お笑い評論に新規参入したいメディアが禁則事項とするべきこと
それはロックンロールやプロレスを、お笑いを語る時の切り口にしないことでしょう。
ダイノジ大谷の「不良芸人日記」: QJ編集部はどう読むのだろう
『splash!!』に関しては、期待もあったし、実際手に取ってみて、作り手の人たちの「お笑いが好き」という思いが、他のサブカル誌のお笑い特集と違って、感じることが出来ただけに、逆に不満が大きかったし、もったいないと思うことが多かったんですよね、その正体は何なのかなあと思っていたんですが、この大谷さんの感想を読んで分かりました。
この本も所詮、他のサブカル本のお笑い特集と同じで、「お笑いとロックンロール」というのを一つの括りにして語っている、そのことがオリジナリティを失わせているし、何よりお笑いの本質を語ることに失敗していたんだ、というのが凄いよく分かってしまった。
とりあえず新しくお笑いについて語る媒体を手がける人は、差別化の一番最初の一指しとして、「お笑いとロックを絡めない」ということを、まず第一に掲げるべきだと思う、ついでに「プロレスと比較してお笑いを語らない」というのも付けると尚良しでしょう。いやだってそのぐらい、いま書店で売ってるお笑い批評や紹介本は、ロックとお笑いを絡めて語ってるのばかり過ぎでしょう。もういい加減に、その切り口は食傷気味です。というかね「お笑いとロックは等しい」と言ってる人たちって、やっぱりどっかお笑いを下に見ているように聞こえる物言いなのよね、僕はロックの世界には、ビートたけしや明石家さんま、タモリ、所ジョージ、島田紳助、笑福亭鶴瓶、立川談志、上岡龍太郎、とんねるずといった人たちに匹敵する業績を残した人なんて、世界のどこ探してもいないと、僕は本気で思っているし、80年代にひょうきん族やとんねるずが、完全にテレビお笑い界というものを、ロックとかアイドルとかより上のものにして、それがそのまま固定されているんですよ、だからお笑いがロックなんかに比較され語られることは、不快なことでしかない(笑)。
まあそれは言い過ぎにしても、お笑いをいちいちロックとか、プロレスとか、そういうものに託けないと語ることが出来ない人たちによるお笑い語り、それに嫌気がさしている人たちは、絶対にある程度以上の層がいるんだから、そこを目がけても良いんじゃないかなあと思う。現実に「純粋にお笑いかが一番」と思っている人によるブログ批評なんかは、「お笑いが一番」ではなく「お笑いしか知らない」ような世間知らずな人が書いてるような、レベルが低いブログでもそこそこのアクセス集めているんだから、プロのライターや編集が、本気で「お笑いが一番」っていう価値観で、他のサブカルのノイズを乗せずに作れば、僕は他のサブカルお笑い本なんて、あっさり駆逐できるものを作ることは可能だと思いますよ。
しかしダイノジ大谷のこの本の感想も相当ズレてるよなあと思ってしまう、モンスターエンジンのインタビューは、この本のお笑い関連の記事で、一番読むところがなかったというか、この本について語るのなら、まずオードリーのインタビューから語らないと、嘘だろうと思ってしまう。はっきりいってモンエンはもちろん、甲本ヒロトよりオードリーの二人の受け答えの方が、遙かに格好良かったじゃないか。
というかお笑いなんていう10代や20代の人たちを刺激する、若者文化を取り上げようという雑誌の表紙が、甲本ヒロトなんていう、30代以上しか釣れないようなオッサンホイホイを象徴として釣れてくること自体、そしてそれを評価すること自体が、ズレ過ぎているというか、お笑いという者の本質を見誤っている行動だと僕は思います。いや本当にこれならミサイルマン岩部を表紙にするべきでしたよ。
『splash!!』については、中の人のブログとかでM-1感想とか呼んで、本当にお笑い好きな人たちというのは、凄い伝わってきていただけに、結局出来上がったものが、『クイックジャパン』の焼き直しみたいなものにしかならなかったのは、凄い残念に思っていたので、あえてここまで言わせて頂きました。あとダイノジ大谷は、吉本という枠組みで見たら、凄いアウトローで格好良い風に見えるんだけど、お笑い界全体まで引いてみると、やっぱり吉本の人だなあと思ってしまう。正直どっちも凄く惜しい、期待しているから残念、そういう思いにさせてくれる人たちではあるんですよね。だから大谷は「甲本ヒロトよりダイノジの方が格好良い」と思っている人たちに、メッセージを送ることこそ、いま一番に考えて欲しい。そういう人たちはムッチャ沢山実はいるんだよ、そのことに自覚的でいてほしいし、そんな人たちに「甲本ヒロトの方がダイノジより格好良い」何て悲しいことは言わなくて良い。
やっぱりお笑いとロックを絡めて語る文化って、鬱陶しいですよね(笑)、ユウキロックみたいにギャグでやっていたら良いんだけど、でもこういう流れがあると、ユウキロックは洒落でやっているということに気付いて貰えないんだろうなあ、実際にネタでロックキャラ止めてしまったから、ますます分からなくなってしまったかも知れない。
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