別離はもはや青春テーマではあり得ない〜『けいおん!!』の最終話を全面的に肯定する

けいおんにおける離別の描き方

僕は昨日も書きましたが、この最終回はこの作品らしい良い最終回だったと思います。特別な演出もなく淡々とした日常の続きと続きの間を見せられている世界なんですから、卒業式という大きなイベントであっても、その前後には登場人物の日常が、当たり前のように続いていくというのは、この作品のテーマにあった最終話であったと言えると考えます。

Togetter - 「アニオタ保守本流「けいおん!全員女子大進学問題をdisってみた」」

全員が同じ女子大に進学とか、けいおん!もその程度か。残念である。”離別”を描けなければ、青春を描くことは出来ない。それこそが青春の全てではないのか。

正直リンク元まで見て、他どんな事を書いているかは見に行く必要はそんなに無いです。汚い言葉遣いが多くて見るに耐えない表現も多いですし、「成長テーマが無いから萌えアニメは糞」なんていう、誰でも言えるし、誰でも言ってるようなことを繰り返しているだけで、こんなんにアニメ評論家みたいな肩書きでメディアに出れるのかよと思ってしまう。
というかこういう作品のテーマ性だけで、マンガやアニメを批評したつもりになっている連中を、夏目房之介とか、氷川竜介とか、要するに夜話関連の評論家が、徹底的に打ちのめしていたのに、また何か最近復活してきてるよなあ。
僕のこの人の感想については、「いつの時代の青春だよそれ」という事に尽きます。進学や就職をしても、住んでる地域から動かなければ、人間関係なんてほとんど変わらないのが、現在の若者の生活のリアルじゃないのかな? そしてわざわざ東京や大阪に出る必要がない街の人にとっては、これって凄いリアルな卒業じゃないだろうか? この記事への批判として、インターネットのあるご時世に……という指摘もあったけど、東京と大阪が片道一時間、一万円の空路で結ばれて、東京と福岡でも日帰り旅行が可能になっている当世において、『なごり雪』やかつての青春ドラマのような別離はあり得ない。深刻な対立や失恋を伴わない別離は、現代日本においてリアリティのある青春テーマではもはや無いし、それを無理矢理やっているドラマや漫画は、安いお涙頂戴として失敗するだけでしょう。
しかしいつの頃からか、アニメやマンガにおいて、最終話において断絶を伴うような別れの描写が少なくなった。異世界モノとかですら、最終的に問題が解決してからも異世界同士が繋がったままで、お互い行き来して今後もいつでも会えることを示唆するラストが増えたし、日常モノなんかはほとんど、明日からもこの関係性は続いていくという締め方になっている。この人が書いているような別離を描いてる作品は、全体的に作者がベテラン作家というのがほとんどのように思える。
僕がこの話をしていて、一番先に思い出したのは『ハイスクール奇面組』の最終話で、あれは「夢オチ(作者のつもりはループ落ち)」のラストばかりが話題になっていますが、その前に高校を卒業して、次の進路に進んでいた河井唯が、一応町を歩いていたら、連載の初期で消えてしまったキャラ以外は、ほとんどの主要キャラクターと偶然再会するという最終話で、同じ街に住んでるんだから、会おうと思えばいつでも会えるんだみたいな描写で、当時は子供だったけど、なんか凄い新しくてお洒落な最終話として、僕は夢オチ部分よりも印象に残っている最終話でした。
『あずまんが大王』の最終話との類似性も、今回の最終話は指摘されていますが、それだけじゃなくて否定こそしていないけど、ドラマを描かずに日常描写を積み重ねるというだけで、一つの作品を成立させてきたものを、最終話だからといって大きなイベントを起こして、作り手が物語中のキャラクターに成長イベントを用意するというのは、僕は良くやらなかった。スタッフは我慢したなあと思います。これまでやってきたことから逃げなかったのもエライし、そっちやった方がいわゆる評論的な評価が上がるのは、目に見えているのにそっち行かなかったのは、大したものだと思います。
というかこの作品の登場人物が成長していない。というのを見てない人が言うのならともかく、好きで熱心に見ていたという人が言ってるのは、「お前いままで何を見ていたの?」と正直思うよね(笑)。

だいすき だいすき だいすきをありがとう - 丹下@ろくげんの左手

変な批評のようなものに引用リンクして、お目を汚した人も多いと思うので、最後に素晴らしい感想へのリンクを貼って、この項を終わりにしたいと思います。

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