「ABCお笑い新人グランプリ」エントリー10組を改めて振り返ってみます

ベリー・ベリー

「教会」のネタではなく「ゲームセンター」の勝負ネタをきちんと持ってきてくれたことは良かったですね、ベリー・ベリーはこのクラスのbase芸人さんが一番苦労する、baseとそれ以外の場所での受け所の違いという壁にぶつかっていないので、baseで人気を取れるネタとアウェー用のネタ両方の開発に力を入れて欲しいですね。
吉本は思い切ってベリー・ベリーを「オンエアバトル」とかに送り込んでも良いように思います。パッと見地味だけど、ネタに入ったら華やかな感じが出るのはテレビのネタ番組向きだと思います。個々のボケのクオリティに差が激しいのは、アウェー経験の足り無さでしょう。ホームの劇場で同じ客相手にばかりやっていると分かんなくなる訳で、やっぱりもっとうめだ花月baseよしもとの垣根は取り払われるべきだと思うし、自前の劇場持ってる会社の所属タレントが余所で舞台出て、自分たちのお客さんの劇場の客を食われることの問題は分かりますが、もうちょっと若手のうちから多様な客の前でする経験をさせてあげてほしいです。ケイダッシュサンミュージックと月一ぐらいで一組ずつぐらい客演を出し合うとか、色々と出来るはずなんですけどねえ。

ネゴシックス

本当ならNON STYLEが去年は上位三組に残って、去年のうちに審査員特別賞もらっておくべきだったんでしょうね、今年のR-1ぐらんぷり決勝出場が心配です。

天然もろこし

最終決戦もそうですが、吉本ばっかりだという批判が怖いのなら賞レースなんかやらない方が良い。現状、これだけ吉本の芸人が多くなったら事務所枠とかバランスを考えることが逆にバランスを崩すというのを知らしめる結果になってしまったと思います。でも一本目のネタとかの世界は町田康とか文学系の人は絶対に好きですよね、それは分かるけどこのコンビに二本させちゃダメだよ、底の浅さが出ちゃう。

スーパーZ

なんかねスーパーZは、もうビーサンに残留することやABCで賞取ることよりも、M-1のファイナリストになることの方が彼らにしてみたら簡単なことのように思えて仕方ないですよ(笑)。“やまひつじ”で笑いが起きてないの始めてみました。

ビタミンS

リアルタイム更新でも書きましたが、こういう小手先のボケを積み重ねていくようなネタでは、審査員はある程度以上の評価は出来ないでしょうね。お兄さんが年取ってきたときに、このキャラクターが持ち味になるのか、「若いのに変に物腰が爺くさい」という味が単に消えてしまうのかというのが難しいですよね、男女コンビで男の方がボケというのも、主導権が女の方にあるという形ではないというのは*1、非常に珍しいので、何とかワンランク高い所を目指してネタ作りをして欲しいです。
お兄ちゃんが自分のことを「お兄ちゃん」と言ってるのはかなり好き、それが似合うキャラクターで居続けて欲しいです。
倖田來未目指すわ!」「じゃあお兄ちゃんは香田晋!!」

いがわゆり蚊

まずこっちのネタをきちんと選択してきたいがわさんもそうですが、これを生放送に出すのにOKを出したABCさんにまず拍手したいです。
今年NSCを卒業したばかりと言うことですが、もう現時点では未完成も良いとこですが、それでもはっきりいって加藤誉子は言うに及ばず、この手のタイプのイッセー尾形系女ピン芸人というジャンルがあるのなら、もう現時点で友近より上と見立てる人がいても全く不思議ではないと思います。僕は一本目の出来だけで言うのなら、とろサーモンではなく、この方か日刊ナンセンスを上げても良いと思いましたし、今年のR-1ぐらんぷりの決勝も可能性は低いけど狙える候補の末席には入ったと思います。ただこのネタを関西テレビ/フジテレビは全国ネットで流す勇気があるかな?(笑)

とろサーモン

スカシ漫才にしても、久保田さんのぶち切れバージョンにしても、賞味期限というのは確実に迫ってきているネタだと思うので、今のうちに出来るだけ多く露出して名前を売ってほしいです。案外、とろサーモンのコントって東京のネタ番組向きだと思うし、そう考えると最初にスカシ漫才やって、次にぶち切れバージョンという流れはきれいなんですが、スカシ漫才とコントネタで優勝できていたらもっと完璧だったでしょうね。

