『キングオブコント2010』

「キングオブコント2010」、結成11年目のキングオブコメディが3代目王者に! | エンタテインメント | マイコミジャーナル

キングオブコント』は元々そんなに注目している賞レースじゃないし、今年に至っては予選も完全スルーしていたぐらいなので、淡々と出番順ですらなく触れていって、印象批評とか世間的な背景分析をしていきたいと思います。

10年前のオンバトからのタイムカプセル〜エレキコミック(8位)

短いネタ番組が嫌い、エンタが嫌いと言って、最近のネタ番組見ていなかった人達にとって、この人達の決勝進出は相当な期待があったと思われる。実際に「久し振りに見るけど期待が大きい」という声が多かったし、当日見ていなかった人で結果だけ聞いて、「エレキコミックがダントツで最下位って何があったの?」と驚く声も結構拾うことが出来た。
しかしエレキコミックは、『爆笑レッドカーペット』や『爆笑レッドシアター』にも出ていて、特に可もなく不可もないコントをしていた。つまり露出はしていたけど印象には残っていなかった。ということで、今回の決勝でも最近の出来としては変わらない感じで、普通に最下位になったというだけというのが、僕の印象でした。
結論から書きますと、エレキコミックのコントは古いんですよ、90年代後半のコントの形なんです。例えば二本目の雑誌の取材のコントにしても、いまの『レッドカーペット』に出ている芸人や、若手の劇場でかけられているコントでも、単に「地元で有名な不細工な店長の取材」ではなく、「本当は不細工な店長の取材なんだけど、表向きは美味しいタコ焼き屋の取材の不利をする」というぐらいの捻りがある。これが『オンエアバトル』という番組が始まって、若手の漫才やコントが復興して、参入する人、披露する場所が増えていった、この10年の日本のお笑いシーンの進化と言えるでしょう。エレキコミックの今回のコントは二本とも、こまっしゃくれたガキや顔の造形がゆかいな人を、ただ真っ正面から弄っているだけという、一時代前のコントで、それはその次の段階のコントを既にやっている芸人審査員からしたら、評価のやりようがなかったでしょう。
あともう一つはキャラの見せ方と出し方なんですが、真っ先に思うのは、もはやエレキコミックやつい程度では、ブサイクキャラと名乗れないぐらい、凄い顔の造形の人達が増えすぎましたよね。ザブングルの加藤とか、アンガールズとか、単に不細工なだけじゃなく、もう一つなんか持っているような人たちが、ブサイクキャラになっている。加藤とかアンガールズとかですら、単に顔の造形だけでない、他の要素でより気持ち悪くしているところで、ブサイクキャラネタをするのもやはり厳しいと言わざるを得ない。
あとこういう弄られる、ダメな扱いをされるというキャラの人は、単に見かけだけじゃなくて、どんどん人としての内面を弄るようになっていますよね、アンガールズもそうですし、狩野英孝にしても、我が家の谷田部にしても、笑いにして良いのかどうかギリギリのところでの、人としてダメな内面というのを弄られるようになっているところで、エレキコミックのやついの弄られ方というより、やついのキャラはもはや普通になってしまいましたよね。
一時はラーメンズバナナマンと共に括られるような東京のコント師だったわけですが、他の二組と違って出遅れた感があったわけですが、やっぱりこうして見ると、お笑い界の進化とか、世間の流れに対応できなかったんだなというのが、はっきりと出てしまった決勝になってしまいましたね、申し訳ないけどゴールデンタイムでこの尺のネタを二本する水準に、現状のエレキコミックには無かった。やっぱり露出が出来ていない、テレビ局のスタッフがここ数年ピックアップしなかったのには、理由があった。
今回の決勝入りは、おそらく強い思い入れのある人が審査員にいたんでしょうね、準決勝を見に行った人の反応でも、このコンビの名前はほとんど出てきていなかったし。合議制の審査では声の大きい人がいたら、その人の要求は一つぐらい通るものですし。しかし残念ながら期待を裏切ってしまった。同じ昔の名前で昔のネタするのなら、インパルス、ドランクドラゴンアンジャッシュの方が見たかったなあ。
最後にエレキコミックの最下位はおいしいと言ってる人多いけど、僕はそれには疑問ですねえ、そうやって弄られることをおいしく変換できるタイプの芸人なら、エレキコミックはコントではなくバラエティで、とっくに世に出られてると思うし、現実にM-1とかR-1で最下位にしてずんだ人達って、それで弄られておいしくなって売れた人達なんて少数派じゃないですか? ザ・パンチとかPOISON GIRL BANDとか、明らかにM-1最下位なってから露出減ってないですか? ましてエレキコミックの場合は、ラーメンズバナナマンと比肩する評価を受けていた実力派とされていたんだから、僕は2002年M-1アメリカザリガニ以上のダメージを負っただけのように考えます。
最下位でもおいしいなんていうのは、芸人さんが自己弁護のために作った“都市伝説”で、本当においしくなるかは、元々のその芸人の個性や芸風によりけりですよ。こういう芸人主導の“お笑い業界都市伝説”に、お笑いマニアは単純に流されすぎです。
というかなんで子供が大人びて、大人を不快にさせるというネタを、キングオブコメディも出てる賞レースに持ってくるのかなあ。というのが一番不思議で仕方ない。

