大阪の若手芸人を巡る環境の問題(1)〜『オールザッツ漫才』から考える

はっきりいって、今回は単なる昔は良かった語りです(笑)。そういうことなので、そういうのが嫌いな人は、この先読んでいかない方が良いと思います。
にづかさんSmileさんが、偶然にも同じ日にオールザッツの録画を観た感想を、Twitterでつぶやいていて、K助さんも少し前にオールザッツの感想をブログに書かれていたので、この番組の問題点というのを、はっきりと書き出した上で、いまの大阪の芸人、吉本の若手芸人の問題について、一応の回答を出しておきたいと思います。
僕は最近の『オールザッツ漫才』がダメな理由を、『splash!!』のオールザッツ特集号のスタッフ座談会とインタビューで、もう既に2008年の段階で感じて、ブログ記事にもしていたのですが、スタッフがいまだに昔の感覚で、同じようなものを作り続けられていると思い込んでいるのに、当時このインタビューや座談会を読んで、「この番組は大阪の元気な頃の匂いと勢いを残している」「大阪らしい笑いができている」「こんな番組はここしかない」といった言葉が、次々に出ていてビックリしました。でも明らかに昔のオールザッツじゃなくなってる。「大阪だけの笑い」のはずなのに、どうしてあんなに東京吉本の芸人を、ここ数年は毎年のようにあんなに沢山呼んでるの? という問いがないゆるいインタビューでしたけど、これ言われた時に、あのインタビュー受けていたスタッフは、お笑いファンを納得させられる答え持っているんですかね? 他の大阪のバラエティ番組見ていれば分かるけど、芸人以上に大阪のテレビのスタッフが劣化しているというのが、一番の理由だと思います。芸人の方にも問題はもちろんあって、それはこれから書いていくんだけど、その問題点を改善できない。問題があることにそもそも気付いていないことが、この番組の現在の最大の問題です。
芸人側の一番の問題はもうはっきりしていて、「中堅が安直な悪ふざけに終始している」ということに尽きるでしょう。オールザッツは芸人が悪ふざけする番組だったけど、覚悟を決めた悪ふざけをしていた。だけど現在のオールザッツの悪ふざけって、覚悟も何にもない、単にダラダラやっているだけの芸人と、普通のネタ番組と変わらない意識の芸人ばかりになってる。
だけど野性爆弾とか、土肥ポン太とかをメインに据えるというのも、なんか違う気がするんですよね、いやこの人達や後藤秀樹なんかは、オールザッツとして一定のフューチャーはするべきなんだけど、昔は大阪の吉本芸人が、年に一回タガを外して悪ふざけ出来る番組だったけど、いまはもう芸人がテレビで、タガ外して悪ふざけする番組なんて、日常に溢れているんだから、そのこと自体にもう今となっては意味はないんです。
しかし昔のオールザッツというのは、圭・修、ショウショウ、ぴのっきを未来世紀01・02しましまんず、といったどちらかというと正統派な漫才や、ベタなコントやっていた人たちが、年に一回テレビでタガを外したネタをするところに、あの番組の価値があった。圭修はブリーフ一丁でネタしたり、ショウショウは本人の目の前で、巨人師匠の笑い声の真似だけを三分間やり続けたり、しましまんず池山心が歌うだけとか、藤井くんが横でギャグやり続けるだけとか、その頃はテレビで普段そういう事していない人が、オールザッツでだけ、そういうことをしていたから価値があった。
結婚披露宴でコースメニューを食べていたら、いきなり女体盛りが出てくる面白さで、別に女体盛り自体を面白がっていたわけじゃないし、いまもうテレビの世界では、女体盛りのようなものは普通になってる(理解できない人がいるから、補足しておきますけど、あくまでもここで言う女体盛りは比喩ですよ)。楽屋ネタや宴会ネタをする場所や番組が、これだけ多くなって、本芸としてキワモノ芸やっていることが知れ渡っている人が、キワモノ芸をやったところで、そこに意味や価値はないですよね。天津木村のエロ詩吟だって、この番組でブレイクしたけど、この番組でやる前から、他の番組で既に何度もやっていたし。
あとこの番組でキワモノネタをやる理由って、この番組は客席の一番後ろに、出演している芸人が全員陣取っているわけだけど、昔の吉本の芸人さんって、吉本の仲間に対しても、ライバル意識むき出しだったから、92年とか93年とかの映像見たら分かるけれど、他の人がネタしている時に、客席の芸人をカメラ抜いたら、みんな怖い顔して見ていたもん。そこで芸人を笑わすために、みんないつもと違うことをしていたわけで、いまの芸人同士のみんな仲良しという雰囲気だと、それを選択する意味合いが違ってくる。