田中上阪

最終決戦に残らなかったの納得できないッス(笑)。つーか普通に次は洋服屋さんかピザ屋さんやって優勝だと思ってました一つ一つのボケが弱いのは、これはもう味というか田中上阪の面白さの一つとまで言って良いと思うので*2、台本だけ見たら面白いこと何にもないのに、この二人が演じてるから面白いという世界感をこのまま確立して欲しいです。ここもアウェー経験というか、自分たちに対して好意的でない客を前にする方法を身につけることだけが鍵だと思いますが、まだそんなにホームの足固めも出来ていないところでそれを要求するのは少し酷でしょうか?
今年の夏に大阪のお笑いファンの多くが、田中上阪を「今年のM-1の“麒麟枠”」と言って赤っ恥かいたけど、性懲りもなく今年もそういう予想立てそうな気はしてきました。

にのうらご

一本目のネタは本当に何故にM-1の準決勝でやらなかったのかということで、松ちゃんが一昨年のM-1の南キャンについて「当たりはずれがあるってことは、何が当たったかも分かってないし、何がはずれたのかも分かってない」と言っていたという話がありますが、結局baseで人気のある人たちって、それを判断する材料がないんですよね、何やっても受けるし、一方で南海キャンディーズとかネゴシックスとかは何やっても受けないからそれはそれで判断できなくなってますが。
しかしにのうらごは前出のベリー・ベリー田中上阪と違って、もうホームでの足固めは完了した後で、もうよほどのことがない限りbaseよしもとでの人気というのは安定・安全の強固なモノになっていると言えるので、NON STYLE
のようにそろそろ積極的にアウェーの他流試合に挑んでもらいたいです。そういう意味ではこの前の「オンエアバトル」は初っ端からケチが付いたなあ。
ということで今年の上半期は「目覚まし時計」のネタを引っ提げて、かなりの露出が期待できるんじゃないでしょうか。決勝二本目についてはネタ選択については賛否両論あるようですが、他の勝負ネタである「イルカ」「インパラ」「江川」とかは結構良くある若手トリオ漫才のありがちなパターンだと思うので、「目覚まし時計」みたいな裏切りの連続とか三人目の使い方をとにかく凝るという所がにのうらごの持ち味と考えるのなら、笑いどころは少ないし、個々のボケも弱いと思うけど、「潜水艦ごっこ」の方で正解だったと思います。どうせ散るのなら自分たちの持ち味のネタで散った方が良いですよね、どっちみち「インパラ」の方が受けたとしても、やっぱりこれらのネタってbase用にチューンナップされ過ぎているから難しかったと思うし、2005年はにのうらごはbaseでトップになるために頑張った年だから、そういうネタばかりが手元に残ったのは仕方ないし栄光の証でもある一方で、そんな状況下でもホームでもアウェーでも関係なく爆笑が取れる「目覚まし時計」のようなネタを作れたことが、にのうらごの凄いところだと思います。

日刊ナンセンス

ABCって優勝者も含めて、毎年一組はこの番組が芸人人生の大きな転機になる人たちがいて、それがナインティナインのようにすんなり優勝者の時もあれば、陣内智則イシバシハザマみたいに準優勝でもなる人たちがいますが、今年のABCで最も人生変わるきっかけにしたのはここでしょうね。
いま見たら三つ目の“遅受け”で拍手が出るぐらい会場掴んで、あとはそのままの勢いで突っ走れましたね。ここはもうさっさと「笑わず嫌い王決定戦」とか一か八か出してみてくれないかなあと思う、そういう意味ではこのぐらいのクラスの芸人さんが出られなくなった「オールザッツ漫才」ってどうなのという話もまた出てくるんですが。
しかし気になるのは、この人たちは二本目のネタ用にしっかりと「ミュージカルコント」の為にメルシーの衣装とか持って行ってたのか凄い気になります。最終決戦の三組の出来を考えると、このコンビを最終決戦に残していて、「ミュージカルコント」をやったら最優秀新人賞取れてたんじゃないかな? 個人的には今回の一本目に「思ったより受けたコント」が無かったのが残念なんですが、やっぱり最終決戦に上がってもこのネタやるつもりだったんでしょうね、結構使っていないネタがあった。
よく考えたらまだコンビ結成二年目ぐらい何ですね、凄いこの先が楽しみになってきました。でもオリエンタルラジオイシバシハザマが出て、今度の日刊ナンセンスと、旧態依然とした普通のショートコントやってる人たちはどんどんきつくなってきましたねえ。

*1:一見妹さんの方にあるように見えるんですが、お兄さんがむしろ妹さんに主導権を与えてやっている的な、本当に主導権を持っているのは兄、妹を自由にさせてやってるんです的な余裕を演技プランでやっているように見えて、実はこの辺相当高度に組み立てているとは思っています。

*2:大体その後のツッコミとかそれに対する切り返しの方を楽しむタイプだと思うし、上阪君の声が高すぎて何言ってるのか分からないのも、上阪君が高い声で何か叫んでいるというシチュエーションだけで面白いという風にまで持って行く方向に努力した方が良いような気がしています。というかbaseではもうそういう受け方ですしね。