『第40回NHK上方漫才コンテスト』

NHK上方漫才コンテスト』の観覧に行ってきました。何故か『NHK新人演芸大賞』と違って、『上方漫才コンテスト』は生放送だということを忘れていて、録画してきておりませんでした。したがって収録前だったか収録中だったか、審査員が誰に投票したかなどの確認が出来ていないです。関西以外の人同じく4月の全国での再放送を僕も楽しみにしています。
なんか結構きちんとしたパンフレットが、1300人の観覧の客、全員に配られていてNHKは違うなあと言うことを思わされる。前説はNHKだしてっきり女と男が出てくると思っていたら、呼び込みのADさんが「男前コンビ」と紹介したので、出演者が全員吉本だから、ここは松竹でプリンセス金魚かと思ったら、プリマ旦那だった。
前説のプリマ旦那は15分ぐらいがっつりと「僕たちのこと知ってます?」「一番遠くから来た人は?」「拍手の音取りをするので、私が手を上げたら拍手」という、これぞTHE・前説という前説を披露。ちょっとぐらい自分たちのネタ挟むのかと思ったけど、一切ない前説らしい前説を終えて陣内・大沢にバトンタッチ。大沢はおめでたなのに、陣内は不幸というノリは本編にもあったけど、この時間で形作られました。審査員の呼び込みの際には、西川きよし師匠が客席に何度も深々と頭を下げるパフォーマンスで場内多いに沸かす。内藤剛志さんの近所の中学校だったというネタは番組始まってからのコメントでしたっけ?
どうでもいいことを先に書いておくと、NHKホール豪華な上に見やすい、大沢あかねはアナウンス力が普通にある。下手したら局アナであれより下手なの沢山いると思いました。今回の出場者は、ウーマンラッシュアワー銀シャリspan!、ソーセージ、ダイアン、モンスターエンジンの六組、三組ずつにAブロックとBブロックに別れて4分ネタを披露して、審査員の多数決で勝ち上がった一組ずつが、8分のネタ時間でもう一度審査員の多数決勝負を行って、優勝者を決めるという新ルールになりました。既に抽選を終えているブロック分けと、最終決戦の8分という最近にないネタ時間というのが、勝負の鍵となりそうです。
審査員は織田正吉桂文珍正司歌江内藤剛志中田明成西川きよし渡辺正行の七人、西川きよし師匠は番組開始前の登場時から、お客さんに頭を下げまくりながら登場し、大いに会場を沸かせていました。
まずはAブロック、ソーセージ、ダイアン、モンスターエンジンの順で登場です。

ソーセージ コント「穴があったら入りたい」

「漫才コンテスト」といっていますが、別にコントでもピンでも可能な大会となっています。過去にはチョップリンがコントで優勝もしています。ということは一応、前もって書いておきます。
英語の教師とその先生を馬鹿にする帰国子女の生徒のネタ。帰国子女の生徒に馬鹿にされる度に、ロッカーやポリバケツに入っていくというのが主なボケのネタ。序盤にそのメインボケの生徒役ではない、ツッコミの普通の生徒役との先生とのやり取りの、いかにも若い女の子が好みそうな絡みで、本当に若い女の子しか笑っていなくて、序盤の一分近くにそれに費やしたことで、1300人という大きな会場の客の間口を若干狭めてしまったように見えました。あとそのツッコミの秋山の役が、物凄く馬鹿とか、凄く真面目みたいなキャラクター付けが一切無くて、単にツッコミをするためにいるという、役割だけの人になっているのが、今更ながら気に入った。あれだとモノローグやナレーション役の人が、舞台に出ているというだけだよなあ。
しかし大阪の若手のコントだと、もう珍しいことではなくなっているけれども、先生役がロッカーやポリバケツに入る所がメインボケなのに、コントタイトルで「コント『穴があったら入りたい』」ってネタバレしてしまうのはどうなんだろう? どうしてもタイトルコールしてコントインしないと収まりが悪いのなら「コント・英語の授業」とか「コント・英語の先生」とかで良いじゃん。
これみよがしにボケに使いますという感じで、おいてあるセットや小道具というのも、こういう広い舞台で見ると不自然。小さい舞台で見ると、ここに配置しないとおけないんだなと分かるけど、大きな舞台にものが密集しておかれているのは、ボケのためにとってつけた感が強い。
なだぎのR-1のときドラえもんみたいなもので、ボケのために無理矢理な物や空間作っているというのは、邪道のようにも思えた。舞台を広く使えるネタなのに、ロッカーとポリバケツの配置のせいで、狭くなってしまったように思う。baseの感覚で道具を配置してしまったようにも見えました。あとロッカーやポリバケツ、ロッカーの中のホウキとかは小道具使ってるのに、最初のホウキだけはパントマイムというのも、不自然さを感じました。
あともしかしたら二本目でやるつもりだったのかもしれないけど、ここは藤本が女形のネタしないとダメでしょう。このトリオは、まだまだ世間的には無名なんだから、一番の武器を最初からドーンと出して、茶の間にもお客さんにも印象付けないとダメですよ。ソーセージというコンビは女の声出せる子がいて、女の芝居がうまくて面白い。というのが最初のとっかかりとして一番大きいんだから、そこは自分たちを初めて見る人たちが沢山いる前では、惜しげもなく出すべきだと思います。65点。

