「R-1ぐらんぷり2008」決勝現地観戦記

東京の友人が「観覧当たったけど、一緒に見に行く人がいない」ということで誘ってくれたので、関西テレビまで行ってきました。待ち合わせに少し早めについて、天満の駅周辺をうろついていたら、R-1の話をしている人が物凄く多くて、「もしかしてこの人たちみんな見に来たの?」という気持ちになりましたが、実際に集合時間に関西テレビに行ったら、確実に200人以上は並んでいて、いかにも今日のこのために遠方から来たというカバンや服装の人も多くて、男女比もほぼ半々だったし、年代も下は小学生、上は70代ぐらいのご婦人という、絶対に公正な抽選ではなくて、バランスの良い客層にすることを目指して集めたと思われます。実際にそういう公開放送などの客を集める会社が、間に入っていたみたいです。span!の前説で「遠くから来た方は手を挙げてください」という呼びかけに、手を挙げている人が多かったです。
しかし並び順で今回は誘導されたんですが、そんなに広くないスタジオで一番後ろの一番高い所で、おまけに一番隅だったので、全体が見渡せる上に、舞台の方を見ていても審査員が目に入るところという、結構ベストポジションでした。モニターとか裏方の人が詰めている所も丸見えでした。
だからその辺の会場の雰囲気とかも踏まえてレポートしたいんですが、結構会場内にいても座り位置とかで、全然違う印象になることが多いので、その辺はM-1の敗者復活戦や予選の現地観戦のレポートを見比べても、良くあることなんで、その辺は踏まえた上でお願いします。

前説〜オープニング

span!の前説中に誰かの発声練習の声が聞こえり、スタジオのモニターに移る「ドリーム競馬」できさらぎ賞を見ながら、拍手や歓声の練習という、お決まりの前説をしていました。span!は前説上手かったなあ。
そしてR-1は放送時間も短いことがあって、審査員は板付きで始まるわけですが、審査員の五人がspan!の前説を受ける形で、お客さんにどんどん話しかけて盛り上げていって、豪華メンバーによる前説の続きみたいな時間が続きました。あれで一気にスタジオの緊張感を和らげて、トップ出番の人からお客さんが笑いやすい空気になって、やっぱりあれだけの芸人さんが揃うと凄いこういう空気作りは上手いなあと思いましたし、審査員さんもそういう事をいうことで、自身の緊張も和らげているようにも見えました。現場にいると、寛平さんや高田さんの微妙に笑いを取りに行くコメントも、会場の緊張感を和らげていて、なかなか良い按配に感じました。
審査員については先に書いておきますと、審査員の方が普通に目に入る位置だった僕の感想ですが、月亭八方さんはかなり厳しく審査するという姿勢で見ていて、高田純次さんは身を乗り出して舞台に向かっているときと、背もたれに付いて入り込めていないときが、かなり分かりやすかった。他の三人の審査員はかなりお客さん目線で楽しもうとしている感じでした。基本的に審査員の反応は、現場のお客さんの反応に近いものがあったので、実際の得点と審査員の笑い方や手が出る量とかとも、あまり比例していないように感じられました。笑いながらも冷静な判断はまた別というのが伺える審査員の皆さんでした。

COWCOW山田よし 8位・447点

審査員や司会の雨上がり決死隊の番組前やCM中の盛り上げもあって、トップバッターという雰囲気は少なくとも場内はない、少なくともM-1のような雰囲気ではない中で、客受けだけならおそらくこの日の上位三人だったと思います。実際に現場にいた人の中では、優勝の可能性もありと思っていた人はいたのではないでしょうか? 僕の同行者は「芋洗坂係長か山田よしが優勝」というよなニュアンスでいましたし、だから帰って電話とかブログで見ると、そんなに評価高くないのは「あれー?」という感じになりました、ライブって受ける感覚って違うんだなあと思わされました。ただモノマネは全然似てないんだとは、僕も思ってみていましたが(笑)。

