2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会 グループE第1節「日本 vs カメルーン」

「窮鼠ライオンを噛む」南アフリカ・ワールドカップ グループE 日本-カメルーン(1-0)

とりあえずスタメン発表、本当に実戦で一度も試したことのない布陣に驚愕、あと大久保は今回FW登録とはいえ、本当に0トップといえる布陣、前田、寿人、巻、渡邊、田中達、この辺を選ばなかった咎を、岡田監督を背負うことになるかと、試合前には正直思いが過ぎる瞬間でした。
だって前任者が全てメンバー入りしているにも関わらず、正GK、キャプテン、エースストライカー、ゲームメイカーが、本大会の直前に入れ替わったわけですから、異常事態とまでは言わなくても、急な手術であることは間違いないです。楢崎や腕章を取られた中澤はともかく、岡崎や内田がこのタイミングでポジションを奪われたことは、メンタル的にどこまで耐えられるかも、注目したいところです。俊ちゃんは多分無理だろうなあ。
しかし試合が始まったら、心配するのも損かなと思うぐらいに、カメルーンが良くないのに対して、日本の即席フォーメーションと、本田、松井、大久保に与えられた、新たな役回りを完全にこなしている。特に本田はヒデに事前に「エゴイストになれば良いんだよ、負けても良いじゃん」みたいなこと言われてたのに、全然そんなことなく前線で守備にボールを求めて走り回っている。
前半で早速、松井にアシスト、本田△にゴールがカウントされたけど、これは誰もが言うでしょうが、労を惜しまずに走ったご褒美でしょう。
もうこの試合に関しては、カメルーンが弱かったということ、そしてにも関わらずに、カメルーンが日本を舐めてきたというのが、完全に勝因の一番手なんでしょうが、でも舐めてかかってきやがった相手にきちんとバチを与えることが出来たということが、日本の成長であり、底力だったように思います。とりあえず気分は普通に勝つより、更に良いよね(笑)。
とりあえず大久保、松井、長谷部、阿部が素晴らしかった。大久保嘉人鈴木隆行の後継者とでも言える仕事でチームに貢献していたけど、しかしこの四人に闘莉王を加えた五人のうち、誰か二人でも2006年の大会を経験していたら、もっと今大会は楽に戦うことが出来るのでは? という思いにもさせられるような面子なわけで、オシムだけでなく、岡田監督ですら、ジーコの負債のツケを払っていることを実感させられる。松井がMOMかと思ったけど、得点者の本田が公式のMOMだったようです。
本田の試合後のインタビューはとっても△だったけど、やっぱりチームは問題抱えていたんだね。というのが見えるインタビューだった。この勝利で本田の言うように、まとまってほしい。
しかし一夜明けて、「これまで岡田監督を信じられなかった奴は、土下座して謝れ……」的な論調と、「このチームを作る過程も、この試合の内容も全然ダメだった、この結果だけで全て良しとしては……」というような論調の対立があるようですが、しかし自分の国の勝利を浮かれ喜ぶのと、まだまだダメなところがあって、それを指摘して反省分析するのは、なんにも矛盾しないんだから、どっちの立場の人も、それを否定するべきじゃないのではと思います。
Twitterゆうきまさみ先生が、「W杯だけは手のひら返しが許されるんですよ。」と語っているけど、この先もプロの解説者やジャーナリストとかは、結果が予想と裏返ったからといって謝る必要もないし、謝ることを求めるのもナンセンスだと思う。全ては矛盾しない。
あと岡田監督は、史上初のW杯四連敗監督の汚名にはならずに、日本人初の勝利どころか、勝ち点獲得監督になったわけですが、今回は久し振りに血の気の良い顔の岡田監督を見た。岡田監督は日本やスイスではこんな顔や声色をしていなかった。岡田監督が、俊輔を外して、本田と松井を入れる。阿部を本来のポジションで使う。右サイドバックに守備的で体調の良い選手を入れる。これらのことを、南アフリカに着くまでやらなかったことは、この結果に浮かれることなく考えなくてはいけないこと、「情報戦」とか「本番でいきなり変えるのは当初の予定通り」というのは、ネタ話にはなっていても、正当な理由にはなっていない。
