M-1、エンタ批判の嫌儲側面〜最近の若い人はプロモーションに対して潔癖過ぎる

「『M-1グランプリ』とは何を目的に、何を審査しているのか?」の最後の段落や、「お笑いはメジャーに向けて市場を広げた方が良い理由」で書いたことについて、いまいちピンと来られていない方が、まだ少しですがおられるということで、具体的な事例を挙げながら、他のジャンルの例も引きながら、話を進めていきたいと思います。
この二つのエントリーの締めは、メジャーで売れる人がいて、その人たちが市場全体を広げてくれたほうが、マニアックなものを世に出せる余裕や、流通させるだけの市場規模、そしてそれを受容するお客さんが多くなるんだから、マニアックな物が好きで、メジャーなものは好みに合わない人でも、メジャーを排除するようなことは言わない方が良いよ。嫌いは嫌いで自分の個人的なこととして、留めておいた方がいいというものでした。
「メジャーにケチを付ける」というスタイルは、僕は過去のエントリーで、「90年代までのトレンドである」という趣旨のことを書きましたが、バブルの残り香がまだ続いていた頃、まだギリギリ日本が右肩上がりを続けていた時期なら、マニアックな人たちが、メジャーを否定、批判することがポーズとして成立したけど、エンタメ産業全体が、市場規模を縮小する中で、それをやるのは業界のご臨終モードへの、一直線にしかならないと考えています。
もっというとメジャーをディスることに成功した場合、それは現代の経済状況や、エンタメ産業に関する動向を考えると、それは一直線で業界の市場の縮小に向かい、一番最初に切られるのは、マニアックなもの、アーティスティックなものから削られていくことになってしまう。いや削ろうとしなくても、それを流通させるだけの余裕が、業界全体に無くなってしまう。

Waste Of Pops 80s-90s|カバー曲・消えたバンド・ニュース | 01/17

というのはエイベックス、がっつり稼ぐところは稼ぐところで確保しておき、
それ以外ではかなり自由度の高い制作をさせている、という印象なので。
その2つを比較的明確に分けて考えているっぽい。
たとえば今のYMOが所属しているcommmonsレーベルは現在エイベックス傘下にいる
わけですが、レーベルの自由な活動を保証していなければ、□□□の新作みたいな
滅茶苦茶な実験作がメジャー流通で出るなんて、ほぼありえないわけですし。
Waste Of Pops 80s-90s|カバー曲・消えたバンド・ニュース | 01/17

これ凄い分かりやすいなあと思うのは、お笑い界だと、いまは吉本がそうなんですよね。
吉本が若手の育成の専門の劇場作ったりとか、マイナーなことをする芸人には、ニコニコ動画に場所を与えたりとか、芸人がお遊びで始めたイベントやユニットを、発展させるという展開があるのは、その前に自由な活動を保証するだけの余裕があるからなんですよね。
大阪のもう一つの方の事務所が、どれだけ芸人主導のイベントやユニットを、止めさせてきたかということを考えれば、いかにキャッシュや市場を確保していることの余裕が、マイナーなものを泳がせる余裕、リソースを確実に売れるものだけに、振り分けるということをしなくて済むというのが、良く分かる事例だと思います。

だから、稼ぐ部分を馬鹿にするのはかまわないんだけど、それがなくなると
それはアーティスティックな方にも金が回らなくなることになるわけで。
かつての例で言えば、ポリスターWinkで稼いだ金をFlipper's Guitarの
販促費に回した、みたいなことができなくなるわけですよ。
Waste Of Pops 80s-90s|カバー曲・消えたバンド・ニュース | 01/17

品川が家電を宣伝するとか、紳助がファミリーに歌を唄わせる、と言うことでキャッシュを生んでいるからこそ、テレビ界というか、よしもとの番組には、野性爆弾椿鬼奴を出す余裕を与えているということですからかね。「竜兵会」なんかがクローズアップされるようになったのは、吉本へのカウンターという側面が大きいのですが、それはカウンター足るべきものがあるからこそですしね。
メジャーを馬鹿にするのは構わないけれど、その業界でメジャーが先細った時に、一番最初に切られるのは、マイナー分野からで、メジャーを狙えるものしか出す余裕はなくなっていく。
という話を書いている最中に、『エンタの神様』が終了するというニュースが、流れてしまいました。そして案の上に出てくる、「あんな番組終わって良かった」という、自称・お笑いファンの声、声、声でありますが、それに対して「最近のエンタ見てないだろ? いまや東京03サンドウィッチマンアンジャッシュ陣内智則の長いネタを、テレビで流してくれる唯一の番組じゃないか」という反論は、僕もしましたし、多くの心あるお笑いファンは、投げかけることになりましたが、しかし僕はもっとそれを踏み込んで言うと、長尺でしっかり見せることがなかったとしても、エンタってそんなに悪い番組だったんでしょうか?
だってエンタって番組のおかげで、どれだけの食えてなかった、陽の目を見えていなかった芸人が、陽の目を見るようになり、芸人として暮らしが立つようになっていますか? エンタでブレイクして、いまテレビバラエティや、地方の舞台で活躍している人が、どれだけいるか考えたら、決してお笑いファンは、頭ごなしに否定できるものではないと思うのです。あの番組が結果的に、多くの芸人を表舞台にあげて、食えるようにしたという功績は、マニアックなお笑いファンだからこそ、認めてやるべきなのではないでしょうか?
話をM-1に戻しますが、“俺は”“私は”という主語の元で、「吉本の笑いは嫌いだ」「紳助のやり方は気にくわない」「M-1の審査はおかしい」と思うのも、ある程度語りあうのも良いんだけど、こういったものを否定することが、さもお笑い界全体の社会正義のためといって、M-1とか、エンタとか、いまの短いネタ番組とかを否定、批判していくのは、違うんじゃないのと思うのです。自分が嫌いというのは構わないけれど、これらの番組が現在、お笑い業界の底辺が拡大していって、お金も集まることによって、マニアックな芸人にも注目が集まっている。『あらびき団』みたいな番組もできるようになっている、ということをマニアックにお笑い語りしたい人なら、余計に意識するべきなのではないでしょうか?
しかし最近の若い人たちは、嫌儲ムードというのにも似た状況として、どうもプロモーションに対して潔癖過ぎるところがある。知名度のある人を声優に起用して、作品のクオリティが目に見えて下がっているとかならともかく、マンガやアニメの宣伝部長みたいな感じで、有名人が出てくるだけで、親の敵のようにブクマやTwitterで罵っている人がいたり、それだけに限らず、注目を集めたり、名前を売ったり、底辺を広げるために、力を尽くすという事自体を、嫌がるようになっている。

音楽業界がいかに危ないか俺が優しく教えるスレ 働くモノニュース : 人生VIP職人ブログwww

とりあえずこの人も再三、色んな所のレスで語っているけど、売れてる人が市場を支えているから、そのジャンルで多様なものが生まれている。ということは普通のファンならともかく、素人語りでも語っているような人は、もう少し理解して語るべきじゃないか? という風に思っているわけです。稼ぐところで稼ぐというのを否定し批判することは、そのままお笑い界の市場縮小に繋がって、あなたの好きなマニアックなものから、先に切られていきますよ。ということは多少おせっかいでも口やかましく言っておきたい。
しかしこのスレまとめは、音楽業界の話だけど、お笑い業界の話としか思えないことが、凄い多くある。いま景気が良い内に、お笑い業界は巧いこと、市場の成熟までもっていかないと、明日は我が身だよ。

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