世界のナベアツ 3位・469点

受けてはいたけど、会場の感覚としては後半に向けて失速した感じでした。「5の倍数の時に犬っぽくなる」は「8の倍数の時に気持ちよくなる」と比べると弱かったし、それだったら「3の倍数と3が付く数字の時だけアホになる」をやって、次に「8の倍数の時に……」を入れて、後半のややこしいのは少し減らした方が良かったように思いました。会場には終わった後はやや期待はずれ感が漂っていました。あれだけ受けても期待はずれ感が出てしまうというのは、事前の期待が高すぎたとか、事前にこのネタの露出が多すぎたこともあったか、世間の高いハードルを越えられなかった印象でした。

中山功太 4位・459点

「対義語」のネタがパワーアップしているというのが、準決勝の評判でしたが、僕が最後に見たときの「対義語」とほとんど変わっていなくて、かなり失望しましたが、でもこの手のタイプのネタは、審査員が芸人さんである限りは、絶対にどんなにレベルを上げても上位にはいけないと思う、それは演者の演技という部分が出ないネタは、芸人さんが審査している限り評価しきれないと思う、芸人目線で見ると「演技者としての部分を見れないネタ」という不満が出るし、こういう大喜利形式ネタというのは作家目線で見たときに、「俺の方が上手いの考えられる」と思われたら、それで終わりなのでやっぱり基本的に賞レースには向かないタイプのネタだと思います。
僕は個人的に中山功太は大好きだし、いま日本で若手でピン芸のコントやっている芸人での中では、一番才能あると思っているから、実際に過去のR-1ぐらんぷりでは二回とも高評価だったし、僕はあっちを突き詰めた方が売れたし、R-1の結果にもつながったんじゃないかという気持ちが強くあります。
個人的に中山功太のフリップネタ、あるあるネタは理に落ちている感じが強くて、コントだったら凄い良い感じで出る中山功太の「ウザさ」みたいなのが、凄いマイナスに働くように思いました。嫌味でキザな国語教師みたいなキャラ付けをしてコント風にやった方が、まだ良かったかもしれない。準決勝で何故、中山功太はいつも大爆笑なのに、決勝では受けないのか、審査員の評価を得られないのかというのは、これはM-1での千鳥と同じで、準決勝のリテアラシーの高いお客さんだったら、普通のお客さんには伝わりにくい部分についても、演技者が補完しないといけない所を飛ばしても、お客さんが勝手に理解して補完してくれるんですよね、功太さんや千鳥の普段のキャラとか、この人達が普段からやりたい事を知っているし、ただ決勝で一般観覧のお客さんや、テレビの前の視聴者はそんな甘えは許してくれないし、M-1やR-1の審査員をしているようなプロのベテラン芸人は、その辺を見極めてしまう。
だから会場でも基本的に笑っているのは、男のお笑いファンという感じの人が多かったなあ、結構スタジオ内には子供のお客さんもいたんですが、唯一集中切らしていたのも功太さんの時だったし、中山功太という才能を考えれば、才能の一片しか出すことが出来ない、こういうタイプのネタをやるのは、僕はもったいないと思います。絶対に「DJモンブラン」の方が面白いし、あっちを伸ばしていった方がメジャーへの道はあると思うんですが……。なんか自分の大きな才能を、自らこじんまりさせる真似はもったいないよ。
審査員で大きく喜んでいるのが一人ぐらいしかいなかったので、最後の順位は驚いたのですが、ただ点差がほとんど無いし、3位と4位で大きな点差があったので、あんまり過去の連続7位からの順位アップというのには、意味はないですよね、むしろおいしくない順位になった感の方が強いです。
どうしても好きな人の悪いこと書き出すと、止まらなくなるなあ、まだまだ書きたいことはあるけど、この辺にしておきます……。

