「第29回!ABCお笑い新人グランプリ決勝!!」

リアルタイムでは見ていませんが、ネタバレせずに見ました。ゲストの漫才とかゲームコーナーは飛ばしてみましたが、去年に指摘していた方がてたけど、本当にいつからかこの番組は、ゲストに笑い飯が呼ばなくなったなあ、せめてネタ番組ぐらいは出し続けてあげて欲しいんですが。
あとメイン司会が桂三枝さんから、藤井隆さんに変わっていましたが、藤井さんの司会は安定しているし、冒頭で昔のギャグをしたりすることを厭わないというのは、やっぱりこの人は性格も良いし、頭も良い人だなと思いました、何を求められているかというのが全て分かっている。今日一番面白かったの、藤井君の「フォー!!」だったよ、100点。ということで最優秀賞は藤井隆さんに、なんていうつまらない擽りも入れまして、本編の感想です、簡単に、点数は初見の際のと、このレポのために二回目見返したときのを両方併記の形で行きます。

勝山梶 漫才「漫才以外の仕事をしたい」

居酒屋の接客から幼稚園の先生に挑戦していくという、よくあるタイプのネタを型どおりにやっていました。「一人でやるときはシュールなのに、コンビになるとオーソドックスになるんだ」という大竹まことのコメントは、なんか二人とも普通に受け答えしていたけど、大竹さんはかなり手痛いダメ出しのつもりで言ったと思うね、梶の衣装弄りなんて、その辺に目がいってしまうと言うことですから、ネタに集中していたらその辺は気に回らないでしょうし、正統派だからと言って個性を出さないというのは違うと思う。トップバッターというよりは、オープニングアクトという感じになってしまいました。でもそれならムーディーのキャラクターを活かした漫才しても良かったと思う。50点、二回見返した感想も変わらず。

ジャルジャル コント「野球部」

予選会ではM-1でずっとやっていた「落語の稽古」でしたが、いきなり一本目から勝負球ぶつけてきました。ここでも賞を取ることよりも、大竹まことに認めて貰うことの方が、将来を開くチャンスなので、二本目と合わせ技でのインパクトを期待しました。この時点でここは決勝当確ランプでした。98点、二回目も変わらず。
しかし少し細かい話に行きますが、野球のベンチみたいなのが無いんだったら、別にあの長椅子は置かなくても良くない? 面白かったけど、長椅子の下にバットが潜り込んだり邪魔になっていたし、横山ノック雨上がり決死隊のタクシーのネタを見たときに、「動きが制限されるから、椅子は使うな」とアドバイスしていたけど、必要なのならああいうのは置かない方が良いなと、確かに思いましたね、野球のベンチという雰囲気は演者が演技で表現すればいい。

モンスターエンジン 漫才「子供に自転車の乗り方を教える」

ジャルジャルが凄い面白かったけど、どうしても一本目の活躍火事のネタに対する不満を引きずっていたので、西森のキャラクターの大爆発に爆笑してしまいましたが、よく考えたらそんなにクオリティの高いネタじゃないよなあ(笑)、でもキャラクターというと、すぐに大阪の人は漫才とかネタとは対立的な物みたいに捉える人が多いけど、いま大阪の大師匠でキャラクターが薄い人なんて、誰がいるのか? という話なんですよね、結局キャラクターを立てるとか、それを守るというのはパブリックイメージを大切にするという、セルフプロデュースの一番最初の入り口の所だから、僕はテレビで売れるとか、舞台で漫才を積み上げていくとかの違いではなくて、芸人さんはみんなやらなくてはいけないことだと思う、だから西森はネタの時も、「麒麟の部屋」でも、ネタ終わりでの審査員との会話でも、baseのイベントでも、そういうのをきちんと守れてるのは、もっと評価されるべきだと思います。まあただ今回はネタが弱かったのは確かです。なんか粗っぽいのが、そのまま粗く残ってしまっていて、にのうらごの時はそこを荒牧がカヴァー出来ていたんだなというのが分かりました。(80点/65点)

天竺鼠 コント「不動産屋」

なんかこの賞でよくいる、決勝は常連だけど本選では印象に残らないまま終わるコント師って、LaLaLaとかFUJIWARAとか次長課長とかのパターンにはまってしまった感じでした。受けなかったというより、印象に残らなかったのが残念です。(70点/70点)

CUB&MUSI コント「弾き語り」

わざわざ東京から来て、これではなあ……、これなら大阪のコンビにチャンスの一枠は残してあげて欲しかった。大脇里村ゼミナールとか松原タニシがいたらかき回してくれたと思うよ。(60点/60点)

のろし 漫才「ビジュアル系のラーメン屋」

ここは単純に現時点での地肩の弱さが出ましたね、ネタの選択や本人達の演技に間違いはなかったでしょう。このまま上積みがなかったら、今年のM-1は三回戦までかな?(65点/65点)

