「仕方がない」という思考停止

「秋田・中西事件」の際に自分がサポーター論として、『コミュニティの象徴であるチームが一番大事で、そのためには選手側の犠牲はやむを得ない』というのが正しいサポーター、というような考え方にどうしても納得が出来なくて、もうこの件はどうでもいいや、宇宙人とは話が出来ないと思っていたのですが、ようやく違和感の正体が掴めてきた気がします。それは欧州のようなサポーターとチームの関係と違い、日本の場合『会社のために社員が犠牲になるのは当然』的な組織論をベースにしたものに変換されたチームと選手の関係があるから、ヨーロッパと一緒に出来ないという違和感があったわけで、やっぱり現状のJリーガーの犠牲の上で成り立つリーグとチームというのはおかしいし、それに甘えているサッカーファン達を僕はやっぱり軽蔑の対象とすら思いたいときもある。
僕があの事件の際に言われた言葉で一番カチンと来たのは、「しかたがないじゃないか」というものです。なんでしょうこの思考停止の現状追認な言葉は、あと時間が解決してくれるという考え方も根強い、私には喉元過ぎれば何とやらで、過ぎれば忘れてまたのんきに愉しみ、毎年のような同じ事を繰り返す道を歩むようにしか思えなかったんですが。結局予想通りというか、鹿島の社長の言っていた「ゼロ提示云々は秋田と話し合いを重ねて決めたこと」というのは、その後の秋田さんのインタビューやその後のサカマガでの独占手記を見る限り、秋田さんが嘘をついていない限り、社長の大嘘だったことになりますが、もうこの件は喉元過ぎれば何とやらでもう誰も言わなくなっている。僕たちはそれが予測できたから、これが出た当初に嘘くさいという論戦を貼ったけど、まあ言いがかり付けたがりのようにあしらわれましたっけ(笑)、とりあえず私はマスコミから出たものは100%信用できないけど、チームや選手が直接発言したことは100%信じるという日本のネット界隈のサッカーファンのお子ちゃま気質を笑わざるを得ない。
中西や秋田の件を経て、サッカーに夢が持てないからサッカーの道に進む人が少なくなるという危惧を馬鹿馬鹿しいと一笑にするのは決してガゼッタさんだけでなく、他でも多く見かけました。僕はそれをとっても甘い現状認識であると思うし、現状サッカー選手にだけ苦労を強いる無責任な言い草だとも思います。なぜなら現実に国見の平山は高校卒業後にJ入りではなく大学進学を選びました、これにはムズ〜リさんが指摘しているように「これは選手に蔓延している「Jリーガーの将来性の低さ」に起因している。」(1/7の記述)だと思う。平山の才能、将来性、期待などは上に書いた今日の試合はもとより、五輪代表招集という話などを出してくるまでもない、おそらく現在ノンプロ状態のサッカー選手の中で最高に近い位置にいる素材が、いくら強化指定選手という制度があるからといって、すんなりJリーグ入りを選択できない、そのぐらいJリーグは魅力に陰りが出ている、危機感を持たれているんです。サッカー選手を選択する人は減らないかも知れないけど、Jリーガーという選択肢に関しては明らかに敬遠する向きがあるじゃないですか、本当に馬鹿馬鹿しいと一笑に伏して良いことなのでしょうか?
「本人が望んだ選択なんだから良いじゃないか」というような言い方をする人がいます。これも私が嫌いな言葉の一つです。平山の選んだこの道について、「本人が望んで進んだ道なのだから、他人にとやかく言う筋合いはない」という人も多いでしょう。しかし平山にしてもザスパ草津で頑張る小島さんにしても、Jリーグの環境がもっと整っていれば、しなくて済んでいた苦労だった可能性がある以上、「本人が自ら選んだ苦労の道なんだから、他人がとやかく言うのは失礼」というのも、問題をごまかして嫌なところから目を瞑ろうとする思考停止状態だと思います。
問題があったら、仕方ないとあきらめたり、本人の問題といって自分には関係ないこととするのは、サッカーでJリーガーに楽しませて貰っている人間のすることではない。彼らは決して好きなサッカーが出来ている幸せな人達と我々の側が札を付けてしまうのはいけない。それは楽しまさせて貰っている側の人間がすることではない。それでは我々がサッカー選手達を「サッカーをするだけで食わさせてやってる」ような関係と間違えかねない。
あくまで私たちと彼らは「素晴らしいサッカーを提供する」「素晴らしいサッカーを提供してもらう」というイーブンな関係だと思っています。しかしいまのJリーグの現状は決してイーブンではない、7:3、いや下手したら8:2ぐらいで選手側の支払いのほうが多いように思います。
今週のサッカーマガジン金子達仁氏が「失笑 恩人ハンス・オフトへの手紙に代えて」という文章を載せていてその中の一文に、こう書いている

わたしは、ハンス・オフトが「日本サッカー界の恩人」だとは思わない。彼はプロの監督として日本サッカーを指導し、プロの監督としてのギャランティを受け取っていた。

私は大部分のプレイヤーに対して、日本のサッカー界は適切なギャランティを支払っていると思っていない(これは武藤さんの掲示板に書いた)側の人間なので、足りない部分は選手のボランティアということになる、これは金銭的な問題だけではなくプロとしてのプライドを満たさせるという問題など、彼らに対して支払い不足の分は相当にあると思う。そういう意味では彼らは我々に……少なくとも私にとっては恩人だ。
その恩人が涙を流して悲しみにうちひしがれるような事態に陥っていたら、その恩人のために立ち上がるのは人として当たり前のことだ、その相手が自分より何倍もの収入を得ているとか、好きなことで生活しているなんて事は一切関係ないことだと思っている。
無責任に自分が愉しみたいだけ、難しい話はどうでも良いというのが前提のサポーターイズムなら、そんなものはない方が良いと思う。とりあえず「仕方がない」という無責任な思考停止だけは辞めるべきだと思う。とりとめもない文章ですが、感情をきちんとぶつけて決着させないと、二度と日本のサッカーファンの人達とは一緒にサッカーを楽しめない気がしていたので、言いたいことは言いきっておきます。その上で相手側からあっちいけと言われれば、それはそれで仕方ないし(笑)。
でも蟹さんボヤッキーさんに少しでも伝わることが出来たこと、kayooさんからもしっかりとした良いメッセージ頂きましたし*1、言えば伝わることもあるでこれからも何かあったら言いますが(笑)。続く→http://d.hatena.ne.jp/toronei/20040109#p1

*1:あっでも今後あそこに僕宛メッセージ書いても、僕はもう見てないので絶対に僕には伝わりませんのであしからず、言いたいことがあったらここに書くかメールか、きむらずさんのところで(笑)