「第27回ABCお笑い新人グランプリ」

今年の審査員は大竹まこと原田伸郎町田康田丸麻紀、ABCの岡村道隆。町田康はすっかり恒例になりました。以下、出番順。

  • 最優秀新人賞エントリー10組

ベリー・ベリー 漫才「ゲームセンター」

UFOキャッチャーからゾンビゲームのネタ、まあ当然これやりますよね、しかしこのネタはこうやって茶の間で見たら、GLAYが出るまでの前半弱かったなあ、この辺は結構劇場で見ると騙される、騙す力があるということなんでしょうが。75点

ネゴシックス コント「陶芸教室」

ネゴさんはこうやってモノを使うネタよりも、オールザッツでやってたようなネタの方が良くないかなあ、このパターンはもう弾が出尽くした感じがします。どのネタも小道具が違うだけでボケ一緒やからなあ。65点

天然もろこし コント「マラソン」

持ち味と言えば持ち味ですが、難しいネタ持ってきたなあ。70点

スーパーZ 漫才「羊が一匹」

もう四組目なのにまだ客重たいなあ、まあ二人とも結構ミスしてたんですが、“山羊”のくだりで爆発もしなかったし、今日は厳しいなあ。71点

ビタミンS 漫才「老けたい」

古い若手漫才という感じ全開で、お客さんの心をかなり開きましたが、個々のボケの小手先感はかなり強かったから、審査員は評価しにくいでしょうね。76点

いがわゆり蚊 コント「リップクリーム」

あっこれ上三組に残るかも、大竹まことは絶対にズボッと填ったぞ、しかし天然もろこしからこっち四組、ABCって本当に冒険するなあと感動しましたよ(笑)。82点

とろサーモン 漫才「学生時代が懐かしい」

ようやっとお客さんを起こしてくれました。ネタはいつも通り。歌が「カセットテープを食べる」じゃなかった。85点

田中上阪 漫才「美容師になりたい阪

爆発したなあ、テレビでこんなに成功した田中上坂を始めてじゃない? 大一番で失敗するイメージだったけど、モノにして良かったというか、出番順もとろサーモンの後というのも良かったですが、お客さんが見ようという姿勢が整っていると田中上阪は違いますね、やっぱりもう一本ネタさせてあげたいという意味では、今のところここが一番ですね。97点

にのうらご 漫才「目覚まし時計」

だからなんでこれを、M-1の三回戦と準決勝でやらなかったんだ。にのうらご田中上阪とろサーモンの並びは凄い。92点

日刊ナンセンス コント「日刊ショートコント」

日刊さん、凄いなあ、この面子、この大舞台でここまでハマるかというぐらいハマりましたね、上位三組に残るかどうか分かりませんが、いや残ってもおかしくないですよ、凄い。ここまで全部狙い通りにいったら強いよ。ショートコントって本来ネタ量産のための手抜きでやることが多いんですが、イシバシハザマオリエンタルラジオ以降、手抜きではないショートコントの流れが出来ました。95点

上位予想

普通に考えれば、とろサーモン田中上阪にのうらごの三組でしょうが、ただサプライズがあるのなら、とろサーモンを外して日刊ナンセンスいがわゆり蚊。自分の希望は田中上坂にのうらご日刊ナンセンスで審査員特別賞がとろサーモン

  • 過去の受賞者の漫才

アジアン 漫才「二択クイズ」

去年のM-1準決勝でやったネタでした。馬場園さん快気祝い漫才。この漫才をM-1本番で出来なかったのは、馬場園さんの体調もあるけど、現状のアジアンの格だったんでしょうね。