12年前に「3バックをもっと早く試していたら……」と、大会が終わった時に言った人が、失敗したら「本田0トップをもっと早くら試していたら……」と言われるようなことを、自分はするとはとても思えないです。だって実戦で試したことがない戦術を、いきなり本大会でやるというのはギャンブルです。
ギャンブルに勝った岡田監督を祝す気持ちと、ギャンブルせざるおえなくなった準備のまずさを指摘するのは、矛盾しないと思う。どちらかの立場を取るために、どちらかをしないのはおかしい。逆も同じだけれど、「そもそもこのタイミングで、監督がギャンブルするのがおかしい」という人に、「結果が出たんだから文句言うな」というのは、議論というコミュニケーションになっていない。だからといってギャンブルで得た結果について、「ギャンブルでの成果は無価値」というよな意見も、また違うということで良いのだと思う。
僕は正直、岡田監督がこれで満足してしまっても、そんなに不満はなかったりする。少なくとも僕の中でのノルマは“勝ち点2”だったから、それを上回ってくれた以上、結果に関しては、今後は文句の付けようがない(笑)。選手はもうなにもいうことなし、岡田監督も及第以上、あとはここまで戦えるチームを、混乱状態で本大会に送り出した協会の責任、これはどんな成績を残しても、うっかりと目先の結果だけで忘れてはいけない。
監督にギャンブルをさせたこと、いや監督がギャンブルを本大会でせざるを得ない状況になったこと、そもそもギャンブラーに代表を任せて良かったのか? という議論は、代表を讃えるとは別に、忘れてはいけないポイントだと思っています。ドイツの時には、その辺を有耶無耶にしてしまったけど、今回はきちんとしなくてはいけない。
はっきりいって、カメルーンがダメダメ過ぎたのが一番勝因なんだけど、それでも相手がこんな悪い状況でも拾えなかったのが、06年のクロアチア戦なんだから、本田の得点と、終盤のパワープレイを凌ぎきったのはえらかった。そういう相手にうっかり取りこぼしてしまうモロさが、日本代表に今回全く感じなかったのは大きい。ここまでどれだけ取りこぼしてきたか考えれば、選手達の頼もしさはなかった。
あれを「アンチフットボール」とかいう奴は、言わせておけばいいわけで、こっちはもう一つ上の高見を見るために、まずは結果を求めないといけない。しかし昨日は一日浮かれていて良かったけど、あのサッカーではオランダどころかデンマークにも勝てるとは思えないわけで、一夜明けたらもう次への戦いのために心構えなんだよな。
今日はカメルーン戦を改めてまた見たけど、昨日は気付かなかったけど、確かに冷静になってみたら凡戦は凡戦なんだよね。後半とかはこんなにグダグダの試合で、日本もミスが多くてやられかけていたとは、全然リアルタイムでは気付かなかったよ(笑)。ベスト4はともかく、ベスト16とか朝はちらっと思ってたけど、すげえ甘かった。でも自国の代表の勝利というのは、どんな凡戦も素晴らしい試合にしてくれる。ということが良く分かった。「あばたもえくぼ」ということだよな、違うか。
とりあえず、日本を甘く見て侮ってきたやつを、しっかりと返り討ちにしたことの価値は高いよな。そしてオランダとデンマークはこの結果を受けて、いまの心境は天童よしみだろうから、本気のオランダと本大会でやれる喜びを噛みしめたい。

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正直、昨日のようなサッカーが、岡田監督の目指していた最終形ならば、攻撃のオプションとして考えた時に、あの23人の人選は改めて疑問符が付く可能性はあるでしょう。

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岩井俊二

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