「M-1グランプリ2008」決勝は過去最高レベルの大会になり、最高のチャンピオンが誕生した

はっきりいって今年のM-1のレベルは過去最高、少なくとも2003年のフットボールアワーが制した年に、匹敵するレベルの高い年となりました。そして過去に優勝候補と言われながらも、何度も準決勝の不可解な審査の壁に涙を飲んでいた人達が、チャンピオンに輝いたという意味では、記念すべき大会となりました。
簡単に言ってお笑い界の歴史が大きく変わる一日になったと思う、個々の芸人がとかではなく、来年のお笑い界ではなく、ここ十数年に渡って主流だったものを、大きく覆すことになると思う、この扉を開いたのは、おそらく去年のキングコングがきっかけを作って、サンドウィッチマンが一部のお笑いファンに影響を与えた、そしてこの間に「キングオブコント」というのが挟まったのも大きかったんだろうけど、今年のNON STYLEで完全に向こう15年や20年のお笑い界の方向性は、大きな転換期を迎えました。これまでの「玄人受け」が一番素晴らしいという流れは、今日をもって終わりました。「とにかくお客さんに指示される漫才」「大衆に受けるお笑い」というのが、主流になる時代にお笑い界は帰っていった、そういう意味で物凄く記念すべき日だと思います。
とりあえず芸人とか、お笑いマニアとかは、NON STYLEが優勝しただけでなく、松本人志島田紳助があそこまでの評価していることについて、困惑じゃないよね、混乱しているよなあ(笑)。特に大阪のお笑い界というか、若手漫才師の「M-1を勝つための教科書」みたいなのがあれば、おそらく物凄い若いページに、「客受けはするけれど、M-1を勝てない漫才」の代名詞で書かれていたであろう、NON STYLE松本人志島田紳助が、大絶賛する形でM-1を制したのは、みんな絶対に大混乱しているでしょう、ざまあみやがれ(笑)。しかしお笑いをサブカルから大衆文化に取り戻す戦いは、まさに最初の1ページが開かれただけで、ノンスタ、キンコンはもちろん、僕は本質的にはナイツもオードリーも大衆派だと思っているから、この人達の切り開く新時代に大きな希望と夢を持てる、そんなM-1グランプリでした。石田があんなに泣かなかったら、二年連続でM-1の結果で泣いてたと思う(笑)。
まず最初にネタ以外のことを書いておくと、上戸彩のアシスタント仕事は良かったですよね(笑)、良い意味で緊張感を削いでくれたし、本当にお笑いが好きという正直なリアクションも好感が持てたし、何より変な言い間違いや段取りミスが何一つ無かった。バラエティのアシスタント業の経験が全く無かったとも思えなかったし、またそういう経験が無いことで、バラエティに変にスレていないのも、番組的に良かったのではないでしょうか? 緊張と緩和がバランス良く取れていた。相変わらずネタの重要なところで、観客席や司会者や審査員にカメラをスイッチングしてしまうのは、相変わらずでしたが(苦笑)。
ちなみに僕は今回のM-1は敗者復活戦会場で見ました。その辺の場内の雰囲気も合わせたパブリックビューイングの現場レポという形にしたいと思います。