なすなかにし 漫才「ゴリラの恩返し」

なんか今年ぐらいにはあっという間に駆け上がる予感もあったんですが、やっぱりまだもうちょっとかかるかなあ。

チョップリン コント「娘さんを僕にください」

やっぱりチョップリンにはこれだけの持ち時間いりますね。

ますだおかだ 漫才「爆笑旅館」

ますだおかだがこうなるって、誰が想像できただろう(笑)。いやー岡田さん凄いし、これをさせてる増田さんも凄い。

レギュラー 漫才「節分」

笑い飯 漫才「パンツがズレるのを防ぐ」

安田大サーカス 漫才「温泉旅館」

陣内智則 コント「クイズ」

麒麟 漫才「マナーの悪い人を注意する」

ブラックマヨネーズ 漫才「釣り」

フットボールアワー 漫才「フットボールアワー戦隊」

こんなところで言う事じゃないと思うけど、やっぱり歴代優勝者をこうして並べて三組も見せられると、ブラマヨさんはスケールが一枚落ちると言わざるを得ないと思う、このパターン以外の引き出しを用意しないと、特に関西以外の視聴者には「あの日だけだった」と取られかねないですよ、これは人によって印象は違うでしょうから、あくまで僕の独りよがりの意見ですが、いま一番脂がのりきっているはずのブラックマヨネーズと、いまだに長いスランプのトンネルに入り込んでいるフットボールアワーのはずなのに、正直僕はフットとブラマヨの間にはもの凄い根本的なポテンシャルの差を感じたなあ、ますおかやフットも苦しんだ「M-1優勝者」の看板にブラマヨさんが耐えられるかどうか、かなり心配になってきました。このレベルで比較されるようになるのはかなりしんどいことだと思いますが、乗り越えて欲しいです。
でもいい加減フットボールアワーもスランプから脱してくださいよ、それでもこの水準というのは凄いことだとは思いますが、やっぱり現状で日本の現役の漫才コンビは、オール阪神・巨人ますだおかだフットボールアワーの三組が頭二つ、三つ抜けて特出した存在だと改めて思いました。

  • 最終決戦

最終決戦三組発表

にのうらご、天然もろこし、とろサーモンの三組が決勝進出。正直、二本目に希望がもてるコンビが残らなかったような気がする(笑)。というか天然もろこしって何よ(笑)。でもこの面子ならにのうらごに勝って欲しいけど、江川とかやってしまいそうで怖いです。

とろサーモン 漫才「キレ漫才」

久保田さんがキレるネタ、キレて独りで語り出すのがいつものタイミングより早くて勝負かけてきた感じが見えました。

天然もろこし コント「映画館」

特に感想無いです(笑)、田中上阪日刊ナンセンス見たかった。

にのうらご 漫才「潜水艦ごっこ

とりあえず「インパラ」や「江川」じゃなくて良かったけど、このネタも面白いんですが、一本目とのクオリティの差が歴然としすぎてるからなあ、とろサーモンにのうらご比べるて、一本目と二本目を足してみた場合、いい勝負じゃないかなあ、完全にどっちかは審査員の好み次第でしょう。

結果発表

最優秀新人賞はとろサーモン、審査員特別賞はネゴシックスと、大方の予想通りの結果となりました。サプライズのABCお笑い新人グランプリだったんですが、去年のアジアンから確実に風向きがこの賞は変わってきましたね、自動的に優秀新人賞はにのうらごと天然もろこし、にのうらごは結局アウェー専用のネタを去年一年かけて「目覚まし時計」しか用意できなかったのが残念でした。天然もろこしはまあ儲けもんですよね(笑)。
来年は今年も出た田中上阪日刊ナンセンスに加えて、天竺鼠鎌鼬ベリー・ベリー、宇宙ネズミ、鯉女房ダ・ヴィンチあたりが中心になるんでしょうね。
個人的には今回は日刊ナンセンスがこのランクの舞台と、客層でも通じると言うことが分かったのが一番嬉しいです。おそらくABCはM-1予選やオールザッツと並んでチェック対象だと思うので、何とか見つけられて欲しいです。