浪花座からのタイムカプセル〜TKO(3位)

エレキコミックが10年前のタイムカプセルなら、こちらは15年前からのタイムカプセルでしたよね(笑)。ただTKOの場合は、木下さんのキャラが現役だったことが、特に二本目の木下さんのキャラクターショーだったこともあって、高評価につながりました。
そういう意味で一本目のコントの設定が「葬式」という、「医者と患者」と並んで、古くからコント作りやすい設定を持ってきたのは、審査する相手がプロの芸人さんという場では、どうなんだろうと流石に思いました。いくらTKOが脚本で勝負するコントではないとはいえ、芸人にとっては誰もが知ってる、ネタ作りやすい設定でしょうからね。
まあでもやっぱりこれも古いよね(笑)、元々二本とも昔からやっていたネタだったけど、スミス夫人みたいという声もあったけど、僕にはのイズの「ジュニーのコンサート」と一緒の構造のネタだなあと思ってみていました。
ステージの上のボケと客席のツッコミが並んで同じ方向を向いて、ボケが飛躍し過ぎな大ボケをして、ツッコミが大げさにボケてる方を向かずに、正面に向けて突っ込むという、90年代前半に大阪で流行ったコントの形態でした。ただそれでもボケのキャラさえ立っていれば、古いネタでも挽回できることは多いことを、TKOは示したと言えるでしょう。

遅れてきた2丁目芸人〜ロッチ(7位)

タイムカプセル三連発にしても良かったんですが、まあそれでは芸もないし、なによりロッチとして2丁目劇場に出ていた訳でもないので、それは無しにしましたが、それでも2丁目劇場時代の芸人さんらしいコントだったなと思います。
劇場で見るとまた違うんでしょうがテレビで見ると散漫な感じが拭えない。なにを意味しているのか、分かりにくいところがある。勢いに乗り損ねてしまうと、そのままおいてかれる感が強くて、一本目については「これが準決勝だったの?」という感じで、二本目は僕は最初の一分は、今日一番笑ったんじゃないかと思うぐらい、コカドのキャラに填ったんですが、やっぱり同じボケの繰り返しネタを、テレビ通して五分見るのは厳しい。
あとロッチのネタの構成は、チュートリアルとかロザンとか、仲の良いコンビがやりがちな、じゃれあいコントが基本で、そういうやおい的な腐女子が好きそうな設定というのが、大阪出身、2丁目の遺伝子を持ったコンビだなあと思うところです。

彼らにとってのチンポジだったか〜ジャルジャル(4位)

