吉本興業の若手育成スタイルの限界

東京NSCがかなり型にはめた授業スタイルをしているという話ですが、いまM-1の1回戦を見に行って現役のNSC生や去年の卒業生のネタを大量に見ていると、大阪NSCもそうなっているんじゃないかと思うぐらい、型にはまりこんでいる漫才が多かったので、NSCといえば授業料だけ取って、ほぼほったらかしみたいなイメージが卒業生から流布していますしたが、最近の卒業生の話を聞くとどうもそうでもないような感じで、かなりシステマチックに芸能学校という形になっているようなんですが、確かにそれで良いのかという気は確かにしますね。
僕は最近NSCでいま使っている教材を見せて貰ったことがあるんですが、そこで全否定されていたやってはいけないとされていたことが、モロにいまのbaseトップ組の笑い飯麒麟、千鳥のやってることだったんですよ、要するにいま売れている人たちのやってることはするな、この人たちの時代が終わったときに逆のことやってる人たちの方が売れやすいのも事実でしょうが、ちょっと安易だなあとは思いましたね。
吉本の芸人さんが型にはまってきた理由としては、テレビの世界においては明石家さんま島田紳助ダウンタウンといった人たちの手駒として使われるということに需要が限定されてきていること、また副業をしながら芸人を続けることが昔と比べて楽になってきたことで、芸人だけで生活を成り立たせることに事務所が昔以上に気を遣う必要がなくなってきた上に、現状で劇場が増えていて今後も増えていくこと、ネタ番組の増加などでとにかくある程度の水準の芸人が大量に必要という状況が出てきているのは確かだと思います。
特に大阪はいまルミネに出て行った人たちも含めて、現在30歳前後の芸人さんが、ちょっと多く生き残り過ぎているために、上がつかえているだけでなく、横も窮屈になっているので、誰か一組が特出するということが難しくなっているし、大阪のテレビ界の現状は個性的な人ほど出にくいような仕事しかないので、正直うめだ組の人たちが別にその人でなくても出来るような仕事をみんなで回しあっているというのが現状で、そのおこぼれをbaseの上の方の人たちが得ているという状況なわけですから、そりゃ個性を磨こうにも活かす場がないし、僅かなパイを奪い合うこともなく最初から選り分けられているんだから、そりゃみんな生活苦しいという話にもなりますよね。
正直、芸人さんが自分からもっと仕掛けていけるような形をどんどん作ってあげないとダメだと思うんですよね、まだ東京は人力舎もあるし、事務所を横断したようなイベントも沢山ありますし、芸人主導の自主イベントも多く見受けられます。独立系のイベント会社が色んな公演の企画をいっぱい実現させていますし、何より大阪に比べて気骨のある自分のやりたいことをしたいという局のプロデューサーやディレクターが少なくなったとはいえまだいる、大阪はやっぱり良くも悪くも吉本一人勝ちの影響で、吉本の顔色を伺わないと何も出来ないという状況はやっぱり閉塞感ではなく、完全に閉塞させてしまってますよね。
実際問題として、スピードワゴン、ヒロシ、カンニングといった方々が吉本を辞めて東京の事務所に移籍してからの活躍、ハチミツ二郎超新塾のような個性的な活動をしている人たちを見ると、やっぱりちょっと今の吉本には問題あると言わざるを得ないし、こういう人たちの活躍を横目で見ている吉本の芸人さんたちの心中はと思いますね。
吉本も社内ベンチャーを始めるとか*1、それほど大物ではなくて吉本の方針にあわないで苦しんでいる人の独立や移籍に柔軟になった方が、絶対にお笑い市場全体が活性化して吉本にとってもおいしいと思うんですけどね、吉本にとって他事務所移籍とか独立はどのあたりまで下の方までだったら許容範囲なんでしょうね、正直いってこれは悪口ではなくいうのですが、そこそこ芸歴もあって知名度もお笑いファンにはあるコンビで、ビーサンとかで足踏みしているコンビは芸人を大事にしてくれるタイプの事務所に移籍した方が、生活の糧を得るという分には良いと思うんですけどね。
とりあえず吉本さんは芸人さんが自分の独自の動きで自分で企画したり、取ってきた仕事についてはどんどん自由にさせて、何%か上納すればOKとかにしていけば良いと思うんですけどね、吉本的にも楽に色々な市場を芸人が勝手に開拓してくれるわけですし、だいたいショーパブとかのバイトは芸能活動じゃないのかって話もあるわけですしね、しかしそういう自由な個性的な活動という意味では、ぜんじろうさんとケンコバさんは上手いことやってるなあと思います。

*1:まあ実際いまのbaseよしもととか、吉本ホルモン女学院の運営はそれに近いものあるようですが。