なだぎ武 優勝・474点

なだぎさんも受けてはいたけど、終わったときの会場は少し期待はずれ感があったように思えました。だから現場で見たときは優勝だけでなく、最後の二組に残ったのも僕は少し驚きました。ただスタジオを出てすぐに電話した友人は「納得の結果だった」と言っていたので、テレビで見たら違うのかな? そうだとしたら現場にいながら、そういうのも加味出来るプロの芸人の審査って凄いなと思って帰宅して、色んなブログ感想を見ていたら、完全に賛否両論真っ二つで、なかなか悩ましいと思いました。現場に関しては納得してなかったかも知れない人も、なだぎさんのあの号泣で、全員が全員OKという気持ちになっていましたが、家に帰ってなだぎさんが泣いている所だけ、先に録画を見たんですが、テレビで見るよりもなだぎさんは泣いてましたよ、実際に収録が終わって全員が裏に去ってからも、拍手が鳴りやまない中でなだぎさんは一人泣いていましたし、あえて残して去っていった雨上がりの二人も良かったし、立ち去るときはいつものなだぎさんの顔とポーズで去っていったのはしびれたなあ。なだきさんはR-1の事前番組とか、年末年始のバラエティ番組での密着とかでも、なだぎさんは凄い格好良かったけど、今回もとにかく格好良かった。普通に男前なんですよねえ、今回はなだぎさんがスミス夫人の頃からの、なだぎさんらしいネタで勝てたというのも含めて、ライブで見たときはそんなに上とも思わなかったけど、結果については良かったなと思いました。

鳥居みゆき 6位・451点

実は会場で紹介のVTRや、ネタの際の出場時に一番拍手と歓声が大きかったのは、この人でした。「大阪で受け入れられるか?」なんてことは全く心配なく、逆に一番この碑に観客が見たいと思っていたのがこの人でした。場内の笑いは薄かったけど、それは笑ってる場合じゃない、それ所じゃないというような引き込まれ方でした。会場の空気の支配力という意味ではこの日の一番でした。審査員も全員、身を乗り出さずにはおれないという感じでした。しかし生で見ると、キャラを演じているんだなあ、頑張っているなあというのが分かる立ち振る舞いでした。

あべこうじ 5位・454点

今日は一、二のどっちか? というぐらいのスベリっぷり、大阪の客はオンバト長井秀和に高評価だったりするように、ここまで東京臭いのがキツイ人は逆に好きなので、これは別に大阪のファンがアンチだったからではないはず、というのは他の東京芸人の時の受け方見ていれば分かるか、結果は5位だったけど、これは審査員の点の付け方とか、技術点というのがやはりプロの芸人が審査すると、点数の配分として高いことを示しただけだった。なんか友近あべこうじは、R-1の麒麟笑い飯になってしまった。2006年に優勝するべきだったという声は多いだろうけど、でも僕はあのウインナーのネタは狙いすぎていて好きじゃないので、それが言えないんだよなあ。

芋洗坂係長 2位・472点

一番受けていました。というかここまで爆発したものが無くて爆発した感じでしたが、M-1チュートリアルサンドウィッチマンほどの、鬱積したものを吹き飛ばしたほどでもなかったのは、中だるみがやや影響したか? 少しネタ時間も長い印象はあったけど、やっぱり唯一5分近くやっていたそうで、そういう意味では公平な結果だったかも知れません。
審査員は最初のBoAの下りが終わった瞬間に、全員大爆笑で拍手、何人かは中腰で半スタンディングになっていたので、僕はその時点で優勝を確信したのですが、「ジンギスカン」の流れの後半で少しダレたというか、「えーこれで終わってしまうの?」という不安はリアルタイムでありました。もう一つネタがあって良かったですが、それで持ち時間オーバーしたことを考えると、BoAから漫談部分を経てぼったくりにいった方が良かった気もします。なんか準決勝で凄く受けていた部分が変わっていたという話もあるようで、そういうのは残念な所です。
しかしなだぎさんが、スミス夫人を思い起こさせるネタで今回優勝しましたが、今回の小浦さんもまんまテンションの頃のネタを思い起こさせる内容で嬉しかったです。当時、ポスト・ウンナンとしてバカルディホンジャマカと括られる感じで、よく出てきていた中で、僕は当時は大阪原理主義者だったので、他の二組は心からつまらないと思っていたのですが、テンションだけは東京の芸人だけど気になる面白いと思っていたので、田口さんが役者として成功しているの嬉しかったけど、小浦さんがテンションの時とほぼ同じような芸で、こうしていま評価されたのは、心の底から嬉しく思っています。