今回Twitterやりながら見ていて、TLの賛否がはっきりと真っ二つになったのが、ピースの一本目と、ジャルジャルの一本目と二本目でした。ジャルジャルに関しては、僕は元々は大好きだったし、いまでも『爆笑レッドシアター』でも進化を見せてくれているけど、賞レースに持ってくる彼らの本気ネタに関しては、「おまはん」ぐらいまでは好きだったけど、ここ何年かはM-1にしてもKOCにしても、やりすぎというか、これ見よがしなシュールというのが、どうもハナに付くようになってしまった。
なんか世間じゃなくて、一部のコアなファンとか、業界関係者とだけキャッチボールしているような感じになっていて、もちろん僕はそっちに行きすぎない方が良いと思っています。
しかしここまで世間の反応とか評価が、きれいに分かれた二本目の「おばはん」のネタもないですよね、というか僕の見た感じだと、間違いなく今回「おばはん」を褒めている人は、去年のM-1笑い飯の「チンポジ」を絶賛していたのと同じ人達ばかりです(笑)。悪いけどそういう人達って、自分の刺激にあうものが、なかなか食卓に上がってこないからといって、たまに上がってきた時に過剰に褒めすぎだと思う。もっとお笑いは相対的、場の雰囲気や空気に合っているかというものを、多角的に見て評価していかないと、単純に面白がるだけならともかく、その面白さを誰かに説きたい、語りたいと思うのなら、そのぐらいの客観性も合わせ持ちたい。
というのはおそらく準決勝では、この「おばはん」のネタは爆発したと思うのですよ、というかもしKOCに敗者復活戦があって、ジャルジャルがそっちに回っていて、このネタをやっていたら、おそらく僕も凄い笑ってたような気はするんですよ。やっぱり笑いというのは、エレキコミックの所で書いた時代性や相対的な比較、また場の雰囲気や世間の空気というのに、非常に流されやすいものだと思うし、その流されてる状態こそが、僕にはお笑いの本質のように思うから、TPOを意識するというのは、芸人もそしてお笑い界を育てる目線の高いファンにも重要のように考えています。
お笑い界の中の人たちが、「空気を読め」という名の空気の強制をしているうちに、コアなお笑いファンって、そういうTPOを弁えるといった「空気を読む」ことが出来なくなって、我がの好きな笑いに縛られるようになってしまったように思えてならない。
去年のM-1敗者復活戦で、POISON GIRL BANDのネタが凄く面白くて、これは決勝に行ったら痛快だなと思ったけど、でもあれがストレートで決勝に行って披露していたら、「審査員何考えてるんだ」と怒っていたような気がする(笑)。やはり準決勝や敗者復活戦の雰囲気には合うけど、決勝の雰囲気に合わない笑いって、やっぱりあるんだなと思うのです。千鳥とか、東京ダイナマイトとか、POISON GIRL BANDとかがそうですが、そういう意味でジャルジャルは、「KOCの千鳥」と言って良いんじゃないですか、これは貶している訳ではなくね(KOCの笑い飯と言ってる人もいたけど、それはせめて準優勝二回ぐらいしてからじゃないと、笑い飯に失礼だ)。
そういう笑いを個人の絶対評価と、総合的な相対評価を分けて考えるというのが、目線の高いファンになれるか、さっきから書いている目線の高いファン云々という話は、近いうちに別立てでやるから、突っ込みたい人はそちら終わるまで待ってくれたらありがたい。必ず数日中に書きます(というかもうネタは上がってるんだけど、タイミングを逃している)。
まあしかしチンポジもそうだけど、賞レースの決勝、しかもゴールデンタイムの番組で、あのネタやるのは、やっぱり悪ふざけだと思うよ、茶の間で家族で見ている人は、親とかから「これどこが面白いんだ?」という詰問や、チャンネル変えられそうになって困ったと思うよ。一本目とかもネタ終わった後、松本が結構フォローするコメントに時間かけてたしね。

標準的すぎた優等生コント〜ラバーガール(5位)

個人的な期待は大きかったのですが、結果的に印象が薄くなってしまった。一本目は多くのコンビが、二本目に準決勝のネタを持ってきたこと、一本目は素直に笑わせてくれるネタを持ってきたのが、ここまでキンコメとラバーガールとかいなかったのも、ラバガの一本目の点数が跳ねて、結果的に三位まで順位を上げることができたけど、全体的に『オンエアバトル』や『エンタの神様』でネタやってるみたいな、非常に淡々とした雰囲気になってしまった。
それにネタ選択も微妙だった。一本目は同じネタ構造なら、違う設定で良いネタがもっとあったような気がするし、キャスターとレポーターという設定のネタを、ラバーガールはやるべきじゃなかったかなあ?

