『エンタの神様 7年間ありがとう!大爆笑の傑作名作ネタすべて見せますSP』

ゼロ年代を代表するお笑い番組の終焉なのに、あまりお笑いについて語るブログでも、感想などが書かれていないようで、寂しい限りであります。僕も全く見なかった時期もあったし、功罪の罪の部分が全く無いとも思わないけれども、この番組の功績や、この番組の作り手の人たちが、本気でお笑いを愛して作っていたことは、間違いがないことを証明する最終回だったと思います。
いやもう万語を費やしても語りきれないぐらい、良かったところはあったんだけど、アンタッチャブルのネタを流したこと、そしてカンニングのネタを長く流したこと、そして桜塚やっくんの映像を、誰よりも一番長く流したことが、この番組のスタッフの笑いへの愛の深さ、この番組の自信の現れでした。エンディングも最後の芸人のショットは、犬井ヒロシだったりと番組への功績の軽重も、はっきりと良く分かって現している。サンドウィッチマンの抜擢や、東京03アンジャッシュ陣内智則らを使い続けた功績など、語り尽くせない部分も多いですが、やはり一番のポイントは、この番組によってお笑いを生業として成り立たせた芸人が、どれだけ沢山いたかということに尽きるでしょう。
所謂、舞台の芸をテレビの芸に変換する作業というのは、ダウンタウン以降のお笑いガチンコ幻想によって、お笑いマニアから忌み嫌われる者になっていたけど、演出家が入ってテレビ用の芸を作っていくという作業は、一昔前までは当たり前のことでした。だから明石家さんまや、いいともの元プロデューサーの佐藤さんとかが、この番組を「テレビの笑いを作っている」と評価していた、演出家が芸人任せにならないで仕事をしていると、評価していることは見逃してはいけないことでしょう。この番組をきっかけで職業芸人として、一歩を踏み出した人たちの多さを考えれば、それは良い仕事をしたと言えるのではないでしょうか? 芸人のネタをいじることが、一方的に悪く言われていたけど、でも番組のスタッフからしたら、芸人の持ってきたネタをそのまま流す方が、労力もかからないし、批判もされない訳じゃないですか。それでも手間暇かけてそれをすることの意味というのは、もっと多角的に冷静に語られて良かったでしょう。
この番組の罪の部分というのを語りたい人は、おそらく小梅太夫ヒライケンジ、ですよ。、あと永井佑一郎アクセルホッパーに改名して出したこと、この辺を指すことが多いんだろうけど、これらのことが過剰に代名詞として語られすぎだと思う。波田陽区にしても、まちゃまちゃにしても、きちんとその後に違う出方で、他の番組で能力を発揮して、芸人としてやっていけてるわけだし、『爆笑オンエアバトル』を卒業して、またテレビ露出がなくなっていた人たちや、『笑いの金メダル』が中途半端に放り出した芸人を、きちんと拾い上げて使っていって、テレビ芸人に仕上げていったのは、僕はこの番組の功績と評価するべきだと、声を大にして言いたいです。
この番組は『笑いの金メダル』やTBSでやっていたベスト10のお笑い番組とか、その辺が一斉に終わって、一人勝ち状態だった時に、色々とやりすぎた時期があったけど、『爆笑レッドカーペット』とか『あらびき団』が台頭し出すと、今度はあれらの番組で活躍した人たちの、長いネタを見せるという路線になって、また盛り返していたけど、それで結果的に薄い層が離れたのも事実で、それは視聴者のニーズとかもあるんだから、本当に番組だけの問題なのでしょうか? 僕はこの番組が無くなって、オジオズ篠宮のピン芸と阿蘇山大噴火が、今度いつテレビで見る機会があるんだろうか? ということを考えると、それだけでこの番組がなくなったことは悲しいです。お笑いファンみんながみんな新宿や中野、浅草、下北沢、難波千日前に通えるような、地理的に特権階級ではいないんだから、毎日のようになかの芸能小劇場baseよしもとに足を運べる人の感覚だけで、「テレビのネタ番組なんていらない」なんてことは、お笑いファンならば言うべきではない。それは東京や大阪に住んでいるという、自分の特権的な感覚だけで、同好の士を地方に住んでいるというだけで、見られない環境に置くことを是とする差別行為にしかならない。
そして芸人さんは、やっぱりお笑いの仕事だけで食える、ということから全てが始まる。だからそのラインに立たせる仕事をしてきた人たちというのは、お笑いファンはもっと感謝して良いと思う、食えなきゃいつ辞めてしまうか分かんないんだよ、芸人さんだって好きな女の子ができて、その娘と子供がいる生活が欲しくなることもあるわけだし、最近も前途期待されていた芸人さんが、親が倒れて店を手伝うことになって休業したり、ということもあったわけじゃないですか、その時に「俺の稼ぎで両親食わせられるから、店は畳もうゆっくり休んで」といえる環境を、一人でも多く得て欲しいと思うことが、お笑い業界が栄えて欲しいと思う人の、正常な感覚であって欲しいです。
いややっぱりレギュラーとか藤崎マーケットの昔のVTR見ていたら、やっぱりこれ続けていたら良かったのに、という風に思ってしまったよ(笑)。藤崎マーケットは最初『スリーシアター』のメンバーだったのに、すぐに外されたりもしているから、この時期に相当抵抗したんでしょうが、でも同じ番組のジャルジャルとか、『ふくらむスクラム』のかまいたちとかの成長を見ていると、彼らも相当色んな事を言われ怒られながら、東京の番組で成長しているのが見えるだけに、藤崎ももう少しせっかく得たチャンスの場で、踏ん張れなかったのかなあと思ってしまいます。結局「あるある探検隊」を封印して、NHKで漫才の賞も取ったレギュラーが、宮古島で一年間生活するロケする羽目になっているのを見ると、やっぱりまず食えること、売れることを目標にして、それから自分のやりたいことを広げていっても良いんじゃないでしょうかね。さんまや紳助、タモリにたけし、所ジョージも、最初からみんな自分の好きなこと、やりたいことだけやっていた訳じゃないですからね。
しかしエンタ自身もそうだったという風に書きましたが、お笑いってどうも、芸人も番組も一人勝ちし出すと、途端に迷走する傾向があるので、これからの『爆笑レッドカーペット』と『爆笑レッドシアター』は、ちょっとだけ心配な気持ちも出てきています(笑)。

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