ダイアン 漫才『暴走族を止めたいと総長に言いにいく』

NHKということもあり、また二本目に8分ネタ披露というのが控えていること考えても、僕はここが通過するというのが事前予想でした。
ネタのパターンは導入からは、「サンタクロース」のネタ以前の、ダイアンの旧来からのパターンでした。正直二人の演技に本気汁をそんなに感じないまま、最後大きくネタも突散らかって終わってしまいました。なんでサンタのパターンのネタをダイアンはやらなくなってしまったんだろう。ここは二回のM-1で何か掴んだように見えた時期もあったのに、結局元に戻ってしまいました。
そしてベタな導入で気付かなかったんですが、今回のネタは後で指摘してくれた人がいて気付いたのですが、2006年のM-1におけるデニッシュのパターンなんですね。ボケがどんどん違う役をやりたがって、設定も変化していくという、かなりシュールなメタ設定のネタですが。ただベタな流れからあまりにもスムーズに、その設定に移行したのと、シチュエーションの変化に大きな飛躍がほとんどなかったので、それに恥ずかしながら僕は気付かなかったです。やっぱりシュールなことって、「いまからシュールなことをやります」という雰囲気がないと、うっかりしていると気付かないで通り過ぎてしまう。よゐこの意図的な台詞棒読みとか、ラーメンズとかバカリズムの雰囲気作りとかは、俺達はいまからシュールなことをしまうよというのを、お客さんに気付いてもらうために、やはり凄い有用なんだなと感じました。70点。

モンスターエンジン 漫才『ヤンキーを注意』

モンエンの漫才って、理屈っぽいか、勢いだけかのどっちかだけになることが良くあって、僕はそれがあんまりモンエンの漫才が好きじゃないところだったんですが、理屈っぽいことを勢いにのせて、しかも西森のオッサンキャラも全開という、オカズが三品ある形で出してくれると、物凄い面白いですね。これは文句なしでAグループの勝者に決まりだと、前半1分も経たない段階で思いました(笑)。単に理屈っぽいだけときのしんどさがなかったし、自分のやりたいことだけやってる時の軽さもなかった。普段はここ笑わないんだけど、「空港はお土産」という所では、今日の舞台では勢いに負けて大爆笑でした。もう力押しで勝ったという所でした。80点。
モンスターエンジンのネタ終わりのコメントで、内藤剛志のコメントが素晴らしかった。このぐらいの審査コメント力がある人なら、M-1やR-1の審査員にいても、「芸人じゃない人が審査するなんて」という批判は起きないぞというクラスのコメント力でした。内藤剛志おそるべし。そしていきなり審査員が札を上げる形での記名投票で、早速結果が出る形となりましたが。モンエンの圧勝で終わるかなと思ったら、モンエン4、ダイアン2、ソーセージ1と票が別れる形となりましたが、モンスターエンジンが8分ネタ披露の決勝進出です。
続きましてBブロックです。span!銀シャリウーマンラッシュアワーの順で登場です。