ダイアン 漫才「サンタクロース」90点

準決勝で爆発した素晴らしい漫才でしたが、審査員の指摘もあったように、トップ出番と言うことを差し引いても、前半が盛り上がりに欠ける展開となりました。準決勝は「ファナスティ知ってる?」というやり取りの辺りから、観客の笑いがうねりを上げるほどあっただけに、決勝の現場も、敗者復活戦の客席も盛り上がりまで、時間がかかる展開になったのは、とても残念に思いました。
しかし敗者復活戦で、準決勝と同じネタをしたコンビの、敗者復活戦と準決勝の受け方を比較したり、また東京の芸人さんが大阪の舞台に出た際の感想などを聞いても思ったのですが、大阪のM-1で三回戦とか準決勝に来るような客というのは、良く言えばお笑いリテアラシーが高いので、長い前振りとか、変化球に対する理解が早いんですよね、それはダブルネームとかソーセージとか、パプア。といった変化球を、M-1の大阪準決勝と敗者復活戦で出してきたコンビが、いずれも盛り上がり所に大きな遅れがあったことから、やっぱり大阪のお笑いファンは、理解が早すぎるんですよね、それでそこに馴れて合わせていくと、やっぱり難しいことになるんだなあと思いました。
しかしそういうことはおいといても、これだけ秀逸なネタを一年間で、作り上げてきたダイアンの二人には、賞賛を惜しまないでおくべきでしょう。今年のM-1グランプリが、とてもレベルが高いものになったのは、彼らがトップバッターで素晴らしい仕事をしたからでしょう。去年のM-1グランプリで決勝に彼らが進んだ際に「ダイアン売れた」と喜んでいた連中について、僕は鼻で笑っていましたが、来年のダイアンは多くの東京のテレビ番組で見ることになるでしょう。ただそれを掴むことが出来るかは、彼らにかかっているでしょうが、笑い飯や千鳥の二の轍を踏むことがないようにして欲しい。
でもとりあえずネタが始まったときに「寿司」じゃなくて、「サンタクロース」で来てくれたことが嬉しかったですよね、変に色気出して良いネタを取っておくみたいな事していたら、千鳥やPOISON GIRL BANDのように、二年連続で大失敗というレッテルを貼られて、エライことになっていたと思うので、去年のイメージを払拭しただけでも、今年のM-1は彼らにとって成功だったということにしたいです。

笑い飯 漫才「闘牛士車上荒らし→追突事故」87点

近年の笑い飯の中では、かなり良い漫才を出してきたと思うのですが、中盤でダレたという印象は拭えなかったのと、やっぱりこういう場所で見てみると、初見の人にはやや厳しい漫才になってしまったようにも思いました。倍々とまでは行かなくても、ここ数年になって毎年のように5%とか単位で視聴率が上がっている番組で、笑い飯を初めて見る人に面白味が分からない漫才を出して来るというのは、少しまずかったかなと思いました。準決勝で見たときはそんなに気にならなかったんですけどね。正直言って、中田カウス以外の審査員が全て、笑い飯を上回る点数を付けたのは、意外な感じがしました。

モンスターエンジン 漫才「エイリアン映画」81点

僕は準決勝で見たときに、このネタで爆笑したし、決勝間違いなしと思いましたが、ただこのネタだと決勝は確実に最下位候補という風にも思いました。だからまあ思っていた以上に、現場でも、敗者復活戦会場でも、審査員にも受けていたなという印象でした。どうもやたら絶賛している人と、酷評している人の差が、かなり評判を聞いていると激しいようなのですが、例年のM-1の基準で見ても悪くない意味で水準の受けだったと思います。
ただここはダイアンの項で語ったように、初速の遅さとか、前振りの長さというのが致命的だったのは確かで、やっぱりこの辺を許してくれる、理解してくれる、(良く言えば)リテアラシーの高い客ばかりを相手にするのは、弊害が多いんだなということを思い知らされる思いです。

ナイツ 漫才「宮崎駿」95点

こちらも初速の遅さはあったけど、素晴らしかったですね、ただ僕は「眼鏡」と「城」というキーワードは、僕にはナイツの完璧な完成された純度の高い漫才の中では、不純物のように思えて仕方なかった。あんな小細工がなくても、僕は充分にナイツのネタは面白いと思うだけに、僕は小手先のノイズを混ぜてしまったことが残念でならない、正直言うと僕はあれがなかった方が、98点と言えたように思うのです。ああいう小ネタを仕込む時間が入ることで、「言いまつがい」のボケが一つか二つ確実に、漫才本編の中に入らなかったであろう事が、残念で仕方ありませんでした。

U字工事 漫才「栃木の男は茨城の女と結婚できない」85点

去年なら二位や三位に入っていても、全くおかしくない漫才でした。僕の場合はレッドカーペット他で見ていたネタだったので、目新しさが薄い分だけ、印象度が下がってしまいましたが、ここ数年に五位で終わったコンビというのは、もっとレベルの低い漫才になっていたことを考えれば、U字工事は今年のM-1のレベルを引き上げてくれました。オール巨人師匠が何を言いたかったのかは、ブログで語ってくれるのを待ちましょう。