でも一番の問題は、スタッフが意識していないと、どれだけ主張していても、番組全体が東京でこの番組の映像を、後から取り寄せてみている人たちというのを、意識過ぎていることが、一番の問題だと思います。スタッフの人たちが「関西人による関西人のための関西の番組」というコンセプトと言ってるけど、実際もうここ数年そうはなっていない。
僕は陣内さんが語っていたように、もうとにかくネタをバーッと観せる番組にして、出演者も大阪に居残っている吉本芸人は、師匠クラス以外は全部出すぐらいで良いと思う。
本人達が出たいと言えば、けんた・ゆうたまるむし商店クラスも出して、最初の一時間は中堅以上が、がっちりとしたネタをやって、次に若手が三分ネタをやって、最後の二時間かけて、baseのオーディション組みたいな人たちが、一分ネタを延々とやり続けていた、阪神巨人が司会していた頃のフォーマットにすればいい。
いまのオールザッツって、オーディション組どころか、baseの一軍にもう何年も前からいるようなメンバーですら、去年も一昨年も呼ばれていないんですよね、学天即とか、さかなDVDとかもそうだし、去年の新興勢力も見取り図ぐらいで、コマンダンテや、カバと爆ノ介や、プリマ旦那みたいな、ABC決勝に残った連中が出ていない。オールザッツがABC決勝や、M-1準決勝より吉本の若手芸人にとって、敷居の高いステージになっているのは、どう考えてもおかしいでしょう。
ハロー植田、浅田マオー、斉藤紳士バイク川崎バイクとか、新喜劇の今別府とかが出てないのは、やっぱりおかしいですし、ということを言おうと思って良く考えたら、2009年はガリガリガリクソンすら出ていない(笑)。まあでも大阪時代に、baseのオーディション受けていた頃の、R藤本、ぴっかり高木、マリッジブルーこうもと、重政豊、ジャンみやがわ、とかが出ていないのも、今から考えたら凄いもったいないことしたと思います。
もう一分組はbaseのオーディションで二次予選が上限みたいな人も、とにかく出しまくればいいと思う、そして昔のリットン調査団やSNOBのように、そんな中に挟まれて、後藤秀樹やSNOBの生存を年に一回、確認できる出演をしてくれるのが、一番僕は良いと思います。大阪の人じゃないと分からない所か、オールザッツを毎年見ていないと分からない。というような人を出していくべきでしょう。
でもいまのオールザッツのダラダラしたムード、番組の意義が分かっていない連中に仕切られているのを打破できるのは、つばさ・きよしとか、じゃんじゃん横丁。とか、満天とか、オッサンパラダイスとか、ワタルwithオカンとか、ちゃらんぽらん富好だと思うんだけどなあ。少なくとも東京から、売れている人を呼ぶのなら、デジタルケイタとか、杉岡みどりとか、ザ・やなせふなおかとか、SNOBを出してほしい。東京から呼んで良いのは、水玉れっぷう隊幹てつやだけです(笑)。でも水玉れっぷう隊が、昔からやっているネタを、同世代の芸人に「またそのネタか」と野次られながらやったり、芸歴物凄いあるのに凄い普通にすべっている人が、芸人に拍手喝采されるというのが、この番組だったわけじゃないですか、そんな異様な空気の中で、年に一回芸人を笑わすために、つばさ・きよし野性爆弾になるというのが、僕はオールザッツの原点だと思います。
オールザッツというお皿の盛りつけ方が、もう誰も分からなくなっている。素材はあっても、司会者やスタッフという料理人がいない。というのがこの番組の現状であり、それはいまの大阪のお笑い界全体を現しているでしょう。
せめて司会者だけでも、何とか番組に合っている人が出来れば良いんですけどね、最初のオール阪神巨人、次の今田東野というのは、厳しいのと優しいのでタイプは違うけど、芸人を甘やかさない司会者だったから、決して学生ノリみたいな緩い流れにはならなかったんですよね、現在の司会陣は陣内にしても、コバにしても、芸人じゃないけど若槻にしても、芸人に甘いところがあるのが、中堅が緊張感を失って、それを見ている若手が、この番組の意義を見失っている一要因でもあると思う。
だけどいまの大阪で、そういう空気出せる人となると難しいんですけどね、トミーズ雅和泉修のダブル司会とか、そのぐらいしか思いつかない(笑)。もしくは今年はMBSじゃなくて、ニコニコ生放送でオールザッツやるぐらいしないとダメかもしれない。

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