リストラするという案もあるんですが、やっぱり陣内の言うように、ベテランも出るようなオール吉本のネタ番組に戻すべきじゃないかなあ? 五分ネタをする中堅から始まって、三分、一分とどんどん若手が出てきて、若手の中に突然SNOBやリットン調査団が混ざるというような、原点回帰があって良いのではないでしょうか?
何度も言っていますが、baseのオーディション組が一分ネタをしている合間に、SNOBやトクトコ杉岡みどりが出てきて、ガッツリとネタをするところが僕は見たい(笑)、それにそういう混沌がこの番組の失ったものを、取り戻すきっかけになるんじゃないでしょうか?

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オルタロープ

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