人は自分に付いた嘘を信じ込んでしまう

アニメビジネスがわかる: アニメビジネスがわかる本114

さらには、かつて影響を受けた作品の存在を忘れてしまい、自分のクリエイティブであると考える場合もあるだろう。冗談ではなくクリエータの中にはそういう種類の人間が多い。
これはいい悪いの問題ではなく、彼らが虚構を信じ切る力がある証拠であろう。完全に信じ切ってしまうのである。宇宙戦艦ヤマト松本零士氏などもそのケースであろう。ご本人は自分がヤマトの原作者であると主張されているが、参加の経緯(キャラクターデザイナーとして起用された)からしてそれは有り得ないし、プロデューサーで原作者でもある西崎氏と争って裁判でも証人になった人々は口々にヤマトは西崎氏のものであると証言している。
従って裁判の結果としてはほぼ100%西崎氏の完勝であったが松本氏は控訴、西崎氏の諸事情(収監中、健康問題など)もあって結局和解となった。これによって、松本氏がヤマトの共同原作者と認定されるようになったが、事実としてヤマトはあくまで西崎氏が考えたものである。

松本零士のケースについては、例えば槇原敬之との盗作騒動の時にも、松本零士のこういう訴訟癖のようなものを知らないで、マンガやアニメが好きで、J-POPとかを親の敵みたいに見ている人達が、中身を検討しないで松本先生の味方になって槇原叩いていたけど、そういう声に乗せられると、ますます信じこんでしまうんでしょう。
例えばトキワ荘物語とかでも、同じエピソードについて話を聞いても、人によってみんなバラバラな事を言っているけど、昔の話というのは、存命の本人に直接取材して、全員が嘘を付かなくても、矛盾ばかりになってしまうもので、それぞれ同じ場所にいて、同じモノを見ていても、自分が見えたこと、感じたこと、そしていま記憶に残っていることは、みんなバラバラなわけで、それがこうやって利害を伴うもので、さらに当時のことをよく知らない人まで出しゃばってくると、余計に混沌としてくるでしょうね。
当事者が存命な間でこれなんだから、当事者がこれから亡くなっていくと、もっとややこしいことになっていくでしょうから、藤子不二雄とか、スタジオ・ゼロ関係の権利関係について決着が付いたのは、本当に良かったなあと思います。
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