あかほりさとるの「エンタメビジネス論」

オタク成金 (アフタヌーン新書)
あかほりさとる

なぜ、腐女子は男尊女卑なのか? ―オタクの恋愛とセックス事情 (アフタヌーン新書 003)

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オタク成金 - 琥珀色の戯言

まず最初に断っておくと、世代的にはど真ん中のはずなんだけど、僕はあかほりさとる氏には、全く思い入れがなくて、今回作品リストを読んでみて、『ラムネ』とか『シュラト』といった、リアルタイムで僕が嫌いだった作品がズラッと並んでいて、そりゃ視界に入らなかったはずだと思ったのですが、共通しての作者ということすら認識していなかったから、アンチ心も別に沸いていませんでした。
そんな僕ではありますが、この本に書かれていることは高く評価します。いや突っ込み所が満載というのも、凄く良く分かりますし、今回書評を書いているお二人が突っこんでいるポイントを、僕の方でも更にもう一つ突っこむことも可能ですが、それはもうこの時点で、死ぬほど沢山のブログ界隈だけでされているので、それを後発の僕は繰り返さないです。ただ突っ込み所満載であること、わざわざ買ってまで読む本かどうかも、まあ迷うところではあります。
まず「全てのエンタメはサービス業」ということを、良くこの人は言い切ったと思う、それだけで僕はあかほり先生について、作品は評価しなくても、この立場にいる商業作家として認めてしまう。日本のエンタメ産業は上の人が、公にこれを言い切れなかったことで、どれだけの不幸な若者を迷わせたかと思う、ただこれが若い人にとって、「聞きたくない、耳を塞ぎたい声」だというのも、そういう若い人と最近接する機会があるから、それも良く分かります。エンタメはサービスじゃなくて、アートだと思っている人が多くなっていて、それはそれで面白い作品を、僕たちに与えてくれるんだけど、作り手とか市場の人達が、最終的に幸せになれる構造には、遠い業界を形成しかねない。サービス精神が薄い作品ばかりになると、どうしても間口が狭くなって、顧客の新規参入も生まれなくなるし。
あかほり流「ライトノベルの書き方」ついては、素直に拍手したよ（笑）。これもいまライトノベル書いてる人や、目指している人には、相当な反感を買ったと思うし、僕がその立場でも怒っていたような気もするけど、ライトノベルは今は違うかも知れないけど、活字の本といえば、子供の時に『ズッコケ三人組』とか『かいけつゾロリ』しか読んだことがない、というような漫画読みの中高生に、悪く言えば引っかけるためにあるわけで、小説の楽しさを知ってもらうといった役割は大きくあるはずなんです。
これは教えて貰った話なので、事実関係に間違いがあったら申し訳ないですが、ドリームキャストで『ロードス島戦記』のゲームが発売されたことがあり、それがゲームとして評価が高くてある程度ヒットした際に、元々ゲームやアニメの方がオリジナルで、元は小説がオリジナルであることを知らなかった人たちが、水野良の原作ノベルを読んで、「どうしてこんな下手くそに、ノベライズ化させたんだ」と怒って、掲示板とかで祭りになった、という話を聞いたことがありましたが、水野先生は確か小説家になるつもりは全く無くて、安田均先生に促されたから、『ロードス』の小説を書いたという話があって、この話を信用するのなら、当時は素人だった訳ですから、後世にそのように見られるのは仕方ないのですが、『フォーチュン・クエスト』の最初の方とかもそうですが、いま読むとそんなに文章のこと分かっていない、句読点の使い方が分からなかったり、“てにをは”に不安があるようなブログ書いている僕でも、これは厳しいかなと思う表現や、物足りない部分や突っ込み所はあるんですけど、でも逆に『ズッコケ三人組』とか『かいけつゾロリ』しか知らなかった子供達には、分かりやすく入れる小説だったというのも、同時に凄く分かるんですよね、そしてライトノベル業界において、既存のライトノベルのユーザーが楽しめる作品は、次から次へとまだ名作が出ている状況なのに対して、そういう入門編となるような作品、また商売の論理で新規ユーザーを引っかけやすい作品が、少なくなっているという状況は理解出来るので、あかほり先生の言いたいことは僕は、この点については同意したいです。
この作品は作家論としては、不満が多い一冊とは思いますが、プロデューサー論、編集者論としては、やはり押さえておきたい一冊だと思います。そっち方面の人は買ってでも読む価値は、やはりあるかもしれません。