地域格差に苦しむ大学生の現実

ウィンウィン対談 平田 オリザさん 自分が変わることに、喜びさえも見出す。それが「対話」の基本的な概念なんです。

でも、そういう話を、この間も東大の先生としていたら、東大の先生も、「うん。本当に、例えば女子でも、御三家から来る子達っていうのは、結構遊んでから来るんだよね」って言っていて、この地域間格差が、今、すごく問題になっているんです。東大でも京大でも阪大でも問題になっている。
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これかすげえ分かるのは、僕は阪大の近くにずっと住んでいて、いまの職場も阪大の側にあって、自宅周辺にも阪大生が多いし、職場にも結構阪大生が入ってきてるんだけど、確かにそんな感じは自分と接している人を見ても、周りで住んでる人を見ても感じることがある。これ大学の中に入ってなくても伝わってくるんだから、実際に中の人たちはもっと切実に感じることはあると思う。

そういうおもしろい授業をたくさん受けて大学に来る子達。例えばミュージカルを観たり、美術展を観たり、海外に留学していたり、親の趣味もあるけれども、いろんな豊かな教育を受けて東大に来る子達と、単位未履修で世界史も知らないで、とにかく受験の科目しか勉強してこないで、脇目も振らずに東大に来た子達、特に女子の場合に、やっぱり文字通りのカルチャーショックを受けて、不登校になっちゃう子もいるんです。
要するに、教育の地域間格差は解消したんだけれども、文化の格差がものすごいから、その地域間格差が、今、大学生達を苦しめているんですね。
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そうやって不登校になった人が、大学を中退したり、一流大学を卒業しながら、就職に失敗した人達が、都会に馴染めずに地元に帰って、地元で就職先どころかバイトする場所すらないという状況で、ニート引きこもり化するという状況が、地方都市などで増えている。
そして地方や田舎にとっては、「地元から久し振りに出た東大生、京大生」みたいな形で、希望を持って送り出された有名人だったりするから、そういう子がいつの間にか地元に帰って、ニート引きこもりになっているというのが晒されると、その地域全体の教育意欲というのが下がるということも引き起こしている。
昔は東大や京大に行くような子は、一部を除けばみんな似たり寄ったりの詰め込み教育を受けて育っていたけど、いまでは昔ながらの受験生と、受験しながら人生の楽しみとか、受験以外の勉強もしていたような子達が、大学一年目で並べられるから、そこでのカルチャーショックというのも大きいし、それを埋めるだけの環境や余裕も、大学や大学周辺になかったりする。

4151400087平田オリザ (1) 東京ノート (ハヤカワ演劇文庫 8)
平田 オリザ
早川書房 2007-03-23

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