ザ・パンチ 「ニュースキャスター」80点

唯一このコンビが今回スベったという扱いを受けていましたが、それはかなり無理からぬ事だったと思います。はっきりいってザ・パンチの今回の失敗は、二本目を意識してしまったことに尽きるでしょう。彼らがテレビ的に「死んで」とか「死ね」という直接的な表現が規制されたことで、それに変わる面白いキーワードを次々と発見していった、まさに規制は表現を閉じ込めることもあれば、表現を育てることもあるということでは、明らかにザ・パンチは規制が自分たちの表現を飛躍させた。
そんな中で今年は「レッドカーペット」「イロモネア」において、彼らは短い時間で圧倒的な笑いを起こすワードを次々と開発していったにもかかわらず、その中の優れたものを全て最初の四分に、濃縮するという選択を選ばなかった、だって彼らの面白いワードの上位三つは「おむすび」「じゃがいも」「ボブスレー」じゃないですか、その三つの内の一つしか、ファーストラウンドのネタに持ってこなかったというのが、説明不要の大失敗でしょう。M-1の決勝初出場とか、前回出たときはダダスベリで終わった、というような人は最終決戦に残る事なんて考えずに、最初から全てを出し尽くさないと、こういう事になってしまう。ザ・パンチは最終決戦に出る事なんて考えずに、今年までに編み出した優れたワードを、全て出し尽くす漫才を決勝の一本目に持って行くべきだった、前評判が7番人気から9番人気の決勝進出者は、二本目のことなんていうのは残ってから考えるぐらいで良い。
しかし審査コメントの渡辺正行と、エンディングの島田紳助には、彼らは救われたね、あれが愛のある彼らを救うためのコントだということを、理解できない連中が多いのは、ザ・パンチが一回戦でネタの出し惜しみをした以上に、理解に苦しむ。そりゃあれが厳しい怖いコメントと取るんだったら、そりゃ明石家さんまの若手弄りも、本気で潰しに来ていると誤解する芸人やテレビ視聴者沢山いるはずだわ。

NON STYLE 「溺れた少年を助ける」97点

僕はU字工事からこのNON STYLEまでは、違う場所で見ていたんですよ、どうしても知り合いの所にいかなくてはいけない用事があっためだったんですが、そこが明らかに芸人みたいな人達がたまっている所だったんですが、もう決勝の会場や、敗者復活戦の会場全体と比べて明らかに受けていないんですよ、もう完全にその一角だけ明らかにスベっている感じ、僕はこれは99点付けてもおかしくないというぐらい受けていたので、途中から回りの温度に物凄い不安になったのですが、もう普通に僕が思っていた通りの評価を、審査員が与えてくれていて一安心して元のいた席に戻ったら、一緒に見ていた友人達が、口を揃えてノンスタが素晴らしかったこと、そして会場全体がノンスタの漫才で大盛り上がりになったことを聞かされて、もうノンスタの漫才が始まるまでに、席に戻らなかったことを残念に思いました。
ただ僕がいた席も、後ろのなんか若いサブカル男子四人組が延々と「キンコンとノンスタが勝ったら八百長」みたいな事を、ずっと言ってるような連中だったりしたのですが(苦笑)、でも僕の見ていたときの回りとかと同じく、この日の友人の芸人のメールのやり取りで知ったのですが、この日の敗者復活戦の楽屋とか、大阪で鍋パーティーや忘年会をしながら、M-1を見ていた大阪のインディーズやアマチュアの芸人は、ほとんど笑っていなかったし、この結果が出たときには絶句していたようです。世間と売れている師匠クラスの芸人と、売れていない芸人の間には、これほどの価値観の隔絶があるというのが、非常に良く分かる話だなあと思ってしまいました。
というかNON STYLEを決勝や優勝候補に上げると、芸人さんとかお笑いを分かっているような人には、いつも凄く笑われたのですが、どうして島田紳助松本人志が、ノンスタを評価しないと勝手に決めつけていたんだろう、という風に思っていたのか不思議で仕方ないです。僕は紳助師匠は不安だったけど、松ちゃんは評価すると思ってたよ、松本人志は自分にないものを評価する傾向が、ここ数年のM-1では顕著だったし、明らかに「キングオブコント」の決勝メンバーや結果に、不満感じてるのあからさまだったしね。
しかし東京に来てまだ一年も経っていない身で、東京でロクなレギュラー番組も持ってないいような露出にも関わらず、決勝の舞台、敗者復活戦の会場と、ここまでお客さんを味方にしていることに驚きました。なんかやっぱりみんなもう何年も、決勝に彼らが上がってこなかった不可解さとかを感じていたんだなと、そういうことを思いましたね、なんか会場全体がM-1グランプリ決勝に、NON STYLEが来るのを待っていたというのを、物凄く感じてしまいました。いや本当にみんな待ってたんだよね、彼らがこの場に上がってくるのを、そしてそれに応えた彼らは立派すぎる。この時点で少しウルっと来ていた自分がいたよ(笑)。

