『3月のライオン』で父性は描かれているか?

『3月のライオン』に描かれた「さらなる一歩」と「背負うもの」 - 三軒茶屋 別館『3月のライオン』に描かれた「さらなる一歩」と「背負うもの」 - 三軒茶屋 別館

前巻で島田開八段に「アタマをかち割られた」主人公・桐山零は、研究会に入ることを志願します。
川本家という「母性」を司る居心地がよい居場所とは別の、「父性」を司る自身を切磋琢磨される新たな居場所でもあります。

この川本家を「母性」、島田開八段を「父性」という見方というのは、他にも言及している人が多いし、僕も3巻では少しそうかなと思ってたけど、この最新4巻で全くそう言うことは思わなくなった。島田八段と零の関係というのも、どちらかというと母性的なものになっている。というか今回は島田八段の体調問題もあって、二階堂と三人で母性の行ったり来たりの三角関係になっていた。この漫画には父性を現す存在というのはいない。棋院の会長だってオカンみたいなキャラだし、零の担任の林田先生に至っては、本来ならヒロインキャラがやるような役回りで、僕は見たこと無いけれど、このジャンルに疎い身から想像させて頂くと、おそらく同人誌では、このカップリングが零絡みでは一番人気なのではないでしょうか?
この四巻をかけて新たに出てきたのは、島田八段の孤独です。零が消えない孤独を抱えているように、島田八段もまた心と体に痛みを抱えながら、戦う場所に自らを置く孤独というのが語られます。桐山零、島田開、幸田香子、川本あかりの四人は、それぞれ絶望なまでの孤独を抱えながら、戦うことを選んだり、人を拒絶したり、誰かを守ったり、傷付けたりしている。その全ての関係性は、やはり僕は女性的な人の愛し方や傷付け方を感じます。少女漫画出身の女性作家の作品だし、それで面白いんだから、僕としては全く問題ないんですが、島田開が父性を発揮したのは、零の頭をかち割って、研究会に誘ったところまでで、四巻に入ってからは疑似母性の人間関係の輪に、入ってきたように思えました。
零と担任、零と川本家、零と二階堂、零と島田八段、零と香子、これらの関係が全て男女の関係に、簡単に置き換え可能なやり取りになっている(実際は男と男でも、女と女のようなやり取りの時もある)。そしてその全てに母性的なものがあることの面白さを感じるのでした。そしてやはり4巻以降の島田八段と零や二階堂との関係は、三人全員が誰かに対して母親的な接し方をしているように、改めて読み返して思ったのでした。

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