span! 漫才『怪盗』

小さいボケが悉くはまる。博多大吉がM-1の動画で語っていた「漫才を演じる上での必要な小ボケ」みたいなものが、ガッチリとはまっているし、ウケてない小ボケも、その前後がしっかり盛り上がっているから、流れを止めることになっていない。やはりとにかく大きい奴と小さい奴が、広い舞台をちょこまかと動き回って、声色変えてボケまくるというのは、理屈抜きの面白さに溢れている。阪神巨人などの伝統に則った漫才はやっぱり正しいです。
あと今日のネタを見て思ったのは、動き方、動きのネタの使い方などのキャラクターが、ナイナイに似ているのは、今までも思っていたけど、このコンビってネタの構造が雨上がり決死隊の若手の頃にそっくりなんですよね。特に小ボケをスキマなく入れていく、その小ボケのほとんどが動きのネタか、声色を変えるネタというところが、まさに往年の雨上がり決死隊なんですよ。
だから雨上がりの台本をナイナイが演じていたというのが、span!というコンビの構造だったんだと気付きました。そりゃspan!強いわと思ったし。それは俺が好きなはずだよ(笑)。そして大阪の賞レースでなかなか評価されない理由も、何となく理解できてしまった。そういやナイナイも、雨上がりも、というか天然素材が関西の賞レースでは、ABCとよみうりの賞レースで、この二組が受賞しただけで、他は全く用無し扱い受けていましたからね。
今日の舞台を見ても思ったのは、漫才アワードのIMPホールもそうだったけど、span!は大きな舞台で見ると面白い。それはspan!というコンビが広さを武器にしているコンビだから、だからbaseよしもとのサイズの劇場でこのネタ見ても、確かにそんなに面白くないかもしれない。だからもうspan!は、NGKとルミネに出せばいいんじやないかなあ? 客層的にもおじちゃんおばちゃんや修学旅行生相手になるのも合ってるでしょう。M-1も三回戦までのサイズの箱では判断しづらい。ここは1000人の前でさせて真価が分かる。90点。

銀シャリ 漫才『犬のお巡りさん』

良いネタを持ってきたんだけど、僕には橋本が少し早いように感じた。全体的にリズムが良くない。こんなもんじゃないだろうという思いの方が強くて、「あれ? あれ?」とか思っているうちに、終わってしまいました。75点。

ウーマンラッシュアワー 漫才『タイムマシンで未来の自分が会いに来る』

お客さんの大半が序盤で入り込めなかったのが全てでしたねえ。その要因は二人とも緊張していたのか、何なのかは分からないけれど、村本が序盤で噛んだり聞き取れなかったりするところが多く、つられたのか緊張なのか、中川まで早口になっている箇所もあった。
後半は心が折れたのか分からないけど、連続で台詞も噛んでいたし、噛まずに早口長台詞が売りになってしまっている以上、かなり厳しい内容になってしまいました。まあ個人の芸歴は長くてもコンビ歴大舞台の数を考えれば、仕方ない部分も多いでしょう。(続く)
ただそれが無くても、このネタは設定など穴が多くて、あんまり良くないと思いました。まずお客さんは去年のアワードの活躍、そして今年になってからの紳助の評価があって、彼らのことを知っている人は「ムラセン」か「バイトリーダー」を見たいわけです。そういう期待には応えないといけないのが、客商売たるタレントさん、芸人さんのすることでしょう。
そして何だかんだ言っても、ソーセージ同様に、この六組で一番知名度のないグループなんですから、知らない人には一番自分たちの良いところを、まず見せてやるという気持ちでいないとダメでしょう。
おそらく「バイトリーダー」は、8分ネタ用に温存したのかも知れないけれども、でもソーセージもそうだけど、ウーマンとソーセージはこのメンバーの中では、世間的にはまだまだ無名なほうなんだから、決勝にネタを温存するのではなく、自分たちの一番良いネタ、一番世間に対してアピールになる。印象付けやすいネタを一本目に持ってくるべきだった。いや本人達はこのネタの方が自分たちのマイベストワンだというかもしれないけど、でも過去の賞レースなどでの結果を見れば、それは違うのは明らからですからね。
それにイケメンの先生とか、バイトリーダーが早口というのは設定とキャラ整合性があるけど、タイムマシンから来た未来の自分が、過去の自分に早口でメッセージを言うというのが不自然すぎるんだよなあ。早口キャラとネタの設定に整合性が取れていなかった。ということでネタの選択的にも、この場の演技的にも見るべく所のない舞台になってしまいましたね。これで初めて見た人は、「紳助これに90点台付けるの?」と不思議な気持ちになったでしょう。65点。
ここまで書いてspan!のところで書いたことに少し追記すると、今回の六組で唯一、広いところで沢山の人の前で見た方が面白いネタをしているのは、span!が唯一でした。しかしモンスターエンジン銀シャリは、本当は狭いところで見た方が面白いタイプの芸だけど、自力とパワーで押し切れた。そして他の四組というのは、やはり狭いところで見て爆笑するタイプの芸でしょう。だからbaseよしもとで、span!と逆転するのは理解できなくもない。
しかしそれは通好みではあるけれども、やはりネタが小さい証拠なんですよね、だから狭いところで見た方が面白い。span!は大衆向けのネタやっている分だけ、間口の広さがあるのが、そのまま広い場所で大勢いた方が受けるという、ネタの広さにもなっている。だから通好みなファンには、薄さを感じる人がいるのかも知れませんが、ただ狭く濃い部分で勝負している人たちも、広いところに持っていったら、結局薄くなってしまっていること考えると、それでも良いじゃないかと思うところです。
審査結果はspan!2、銀シャリ5、ウーマン0で、銀シャリが最終決戦に進出。自分はspan!の方が上だったけど、ただ銀シャリspan!は見方が違えば逆転してもおかしくないので、全く問題じゃないでしょう。良い時の銀シャリと、今回の銀シャリを自分は比べてしまっていたので、そういうのが無かったら僕も銀シャリだったかも知れない。
このあたりでまた内藤剛志がコメントで、モンエン銀シャリのネタは見た事あるネタだったけど、どっちも大好きなネタで嬉しかった。という趣旨のコメントをぶっ込む。モンエン銀シャリのこのネタって、全国放送のテレビではほとんどやったこと無い。銀シャリがレッカペで一回だけあるかな? というぐらいだと思ったので、正直ぶったまげた。どれだけ若手の漫才好きで見ているんだよ。やっぱり内藤さん、来年からM-1とかR-1の審査員に入って良いよ。あんたは凄いわ(笑)。ここまで審査員していることに、僅かなコメントで、客に納得させる力が素晴らしい。
最終決戦は、モンスターエンジン銀シャリが、8分のネタで勝負です。