キングコング 「ヒーローインタビュー」93点

後で思い返せば、熱の足りなさを感じた、自分の三回戦の感想は正しかった、ということに後付けの理由はいくらでも付けられるんですが、いや敗者復活戦の会場はかなり盛り上がったんですよ、実際にこのネタで三回戦笑えなかった僕も爆笑したし、回りも相当に受けていて、これは笑い飯危うしという雰囲気だったけど、やっぱり彼らに足りなかったのは熱量だったと思う、そして敗者復活戦の会場が彼らで盛り上がったのは、その熱を観客が補ったからでしょう。
いやもちろん彼らが真剣にM-1のタイトルを欲していたと思うから、熱を出してなかったことはないんでしょうが、去年と比較したときにどうしても、熱という部分に不満が残る感じになってしまったのと、その割には熱がこもっている演技だからこそ、面白くなるネタを持ってきたせいで、カウス師匠は「頭で作ったような漫才」と評したけれど、仏作って魂入れずのような漫才になってしまった、本人達のテンションと、ネタのテンションと、現場の客や審査員のテンションの全てが、アンバランスとなる結果になってしまった。あと基本的に去年とそんなに代わり映えがしない漫才だったこと、同タイプのNON STYLEの熱演の後だったことなども、非常に不利に働きました。ただ僕はこの結果を受けて、来年のキングコングが楽しみになりましたね、僕がいま来年のM-1決勝の予想をするのなら、キングコングとオードリーの馬単を表裏で買います。
あとほとんどの審査員が、七番手か八番手評価の中で、皆さんが大好きな松本人志だけが、キングコングに五番手評価を付けているところは、指摘しておきたい。というかキングコングの612点って、例年なら普通に高い順位に入れるんですよねえ。

オードリー 「引っ越し」94点

オードリーの準決勝で落ちたのは、改めてネタの選択ミスでしたよね、彼らがそういうミスを犯したせいで、敗者復活戦に残った芸人達が、本当に夢も希望も持てない結果になってしまった(笑)。もうネタと結果に関しては言うことはないんですが、この後も含めてですが、春日はM-1決勝の舞台が似合いすぎる(笑)。この後の笑い飯の敗退コメントなどで、こういうのびのびとした笑い飯の存在は、この番組に貴重な存在となっているわけですが、春日がいたら笑い飯もそういう役目としては、必要じゃないような気さえしています(笑)。
なんか島田紳助のコメントが注目されていますが、そんなに目くじら立てるコメントとは思えない。むしろ一人だけ90点台でなかった言い訳を、ユーモアを交え語っているだけで、オードリーを救ってはいるけど、彼らを貶めることにはなっていないでしょう。少なくとも紳助にそのつもりがあったとは思えないし、それは受け止める方が最初から、紳助に偏見持っているからそう捉えただけでしょう。実際に紳助のオードリーに対する得点は、紳助のこの日の平均点などからしたら、そんなに低くないんですよね、むしろオール巨人U字工事への低い点数とか、中田カウスのオードリーに対する高い点数の方が、彼らの平均点からしたら極端に違うぐらいです。というか今年は例年かなり極端な点差を付ける、松本と紳助がかなりおとなしい点差で抑えていて、カウス師匠が一番極端な点差を付けている。実際に紳助はいらん事いうたとされているけれど、例えばオール巨人師匠だって、去年のM-1ではキンコンのネタ後に、トータルより下にした理由というのを語っているし、そっちの方が実は字面にしたら結構きついことを言っている。紳助としては自分が唯一80点台だった理由を、ユーモア交えて語らなくては、いけなかったんですよね。
というか今年のM-1の特徴として、審査員がかなり巧くなってきたというのは上げられるでしょう。特に島田紳助松本人志渡辺正行が点数を付ける経験が上達して、あまり極端な点差を付けることがなくなったし、松本は特に93とか89とか86といった、小刻みな点差をコントロールできるようになっている、昔は5点単位でしか点数を付けていなかったのと大違いです(笑)。
あと今回は上戸彩の審査コメントもそうですが、審査員のコメントが本質を突きながらも、会場や芸人をリラックスさせようという方向に、かなりベクトルが向いていました。これはここ数年の緊張感が高まりすぎて、笑いを提供する場所とはかけ離れた場所に、M-1決勝がなっていたことの反省を、M-1審査員勢は凄く理解していたと思います。ただそれを額面通りに真に受けたり、変に裏読みするような人が沢山いるというのは、あんまりだなあと思ってしまいます。ザ・パンチのリーダーや紳助のコメントとか、NON STYLEの「フリートークが出来ない」という上沼恵美子発端のノンスタ弄りとか、全部バラエティ的に、この番組を盛り上げるということ、そしてお笑いの漫才の最強を決めるという場所の雰囲気作りのため、それに審査員の目的は集約されていると考えるべきでしょう。それが師匠クラスの芸人が審査をするという、M-1グランプリの最大の特色なのですが、それがようやく今年、本格的に機能しだした。
いや今年のファーストラウンドの点数を、冷静に皆さん分析してみてください、審査員各員が恐ろしいほどに、点数付けるのが巧くなっているし、各自の個人順位がバラバラで、紳助の言うように「好みの問題」というのも、各自の点数には多く出ているにも関わらず、全員の点数を合わせれば、世間の納得するベスト3になっているということに、僕はもっと驚きと賞賛の声を上げるべきだと思います。ナイツと笑い飯の3点差に、僕はそれを感じてしまいました。
さあ、最終決戦です。