土肥ポン太 7位・445点

笑っていたのは、去年大活躍した大阪のお笑いファンだけでしたね、功太さんが男のお笑いマニアだけなら、土肥さんは女のお笑いマニアだけという感じでした、実際に唯一客や審査員から手が全く出なかった。順位発表の際の「えー」という声も、2丁目からbase、そしていまうめだとついて行ってるという世代の女性だけという感じがしました、もちろん出番順に恵まれなかったのもあるのですが、芋洗坂係長か終わった段階でスタジオの空気も、終わりという空気になっていたのは不運だったけど、正直最下位にならなかったのは、山田よしさんがトップ出番で、土肥さんがラスト出番だったからだと思います。去年と同じようなネタだったけど、去年が三位で今年が七位なのは、R-1が二点や三点刻みになることがほとんどだからで、そんなに差のない三位と七位だったと思います。去年は全体のレベルも高くなかったけど、しかし今回は東京から五人、大阪から三人という決勝でしたが、大阪の準決勝からはなだぎさん一人で良かったんじゃないか? ということを思ってしまいましたね、僕はこの時点でなだぎさんもどうなのかと思っていたから、大阪勢が下三つという結果すら正直危惧して、凄い暗い気持ちで順位待っていました。特に一緒に見ていたのが東京から来た人だったこともあったし、僕は優勝は「芋洗坂係長」か「鳥居みゆき」だと思ってみていました、会場の受け的に万が一ながら、あくまで僕が当日会場で感じた雰囲気からしたら、「COWCOW山田よし」の可能性すらありとまで思っていました。
なんか去年「大阪贔屓」と言われたのがそんなに嫌だったのか、関西テレビが全国からバランス良く客を集めたからなのか、結構「東京芸人贔屓」だった会場だった気もしました。そんな中で失敗したあべちゃんというのは、余計に残念でした。
会場の受けていた順番は次の感じでした。審査員の反応も同様、笑い以外の要素だけなら2と3は逆かも、場の支配感が強かった。

1. 芋洗坂係長
2. COWCOW山田よし
3. 鳥居みゆき
4. なだぎ武
5. 世界のナベアツ
6. 中山功太
7. あべこうじ
8. 土肥ポン太

僕の個人評価は次の通りです。

1. 芋洗坂係長
2. 鳥居みゆき
3. COWCOW山田よし
4. 世界のナベアツ
5. 中山功太
6. なだぎ武
7. あべこうじ
8. 土肥ポン太

という感じだったのですが、終わった後すぐにテレビで見た人の話を聞いたりすると、テレビで見ると、生では気付かなかったアラが見えやすいから、その辺で感じる差というのを確認するのが、その辺はいまから録画を見るのが非常に楽しみです。 どう違う印象なのかも知りたいし、プロ芸人の審査員さん達が、現場で生でみて直接的に良い反応していたのと、審査得点に差があったのはどう違うのか、あれだけのプロの芸人は、「これはテレビで見たらアラがはっきりと見える」というのを、生で現場で見ても冷静に分析しているのか? そういう所を確認してみるのが、凄い楽しみです。
関西テレビのスタジオを出たら、玄関先で月亭八光宇都宮まきがロケしていました(笑)。終わってから大阪で有名になってきた110円のキャベツ焼きを一緒に食べて、天神橋筋商店街を少し一緒に歩いて、繁盛亭の外観を見学したりしてから分かれました。貴重な観覧の機会を与えてくれた友人には感謝です。
追記)テレビで見返した際の感想はこちら。

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