感想リンク集とそれを受けて思ったこと

これは「おまえもそういうところあるだろ」と言われたら、「その通りです、すみません」というしかないし、そう思う僕の方が先入観にとらわれているとも言えるかも知れませんが、M-1の事前予想や感想なんかでも思ったし、『お笑い解体新書』が届いて読んだときにも思いましたが、現場の人や現場に近しい人ほど、どうも先入観が入った状態で見すぎる傾向があるように思いました。最も個人的に公私に付き合いがある人に対してそうなってしまうのは仕方ないかも知れませんが、同業者目線や現場の近しい人の目線というのが近年、お笑いの賞レースで審査に組み込まれ出したのは審査コメントの幅を広げてますし、凄く面白いと思うんですが、そればっかりになるのは違うかなという気もしてきましたね。
細かいことは去年のM-1を最終的に振り返るのをやろうと思っているのでそこで書きますが、賞レースに限らずオーディションなんかもそうですが、意外と現場の人の方が、名前負けする傾向があったり、持っているイメージの先入観が強いという印象もあるんですが、それ以上にM-1の予選からずっと思ったのは、現場サイドの人ほど“技術点”と“芸術点”だったら“技術点”を重視する傾向が強くて、それは困ったときほど顕著だと思いました。
正直、他の賞レースと違ってABCぐらいまでのキャリア縛りがキツイ賞レースなら、多少は“技術点”に目を瞑っても“芸術点”を優先する「技術2:発想8」ぐらいの基準でやっても良いのではないでしょうか? というよりはABCは予選は明らかにその基準でやってますよね、だから近年落語家さんがノミネートにすら辿り着けなくなっている。
そんな中で面白いなと思うのは、現場の人にも関わらず、このダイアリーでは文句いっぱい言ってますが、かわら長介倉本美津留の両名がM-1はもちろん、いろんな賞レースにおいても「技術1:発想99」ぐらいの審査基準を時折発揮するというのは面白いなあと思います。だから自分の趣味が出過ぎて審査が偏るという弊害もあるんでしょうが、この辺はどっちを取るかですね。
しかしよく考えたら色々と批判されていますが、藤本義一難波利三が審査員だった頃もこういう賞レースって、そういう審査傾向だったんですよね、後者の二人は老いとともにダメになっていきましたが、やっぱりそういう判断が出来る作家審査員枠というのは広げておく必要があるかも知れないですね、新しい発想について行けない老人を除外するのと、あまりお笑いに詳しくない文化人、大学で笑いを研究しているとかいうような人ではなく、町田康とか、あと年を取っても若い完成に充分対応できるキダ・タローとか中心に回していった方が、この大会は良いかも知れません。
しかし感想や論評を見て回ると見事に現場の人や芸人さんはとろサーモンを押す声が高くて、ファン目線では比較的にのうらごを押す声が高いという傾向は面白いなと思いました。
個人的には一本目で75点、二本目で50点で、合計125点だったにのうらごが、一本目65点、二本目65点で合計130点のとろサーモンに負けたという印象が今回は強かったです。正直、最終決戦が低調になったというか、かなりどんぐりの背比べになったということは否定できず、これだったら最後は名前と格で選んでも文句は出ないと思います。
まあでもとろサーモンにのうらごだったら、どっちが勝っても良かったんですけどね、ただにのうらごの方が難しいことに挑戦していると思うのと、とろサーモンがどっちかというと本職のコントではなくスカシ漫才で評価されていくというのは、今後大変な壁にもなるだろうなと思います。
世間的には『スカシ漫才のとろサーモン』になっても、本人達の意識の下ではあくまでも数あるコントネタの一つとして、『相方の言うことを全部無視するツッコミをする漫才師』というコントをやっている意識で続けてほしいです。多分それは言われるまでもなく本人達が一番分かってることのようにも見えるんですけどね、とろサーモンの漫才はあくまでも漫才師役を演じているコントという捉え方、取り組み方はそうズレていないと考えています。