ナイツ 「SMAP」90点

どうしてここに来て、去年の勝負ネタを持ってきてしまったんだろう? いや今回の最終決戦の三組って、去年の時点で「どうして決勝に進出しなかったのか?」という三組だったんですが、特にナイツとオードリーの二組は、去年と今年で驚くぐらいの成長度を見せたわけで、この二組は去年に上げずに成長を促したのは、M-1準決勝審査員の彗眼だったのかと、思い直したぐらいだったのですが、それなのにナイツはどうして去年のネタだったのか!! 少なくとも敗者復活戦会場は、ナイツのネタが「SMAP」だと分かった瞬間に、僕の回りだけかも知れませんが、落胆ムードが漂いました。というか、僕の周囲の二、三箇所から「ドラゴンボール」「ドラゴンボール」という声が聞こえたのは笑った。そうだよなー、「ドラゴンボール」やるべきだったよなあ。僕も「ドラゴンボール」か、そうじゃなかったら「清原」をやるべきだったと思う、ここに来て去年の勝負ネタに頼ってしまったのは残念、やっぱり今年のネタと去年のネタでは、クオリティに差がありすぎる。結局ナイツも最後の最後で古いネタに頼るという、ありがちな失敗をしてしまった。ここでナイツは消えたと確信しました。ザ・パンチが「ジャガイモの芽」をやらなかったように、ここは「クソソソ」か「ベソ・ジョソソソ」をやらなかったのが敗因の一つに上げられるでしょう。

NON STYLE 「怖い話」99点

もう完璧ですね、文句の付けようがない。というこれに文句付ける奴は、一体何なの? というぐらいの出来に持って参りました。本当に素晴らしいの一言に尽きます。いやノンスタに関しては、ここまで観客を味方に付けてるとは、僕ですら思わなかった。特に敗者復活戦の会場というのは、本来のオードリー応援一色になってもおかしくない場なんですよね、自分たちが送り出した勝者であるし、何より最終決戦で一位になる素晴らしい漫才をした後なんですから、視聴者や決勝のスタジオは別でも、敗者復活だけはオードリー一色になっても不思議じゃなかった。それでもまだ敗者復活戦会場には、「NON STYLEに優勝して貰いたい」という熱気は消えていなかった、オードリーと同じ、もしくは少し上回るぐらいの風が吹いていたんだから、決勝の会場は見事に一色になっていたであろうは、想像に難くなかったです。そりゃプロの芸人、あれだけメジャーで売れている人達は、そりゃノンスタを取りますよ、それは過去に会場を席巻したコンビが、いずれも優勝をもぎ取っていた、過去の審査傾向から、全くM-1の審査員達はぶれていない。
例えばこのネタでも、冒頭の石田が「竹馬に乗ってくる」なんてボケは、M-1甲子園でもやってくる人がどれだけいるか、というような弱いボケですよね、でもそういうのを積み重ねて、物凄い笑えるネタを作ってこれるというのが、彼らの強みなんですよ、これは去年のサンドウイッチマンも同じで、一つ一つのボケはそんなに大したことがないのに、それを積み重ねていくことで笑えるというのが、彼らの凄味なんです。本当に面白い芸人というのは、面白いことを思いつくや奴でもなければ、一瞬のフレーズやボケのセンスがある奴ではなく、普通のことを普通にやって面白い雰囲気を作れる奴なんです。ちょっと最近のお笑いを評価する人達の考え方が、台本制作能力を異様に重視して評価するという流れにより過ぎていていたから、実は新しい流れを作るという意味あいでも、このノンスタの優勝は見ることが実は出来るんですけどね、でも演技力にポイントを置いてる人は、M-1の決勝審査において、昔から審査員に多かったように思っています。

