イカ天復活! : 夏目房之介の「で?」

【音楽】・「イカ天特番」 : ふぬけ共和国blog

色々と考えることは多い、イカ天の番組だったけど、当時11歳だった僕の体験、ましてこの番組は関西で放送無かったので、リアリティある言語化は出来なかったんですが、こうして読んでいくと色々と感慨深いです。
そうだよなあ、この時期はまだギリギリ、バブルだったんだよなあ。そういう時代だからこそ出来た文化や音楽というものに対しての郷愁というのはあって当然なんだけど、それをいまの若者にどう伝えるかというのは、お兄さん的な世代の重大事のように思いました。
80年代の「ねじれ」を現しているかどうかは分からないけど、この頃はテレビの音楽番組が下り坂にかかっていたけど、まだそれなりに保っていて、「夜のヒットスタジオ」や「ザ・ベストテン」は、アイドルと演歌歌手とポップスバンドと二世タレントで本業は俳優の歌手みたいな芸能界の人たちと、二ヶ月前まで北関東や九州のライブハウスでやってましたみたいなバンドが混在していて、そのバンドの人たちの中でも、芸能界的にある程度チューンされた人たちと、生のままの人たちというのが分かれていた。アイドルは出るけど、演歌や歌謡曲の人が一切出ない「ミュージックステーション」という番組が始まったり、歌謡界とロック界が交差して混ざり合ったり、すれ違ったり、解け合ったりという混沌期という時代背景無しに、いま音源だけ聞いたり、当時の映像を見るだけでは分からない事というのは、誰かが言語化しないといけない。
音楽面だけでなくマネージメント面でもセルフプロデュース能力を最初から持ったバンドが、ライブハウスからいきなりメジャーに出てきたり、とんねるずダウンタウンの登場というのも更に色んなものをねじれさせて、今まで一緒だったものを分かれさせたり、今まで違っていたものを一緒にさせたりしていた。
話を同じ時代に混乱を引き起こして、次の時代を作ったという意味で話を強引にダウンタウンに移す、ダウンタウンは大阪の大吉本が天下統一を目指して上京させたという存在ではあったけど、当時の東京の芸能界における意味合いとしては、いわゆる東京の芸能界な大人達が加工を施していない、北関東のロックバンドや、広島や福岡のフォーク歌手、沖縄のグループと変わらなかったはずなんですよ、80年代後半ならまだ吉本は大阪ではともかく、東京では明石家さんまという人気者は抱えているけど、あくまでお笑いだけやっている大阪の中小プロダクションだった。確かダウンタウンが東京進出した頃は、東京事務所は出来たばかりで所属タレントはさんまさんと間寛平だけだったぐらいの時期のはずです。それまでにもそれこそさんまさんとか、漫才ブーム、その前の三枝さんや仁鶴さんといった全国的な成功を収めた大阪芸人というのはいたけど、これまでの大阪弁を喋る芸人と違い、ダウンタウンは初めて大阪の生の笑いをそのまま持ち込んでいった。
だからあれだけ文化人とか、麻生香太郎の話は良く出していますが、他にもそれこそ坂本龍一糸井重里が最初から注目していたのは、もちろんやっている漫才やコントの質はもちろんだけど、前時代に対する文化的な黒船的侵略者という要素は絶対に見いだしていますよね、混沌の時代にとどめを刺すごとく、更なる混沌を巻き起こして、後の時代の「テレビバラエティ」や「お笑い番組」の流れを作った。
ダウンタウンが東京の番組に出だした頃、改変期とかの番組対抗のクイズ番組みたいな特番に出ていた時の、ダウンタウンの二人の異物感は凄い覚えていて、浮いているとかそういう問題ではなく、明らかに違う文化の人たちが紛れ込んでいた。ダウンタウンの若さとかキャリアとかではなく、例えば前の時代ならこういう場所にいた関西芸人は、ある程度はその空気に馴染める人が出て行ってたし、ダウンタウンの後の時代では、大阪からそのまま出てきたような若手芸人にとっても、そこはアウェーや格上のステージではあるかも知れないけど、異物的な違いはもう無くなっている。この辺の話はとんねるずウンナンを絡めて、三組の背景みたいなものと共に関係性を考えたら、さらに面白い考察が可能だと思う。当時良く絡んでいたミュージシャンが、とんねるずチェッカーズで、ダウンタウンユニコーンだったというのは象徴的すぎる。
その辺の事は全部この時代に、芸能界を中心に色んなジャンルでいっぱいあったという面白さとか、この時代に整理されたものが何だったのか、整理役になったのは誰だったのかというのは、やっぱり凄く面白いテーマだと思います。1998年と2008年の違いより、1988年と1998年の違いの方が絶対に大きいからね、特にこの辺は、実際にこの時期から演歌や歌謡曲の人たちは一斉に消えだしたし、ひょうきん族とそれ以前の芸人さんも、テレビの一線からは司会者やパネラーで生き残れた人以外は見事にみんないなくなった。
1998年の段階で、70年代という時代を色んな切り口、様々な題材に置いて、「言語化」して定着させるという作業は、音楽界はもとより、映画だマンガだ当時の社会情勢だという事を糸口にして、もうまとめに入ってくるぐらい、色んな事がされていたと思います。しかし10年後の2008年になっても、80年代をそういう形で定着させる作業は、ようやく始まりかけたかなという段階にしかないように思うので、2000年代というのが90年代のように70年代を振り返る余裕がなかったのか、それとも新しい情報の時代でその暇や手数が無かったのかは分かりませんが、あのバブルの前と後、80年代から90年代、昭和から平成に変わる頃に、何が変わったのかということは、色んな分野できちんと言語化して定着させて貰いたいです。「バブルの頃はこんなに派手な生活をして」みたいな話だけではなく。

30-35 vol.7 「イカ天」特集30-35 vol.7 「イカ天」特集
オムニバス ノーマ・ジー茂木淳一

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