ヒカリゴケ 漫才「腹話術」

ホームランか三振かみたいなことになる「野球」ではなく、ある程度安定して笑いを取れる「腹話術」を持ってきていました。途中で国沢さんが台詞飛ばしたりしましたが、大竹さんの審査コメントにもあったように、うまくまとめていただけに、最終決戦に残るかなと思ったので残念でした。上に上がっていけばタイプの違うレベルの高いネタを残していただけに残念です。ただ盛り上がり所が本当に後半の最後の方まで無かったのが残念でした。ヒカリゴケはまだまだ3年目とかだから、来年も出れるはずなんですが、東京進出が決まっているので、これが最後のABCお笑い新人グランプリになる可能性が高いですが、ケーエーだって東京からCUB&MUSI連れてきたりしているわけだから、ヒカリゴケだって別に松竹から移籍する訳じゃないんだし、東京から参加させたら良いと思うんですけどね、来年とかまたメンバー薄くなるしチャンスは大きいでしょう。(70点/70点)

銀シャリ 漫才「アルファベットの順番」

最初見たときは周りのレベルで上がったかなと思ったけど、二回目見たときはレベルが高いと思った。ネタも良いけど、二人の会話のテンポ聞いているだけで良い気持ちになれる漫才は良いですね、橋本は元々達者だけど、鰻の方に迷いが無くなっている感じ。(75点/85点)

スマイル 漫才「カラオケ」

なんかスマイルは年末からこっち、大阪の客に微妙に飽きられている気がしてならない。実際にスマイルの系統の人たちって、大阪では消費が早い傾向が、過去の大阪キッズお笑い番長とか思い返すとあるんで、それを打破するには新機軸を見いだすべきなのか、原点回帰するべきなのかというのは、僕には判断付かない所です。このネタに関しては「北斗の拳」の下りがカットされていましたが、それは賢明だったでしょうけど、このネタ自体がやっぱり弱いですよね、せめて漫才アワードで2次予選を一位通過したときネタを持ってきていたら、という気にはなりました。(70点/65点)

ギャロップ 漫才「映画の名シーン 宇宙船」

M-1敗者復活戦で微妙な受けだったネタだったので、なんでこのネタを持ってきたのかと思ったのですが、並列的なお題に対してボケる漫才の上に、結構弱いボケも混じっていましたが、今年のレベルならこれでも一時突破は大丈夫だった。ネタ自体はそんなにだったけど、風格がこのメンバーに入るとはっきりあったのが、上位進出に大きく作用したように思えました。これで一番良いネタをギャロップは決勝に残せたわけだから、最終決戦は大きくリードしました、ジャルジャルはよほど審査員、というか大竹まことの予想の範囲外にいくネタを持ってくる必要が出てきた。(65点/70点)