栄光からの転落〜しずる(6位)

一位から1000点満点で、わずか10点差の二位から一転して、優勝したコンビとの2000点満点で166点も差を付けられて、六位という最終結果となってしまいました。
一本目のしずるは、かなり複雑な変化球で馬鹿馬鹿しい上にややこしいという、こういう賞レースでは本来点を伸ばせないタイプのネタですが、こういうシュールなネタをする時は、とにかく照れないでやりきること、そして設定の矛盾が気になる余地を与えないぐらいに、ずば抜けた演技力でやり切るしかないというのを、知らしめたように思いました。
だから勢いが止まった、あのナレーションのオチは展開を止めてしまった。あそこでオチまでスマートに終わらせることが出来たら、暫定一位で前半戦を終えることが出来ていたでしょう。
ただ僕は二本目はしんどかった。抜群の演技力に溺れたネタだった。「はいはい、君たちが巧いのは分かりましたよ」という感じで、少しハナに付く場面が多かったように思いました。今日一番見ていてしんどかったのが、しずるの二本目でしたが、芸人さんから見ても、やはりそういう評価だったようです。

世間に示した世界観〜ピース(2位)

ピースは本ネタの芸風とは違う形で、『爆笑レッドカーペット』に出演しているのに加えて、綾部のトーク力と又吉のキャラクターが、それぞれバラエティで高い評価を受けていましたが、本ネタをこれだけじっくりと、こんな良い時間帯のテレビでやったのは、もしかしたら初めてではないでしょうか?
一本目はそんなに良くなかったけど、僕は好きでした。無茶な設定、ちょっとエロ混じり、ピースの世間に対する名刺としても適切だったし、しっかりやり切ってくれた。
そして一本ごとの評価だと、ピースの二本目の942点が最高評価だったわけですが、まあこれは芸人審査員に、準決勝に残ったメンバーが東京吉本の人が多いこと、これは身内贔屓だというんじゃなくて、同じ方向、同じ笑いを目指している人が多いというのも、評価が高くなる要因はあったと思います。
しかし自分たちのネタより先に、それぞれのキャラがバラエティで売れかけていた時に、良いタイミングで本ネタを見せることが出来たのは、非常に大きかったでしょう。ネタ一本の一発勝負で、このネタで優勝していたら去年のR-1的な雰囲気になっていたと思うので、それも変な足枷が付くことにならなくてなくて、運が良かったとも言える。本人達は優勝できたシステムの方が良かったでしょうが。

栄冠〜キングオブコメディ(優勝)

一本目が「誘拐」、二本目が「教習所」というネタ選択も完璧で、これはもう完勝でした。何も言うことがありません。高橋が緊張していたけど、あのぐらいの緊張感は、こういう賞レースだと見ている人を逆に引き込むので、あのほど良い緊張感も魅力的に見せていた。しかし「教習所」のネタのような、再生きっかけが多いネタを、良く生放送の賞レースでやる度胸は凄い。あれは音響の担当者も大変ですよ。多分TBSのスタッフだときっかけ間違えると責任持てないから、予選同様に自前のスタッフがやってるんだと思うけど、賞金少しで良いから音響の再生役にも分けてやって欲しい(笑)。
正直、完璧すぎてあんまり書くことないです。良いものを単純に良いと言うのは、自分の力ではどこまでも無粋になってしまう。キングオブコメディ、優勝おめでとうございました!!
最後にダウンタウンの司会について、あんまり良い評価じゃない声を出している人がいるようなんですが、浜ちゃんの審査に影響しない芸人弄りと、松本の芸人に対する影響力を削ろうとするコメント、そんな松ちゃんも基本的に受けて帰ってきたコンビはさらっと流して、スベって帰ってきたコンビにはフォロー、受けたコンビで「良かった」というコメントを、審査前に出したのキンコメの一本目だけだったけど、あれは自分のコメントが影響しないという安心感があったからで、最初のD・N・Aの話題から最後まで、非常にバランスの良い司会だったと思うんだけどなあ。
最後に自分が10点満点評価したら、というのを書き記しておきます。

1stステージ
キンコメ9、ラバーガール・しずる8、ロッチ・ピース6、TKO5、ジャルジャル4、エレキコミック2
2ndステージ
キンコメ10、ピース・TKO8、ラバーガール7、ロッチ4、ジャルジャル3、エレキコミック2

こんなところかなあ?

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