『アニメ作家としての手塚治虫 その軌跡と本質』(津堅信之/NTT出版)
本日は遠出をしたので、電車の往復の友でした。手塚治虫のアニメ制作に関して論じられていることについて、謎な部分や不可解な部分が、かなり大きく埋まることが出来た良質な研究本で、僕は夏目先生の手塚論本とか、手塚さん自身の自伝本みたいなのもかなり好きですが、アニメ作家・手塚治虫を語るという意味で、こういう本が出てきたのは嬉しいです。是非ともこれに則った手塚治虫の虫プロ時代の伝記物も観たくなった。
しかし手塚先生はインタビューや自伝などで、本当のことを言わない人だというのは、前から思ってはいたけど、ここまでとは思わなかった(笑)。あれって絶対に手塚さんの「あまのじゃく」な複雑な性格というのもあるけど、インタビューなんかに関しては、相手の期待しているような発言をしてあげて、喜ばせたあげたいみたいな過剰なサービス精神というのも、僕は手塚コメントを額面通りに受け取ると、事実と離れていく要因でもあったんじゃないかなと考えてしまいました。
アニメ作家としての手塚治虫について、これまで研究や評論があまりされてこなかったことについて、手塚治虫というアニメ作家が、多くの同業者から評価が出てしまったから、それが結論になってしまって評論家やファンが出る幕がなくなったというのは、僕はかなり正しい分析のように思いましたし、往々にして同業者の評価というのは、どの業界でも偏ったものになるもので、また反対意見が出しにくいものだから、そういったものが定説化してしまって、歪んだ形でアニメ作家としての手塚治虫というものが、定説化してしまったというのは、僕は納得出来るものがあった、しかしこれは相当に良書なんですが、これ一冊で風穴を開けるには相当な困難だろうなとも同時に感じてしまいました。相手が宮崎駿だもんなあ……。
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