  • 最終決戦

これに勝ったコンビか最優秀新人賞、残り二組が優秀新人賞となる最終決戦です。

銀シャリ 漫才「ペットを飼いたい」

ギャロップ 漫才「CMに出たい」

ジャルジャル コント「英会話教室

ジャルジャルは「蜘蛛」のネタを持ってきたら優勝、仮に優勝出来なかったとしても大竹まこと桂三枝は高く評価するだろうと思っていただけに、ここで「英会話教室」というのは残念、一本目と同じスタイルのネタというのもあるけど、それだとしても「英会話」じゃなく「おまはん」持ってくるべきじゃなかったかな?
ギャロップは去年のM-1予選などで指摘されていた、後半が弱いというこのネタの欠点をきちんと改善して、これも並列的なネタではあったけど、ボケが全部レベルが高かったし、最初の育毛剤の下りで掴めていたのも大きいし、林の台詞を言うときの演技力の高さも目立って、結果発表待つまでもなく、圧勝で最優秀新人賞を獲得したと言えるのではないでしょうか? 「みんな生えすぎ違う」というギャロップの挨拶は鉄板、ネタでその後でハゲネタやるのにも繋がるし、キャラクターという言い方にどうしてもなってしまうけど、パーソナリティを出せるというのは、やっぱり巧くやればネタの導入が楽にもなるし、広がりもでるということを、ギャロップの場合は証明していると思う、別にキャラクターは正統派漫才の邪魔になるものではない。
審査員にAKB48の娘が混じっていたのは、マナカナや大林素子のように先入観が入っている人たちが審査員にいるよりは、よっぽど良いと思っています。僕もイシバシハザマかアジアンかと言われたら、イシバシハザマを推したかったけど、こいし師匠に大林素子が楯突いて譲らなかったというのは、さすがに引きましたし、なんか大林さんの行動原理って、まんま2丁目劇場中期から今に至るまでの、大阪の痛い若手お笑い女性ファンの振る舞いそのまんまだもん。
しかし去年の予選会のメンバーの段階、というか去年この大会が終わったぐらいから、今年のメンバーが大幅に落ちてくるのは面子を見たら容易に想像出来たわけで、予想通りに低調な決勝大会になってしまったと思います。来年から優秀新人賞と審査員特別賞の過去の受賞者は、エントリー出来るようにした方が良いのでは? と思うぐらい、来年は更に低レベルになるのは予想出来ます。恋愛小説家とか銀シャリはまた出してあげたい。
しかし大会のレベルが低くなった理由には、演者のレベルだけの問題ではなくて、今回は特に同じような正統派の漫才やコントばかりが、10組も揃ってしまったことも、いまいち抑揚のない全体的に締まらない決勝になってしまったように思います。正統派じゃないことが出来る人はムーディ勝山天竺鼠CUB&MUSIといたけど、そういうネタでは今回なかったわけで、そういう意味では松原タニシツジカオルコとか、ピンで飛び道具持っている人が一人ぐらい残っていてくれたら、大会を引っかき回してくれただろうなと思うので残念でした。そういうのが一組いるだけで、大会の印象とか雰囲気は全く変わりますからね。
なんかいまの大阪のお笑い関係者や芸人さんの話聞いていると、ネタとキャラクターを分けたがるんですが、それは混在一致したものじゃないかと思うんですよね、僕は逆にこういう所でムーディソングやったり、川原がナスビで出てきても良いと思うし、キャラ芸と本ネタを分けるという考えが、僕はそもそも90年代以降に大阪で突然出てきた考え方だと思うんですよ、元々同じ物だったはずのものが、どっかで分けられたんじゃないでしょうか?
実際に「キャラクターに頼ってはダメ、喋繰りを磨くべき、賞レースではキャラ芸でなく本ネタで勝負、それがいま大阪で活躍している大御所に近づく道」みたいな考えを持っている人は、どうも大阪には多いようなんですが、でも大阪でいま大御所として君臨している人って、ほとんどが「夫婦」「借金」「ドツキ」「大金持ちのボンボン」「オカマ」「三味線」「剣劇」「モノマネ」「ギャグ」「ダジャレ」「アホとインテリ」といったキャラクター漫才だし、いまの大阪の大御所さんはデビュー当時ほとんどがアイドル漫才で世に出ているし、ブーム終焉と共にすぐに解散して、最近また組み直しましたみたいな人も沢山いるわけじゃないですか、でもいま正統派の経験を見せつける漫才している訳じゃないですか、逆に横山たかしが「今日は勝負所だから」と言って、金ぴかスーツとハンカチ持ってこなかったらおかしいでしょ?
お客さんの期待に応えるなんていう、エンターテイナーにとって一番大事なことが出来ない行動が、経験になるとは思えないし、飛び道具でも何でも良いから、まず目の前のお客さんに喜んでもらうという行動が、将来に正統派的なことをやるときの血肉になるんじゃないかな? ぜんじろうさんが漫才していた頃に、ノック師匠や上岡師匠、鶴瓶師匠がアドバイスした中に「芸がないうちは、運動量と創意工夫で補え」というのがあったという話は、よくぜんじろうさんはされていますが、例えばカウス師匠が「ラララライ体操」とかテツandトモ「なんでだろう」への評価が高いように、師匠クラスの芸人さんはそういうのきちんと評価してくれているし、価値を見いだしてくれていることに、もうちょっと気が付いても良いんじゃないかなと思います。
スタイリッシュな正統派漫才で、喋繰りを磨いています、と言えば聞こえは良いけど、単に無個性の地味な漫才やコントやっているだけになっている人が、現状大阪に沢山いるわけじゃないですか、それが喋繰りを磨く身になっているのかと言われたら、僕はきちんと目の前のお客さんにまず喜んで貰うことに努力しているタイプの人の方が、いまやっている事は違っても、喋繰りや正統派の漫才に体内で変化する何かを身に付くんじゃないかと、ずっと思っていたのですが、笑福亭鶴瓶が自分の落語に対して、ここまではっきりと「ボクはここ一番の強さは落語家のダレよりも強いと思う。」と、自分のタレントとしての経験値は、落語だけやってきた人の落語の経験値に負けていないとはっきり言ってるのは、我が意を得たりなんてくだらないことではなく、現在大御所となっているような人は、ここまで自分をしっかり持って、自分の経験に自信があるんだと鳥肌が立ちました。
そりゃいまのbaseよしもと勢ではキングコングには勝てないよ、いま大阪で自称・コツコツ積み上げている芸人の経験や修練なんて、キングコングや南海の山ちゃんの経験の前では、鶴瓶さんから言わせれば「修羅場の違い」になってますよ、
ということでギャロップが優勝して良かったのと、今日のMVPはやはり藤井隆の司会に尽きました。

第29回ABCお笑い新人グランプリ : 一汁一菜絵日記帳

大竹まことの梶の服装弄りについての感想とか、CUB&MUSIのところで「松原タニシ大脇里村ゼミナールの方が良かった」とか、色々と感想が被りすぎてる(笑)。まあでもにづかさんとは同年代で、同じぐらいの時期からお笑い見ているから、似たような感想になるのはあり得ることなんですが。