『百姓貴族 (1)』（荒川弘/新書館）

Amazon.co.jp：百姓貴族 (ウィングス・コミックス・デラックス) (WINGS COMICS): 荒川弘: 本

実際に畜産農家に生まれ育ち、農業高校を卒業し、実際の農業に従事したこともある、作者のリアル体験を元にしている作品ですが、リアルな描写や生活に基づいた農業語りは面白いし、さすが『鋼の錬金術師』の作者と思う、読者を引き込む力もあったのですが、ただ田舎のオバチャン的な決めつけや、ワガママなところが読んでいて、引っかかる鼻に付く部分としてありました。あと読んでいてどうしても『もやしもん』と比べた時に、リアルとリアリティの違いという事を考えると、やっぱり作品を面白くするのは、リアルじゃなくてリアリティなんだなということを、考えた次第であります。あと絵柄的に、ハガレンの単行本の巻末おまけマンガ集を読んでいるような気持ちにも、多少なってしまいましたね。
ただハガレンで描かれている、突き放した死生観とか、等価交換の元になったのは、間違いなく畜産という、動物の生き死にを身近に感じるところに、生まれ育った環境が、ハガレンのあの世界観を生んだことが分かる一冊です。牛がドナドナされるところを、幼い頃から見てきている。まして荒川弘が見ていたというのは、やはり違う何かを生み出したということを、感じずにはいられないです。だからハガレン読んでいる人にとっては、作者の思想背景、バックボーンを知るにあたっては、かなり重要な作品であることは、間違いないでしょう。