『甲子園の空に笑え!』(川原泉/白泉社)

この漫画を勧める少し前に、今のマンガの話をしていたときに『大きく振りかぶって』の話になって、まあ当然のようにつまらなくなったねという話をしていたのですが、あのマンガがダメになった一番の理由は、凄い練習とか味方ベンチの采配とか、一年生部員だけでチームを組むとか、バッテリーの関係についてリアリティがあったのに、いざ公式戦が始まった途端に、試合にリアリティが無くなり、敵ベンチの采配にリアリティが無くなり、野球部の人間関係のリアリティにも影が落ちてきた。
いや別にマンガなんだから、リアリティなんて無くて良いんですよ、しかしこのマンガの場合は序盤に、圧倒的なリアリティで勝負してきて絶賛されていたんだから、少しリアリティと外れただけで期待はずれになってしまうんですよね、一つなら良かったんですけどね、凄いリアリティの中に嘘が一つは良いアクセントになるけど、「大振り」は乱発しすぎた。
ということで、『甲子園の空に笑え!』なんですが、これはこの文庫に収録されている「銀のロマンティック…わはは」もそうですが、基本的に「こんな巧いこと行くか!!」と突っ込むこともわざわざ無いぐらいに、最初っから嘘ばっかり何ですよね、リアリティなんていうのは知識面ではいっぱいあるけれど、基本設定とかシーンとかにリアリティがない、だからこそツッコミ所もわざわざつっこむこともなく、素直に愉しめるのです。
川原泉の浮世離れした世界の魅力は、荒唐無稽なスポーツマンガに意外と合うのであります。

甲子園の空に笑え! (白泉社文庫)甲子園の空に笑え! (白泉社文庫)
川原泉

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