芸人の噺のまくらと実話の作法から見るメディア論

13日の日記でも取り上げた大竹まことのラジオに松尾貴史がゲストに来た際に話していた、メディア論やバラエティでの発言に対して、コンプライアンス求めることについて、改めて書き起こししている記事を読んで、思い出したことがあったので、またこのラジオで語られていたことについて、書きたいと思います。
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【7月11日ゲスト:松尾貴史さん】 - タスカプレミアム

ここで引用されていない部分の話になってしまうのですが、お二人の会話の中で、落語の「まくら」について語られていて、まくらで語られていることについても、本人の体験とは限らないということや、一人の落語家の経験談を、色んな落語家が自分の話としてすることがあるという話をして思い出したのが、やしきたかじんの「ぼったくりバー」のエピソードです。
有名なエピソードなので、知っている人もいるとは思いますが、やしきたかじんが芸人さんと飲んでいる時に、明らかな「ぼったくりバー」にワザと入って、お勘定の時に「ぼったくりバーが、この程度の額でしか請求しないとはどういう事や、○○万円取れ」とヤクザを説教して、自分から支払額を増額して帰っていった、というエピソードがあるのですが。
この時に一緒に飲んでいた芸人さんは、桂坊枝という落語家さんだったのですが、このエピソードを当時やしきたかじんに可愛がられていた、一緒に仕事をしていた芸人さんの多くが、自分が同席していたエピソードとして、このネタを話していたんですよね、それについてラジオとかで苦情も来て、この話を自分の体験したエピソードとして語っていた芸人さんの内の一人が、「会話の流れとして、自分がこのエピソードを紹介する時に、これは桂坊枝が一緒にいって、僕はその話をあとから聞いたんですが、という言い方になると話が間延びするから、このエピソードを効率的に伝えるために、みんな自分が同席したことにしている、それは桂坊枝も納得しているし、逆に自分の体験を桂坊枝がすることもある、そうやってこの噺が一番巧く喋れる人間のエピソードになるというものなんだ」という事を話していたんですが、あんまりリスナーの共感を得られなかったのか、このエピソードは、やしきたかじん本人しかいつの頃からかしなくなりました。
しかし明石家さんまもよく「話の展開によって、そうした方が面白くなると思ったら、父親が死んでいることにしたことが何度かある」と、冗談めかして言っていましたが、実際問題としてさんまさんはエピソードトークとか、聞く度に細部が変わっていて、その変わった部分のおかげで面白くなっているし、分かりやすくなっている。
よくBSマンガ夜話とかで、レギュラーの人たちが「これは事実ではなく実話」という話をしていますが、そういうことに対する許容度の狭さというのは、メディアにしてもネットやブログ界隈のことに対しても、世間のムードとして出来上がっていて、それが物事をつまらなくしているということは、強く感じることはあります。

馬鹿なクレーマーは他の客を不幸にする。 - 想像力はベッドルームと路上から

こういうことはメディアとか、ネットとかに対しても同じ事が言えるのではないでしょうか? 『生活笑百科』に「それは本当にこの芸人さんのお悩みなのか?」というツッコミが蔓延しているのが、いまの社会ということは、メディアへのクレームを見ても、ブログやらネットの掲示板、ブクマなどを見ても感じるところです。

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