モンスターエンジン 漫才「旅館の怪談」

動きが多くて、長い時間を効果的に使っている天丼も、面白いんだけれども、いつもは面倒くさい西森の理屈が、今回はかなり薄めにしてあるんですが、ここまで長いネタとして見ると、もう少しは理屈があってもいいように思いました。なんか長くした分だけ薄まって、悪ふざけっぽくなっている。
ここは8分でやるべきは、「ハリウッド」か「地獄」だったんじゃないだろうか? 「地獄」を8分かけて色んなボケ入れてやってくれれば、凄いことになったと思ったんだけどなあ。これだけの時間があれば、また審査員のメンバー的にも、地獄の描写などを鮮明にして、笑いがない部分を少し入れても、認めて貰えそうな気もするんですけどねえ。

銀シャリ 漫才「ドレミの歌→ABCの歌」

ここは爆発しましたね、鉄板の流れですから受けて当然なんですが。ただどう考えても4分ネタを2本並べたところが、どう評価されるかが全てでしょう。しかし受け具合とか、ネタのクオリティだけを純粋に見て貰えたら、勝負はあったと思うのですが。
最終決戦の僕の個人採点は、モンスターエンジンが70点、銀シャリが85点なんですが、銀シャリが4分のネタを二本しただけだろうという判断した人が、どこまで欠点とするかが、決め手になると思いました。しかし4分や5分の賞レースでも、ネタを二本つなげてくくる人は沢山いましたから、そんなに審査員としては気にする人も少ないのかも知れません。
審査結果は、銀シャリ4、モンエン3で、銀シャリが念願の初タイトルを獲得しました!! 銀シャリにはマイナスポイントがあって、どっちが優勝してもおかしくないという内容でしたが、同じぐらいなら、タイトルの無い方が優勝したのは、非常に自然な良い結果だと思います。
また最近の大阪の賞レースは、消去法で優勝はこの人だろうなとか、しかもその通りにならないとか、レベルの低い回が続いていました。そんな中で久し振りに在阪賞レースでレベルの高い争いで、力のある人が優勝したのは久し振りだったので、久し振りに凄い楽しかったです。銀シャリはやっぱり今年大阪勢で、唯一M-1を戦える関西勢であることを示しました。
ソーセージとウーマンはコンビ歴を考えれば、ここに来て共にグループ再開だったけど、最低限以上のお客さんを盛り上げる仕事をしていましたからね。この二組もポテンシャルやっぱり高いです。そして銀シャリspan!モンスターエンジンの三組は、ここに藤崎マーケットを加えた四組が、いまの大阪の若手の実力者といえる人たちでしょう。藤崎はABCに続いて、決勝進出を逃したりと心配な調子が続いているのは気がかりですが。
以上、『上方漫才コンテスト』の感想でした。最後に芸人さん、審査員さんはもちろん、妊娠三ヶ月の身で司会をした大沢あかねさん、お疲れ様でした。

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