オードリー 「選挙演説」95点

盛り上がりという意味では、明らかにこちらの方が上だったけど、ネタのクオリティとして一本目との差は大きかった。これが結果的にファーストラウンドでは、オードリーを上位に見ていた、渡辺正行松本人志が最終決戦で、ノンスタとの評価を逆転させた理由でしょう。僕は外したら恥ずかしいから、「6:4でノンスタ有利」と言っていたけれど、最終決戦の選挙演説だと分かった瞬間に、僕はノンスタの優勝を確信しました。思っていた以上に審査員や決勝の観客に受けていたので、少しだけトーンダウンしましたが、それでも最終決戦に変則的なネタを持って来すぎるのは、過去の優勝候補も敗因になったことでしたから、このネタを高く評価する人もいるでしょうが、後半のふわふわした感じとかは、明らかに好みを分けるネタだったでしょう。
最終決戦の結果は、僕はノンスタ四票、オードリー三票でノンスタが優勝すると予想、というかそういう願望は敗者復活戦の会場の空気だったように思う、そしたら予想に反して、五票と二票という点差が付いて、ノンスタが優勝となりましたが、ここで関東で非吉本の渡辺正行NON STYLEに投票し、関西で吉本の重鎮の中田カウスが、オードリーに投票したことは、この結果が「関西の審査員中心の関西贔屓の審査」とか「吉本のお手盛り賞レース」という批判を交わせる内容になったのも、結果論とはいえ良かったなあと思います。
M-1グランプリの芸人、それも師匠クラスの、かつて漫才もしくはコントにおいて、一世を風靡したことがあり、いまなお芸人として第一線レベルで仕事をしている人達が審査をする、この審査方式をM-1が採用したただ一つの理由は、審査の公平性や先鋭性、優秀かどうかを担保するためでは全く無く、最大公約数的に芸人及び世間が納得する審査員ということ、ただそれだけが目的で採用されたことを、忘れてはいけないのです。別に世間が納得すれば、お笑い賞レースの審査というのは、藤本義一だろうが、バッファロー吾郎だろうが、お客さん100人だろうが、高校生1000人だろうが、誰でも構わないんですし、審査員を複数にして、点数公開制というような形にすれば、おそらくどんな審査員を集めても、最大公約数的に似たような結果になるもののです。ただM-1は、その結果を納得させる手段として、また審査コメントを聞きたいという、出演者やお客さんの要求を高めるエンターテイメント性の担保として、島田紳助松本人志渡辺正行ラサール石井春風亭小朝上沼恵美子オール巨人大竹まこと中田カウスといった重鎮に任せているのは、彼らの優れた審査というよりは、こいつらが審査した結果なんだから、文句付ける奴は少ないだろう、という効果の方が狙いとしては強い。
でもこういった芸人の重鎮が審査をする、ということ自体に価値観が仮託されすぎてしまった。それが結果的に「キングオブコント」みたいな徒花も生んだし、ビートたけしの登場時にも少し起こったことですが、ダウンタウンの登場以降の「玄人受け」する笑い、もっと言えば「芸人内評価」が高い芸人が、一番凄い芸人で、本当に面白い漫才なんだという価値観が、急速に膨れあがってしまった。それが結果的に漫才の表現を先鋭化はさせたけど、広げることには僕はなっていなかったと思う、そして去年のサンドウィッチマンに続いて、今年のNON STYLEと広げる側の人達が勝ったというのは、僕は本当に漫才界の未来の明るさを予感させる、素晴らしい大会であり、素晴らしい結果になったと思っております。
まあオードリーが勝っていても、ナイツが勝っていても、同じような結果になっていたとは思うけれど、今後の影響やインパクトを考えれば、一番オーソドックスで、さらにマスを相手に出来るNON STYLEが勝ったのは、お笑い界の新しい夜明けを期待させるのではなく、今日この日を境に、日本のお笑い界、漫才界は切り替わる瞬間になったと断言できるでしょう。これに対応できないタイプの芸人は、いまでもそんなにパッとしていない人達ばかりでしょうが、もうこれに対応できなかったら、マジで大きな波に乗り遅れることになるでしょう。これまでの常識が全て否定されたに近い瞬間ですから、冒頭に書いたように、この事態が理解できていない、芸人を含めたお笑い関係者は沢山いるでしょう。
漫才の一番最先端が、大衆に広く受ける漫才に戻ってきた、まさに鏑矢となったNON STYLEの優勝を、僕は心から嬉しく思うし、この結果をもたらした審査員に改めて敬意を払いたい。というか松本人志NON STYLEを評価するなんてこと、どう考えても分かり切ってたことじゃないか、センスで笑わす漫才なら、自分がいるんだから、それ以外のものを求めて評価するのは、当然のことでしょう。
むしろNON STYLEの漫才を、紳助も松ちゃんも、上沼恵美子も見たことがなかったというのが、今回のM-1の審査コメントで、一番の衝撃でしたよ、大阪の吉本の若手劇場で一番人気、関西のお笑い賞レースはほぼ総なめにした、本来ならばもう何年も前に関西のエースとして、漫才界に君臨していなくてはいけなかった彼らが、いかに大阪で吉本で不遇を囲っていたかというのは、この三人がノンスタの漫才見たこと無かった、というだけで証明できるでしょうし、「フリートークが下手だ」というキャラをありがたくも付けて貰いましたが、そういうノンスタの個性が発揮されない仕事しか、回ってこなかったということで、いかに大阪がノンスタを扱いきれなかったか、お笑いマニア達が彼らを過小評価してきたか、吉本で彼らが不遇だったかというのを、改めて理解されるコメント残してくれたのは良かったです。
今まで2003年のM-1が最高レベルの大会だと思っていた、優勝の意義というのが一番高いのは、2002年のますだおかだだと思っていた、決勝メンバーの選考の素晴らしさは2004年が良かった、最もハイレベルな漫才は2006年のチュートリアルだった、結果で涙が出るほど嬉しかったのは、2007年のサンドウイッチマンでした。でもそれは全て今年の2008年NON STYLEの大会が上回る、もしくはそれに並ぶ大会となりました。
最高のM-1を最高のチャンピオンが制した、NON STYLEおめでとう!!
僕はこの感想を、自分がノンスタのファンだから、贔屓目も入っているとか言い訳は一切しないよ、贔屓目抜きでもNON STYLEの優勝以外の結果はあり得なかった。僕はもう自信を持って、胸を張って誰に対しても、この意見を堂々と語っていきます。だって録画している人はもう一度よく見て貰いたいんだけど、他の笑い飯を含めた上位三組と比べても、ノンスタの漫才中の会場の拍手笑いが起きた回数が断トツで多いんですよね、もうそれだけでいかに圧勝だったのかは、理解できると思う。M-1決勝も敗者復活戦も客は相当マニアックな連中のはずなのに、こんなにノンスタが受け入れられていたのが、僕にも意外だったし、世間を自分も甘く見ていた恥ずかしいところです。

ノンスタ(かキンコン)が優勝したら、バカがいっぱい騒ぎ出すんだろうなと、少し嫌な予感もあって、お出かけ前にこういうエントリー書いてから、東京に向かったんですが、本当に書いといて良かったと思ったよ、本当にここで予想したバカ共がいっぱい出てきているようで、本当に情けないというか虚しい、もうお前ら来年からM-1見ない方が良いよ、多分貴方達が見なくてもM-1の視聴率には、そんなに影響しないと思うしね、そういう意味ではマーク層とスマート層とシュマーク層とかも、本当に巧いタイミングで書いておきましたねと、感心させられます(笑)。

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