マキタスポーツの“屁理屈”という名の意思表明

マキタスポーツ | 屁理屈

演芸の一ジャンルとして、批評というものを確立したいというのは、いまさらブログで表明しなくても、過去のエントリーやポッドキャストの内容を聞いていると、少なくともマキタスポーツは意図的にそれを目指している、というのは勘のいい人なら分かるように、これまでも語っていたので、それほど驚くことでもないのですが、ただ僕はそれも芸人の余芸としての一ジャンルとして考えていたけれど、ここまで広くまた大きな事を考えていたことは、感じ取れなかったことは申し訳なく思います。
芸人間でのそれしか認めないというのなら、批評というのは“二番手の芸”どころか、ライブの打ち上げなんかでやっているような居酒屋トークやファミレストークの中の一ジャンルとしての、お笑い批評という枠を超えることはないと思う。でもマキタスポーツのこの意思表明は、明らかにその枠からはみ出ることを期待しているし、「批評は批評として一つの芸である」というのは、ブログ界隈で良く紹介されている岡田斗司夫のアニメ批評論とも近い考えで、批評というジャンルが独り立ちすることを期待しているし、自分がそれを担いたいと決意している。何よりも他にお笑い批評をしている連中に対して、ケツを叩くような事まで書いている。「板の上に立ったことがない奴が何を言う」という批評家に対する批判で、心を折れてしまう連中を痛切に批判している様は、自分の中の東京芸人さんの骨太イメージに近く、ビートたけし門下という意味を感じる。何というか感覚だけで言わせて頂くと、考え方が理系なんですよねえ、大阪には成功例としては島田紳助、必ずしも成功例でなくてよければ、ぜんじろう以降は絶滅したタイプでしょうが、東京はまだまだこういう理系の物の考え方で、お笑いを語れる芸人さんが出てくる土壌の広さと深さがあるのは、大阪にいると不思議で仕方ないです。
マキタスポーツの見立ての話は面白いんですが、ただ一方で危惧するところがあるのは、ダイノジ大谷のこの記事を読んだ時も改めて引っかかったんですが、吉村智樹さんなんかもそうなんですが、どうして昭和40年代生まれぐらいの、お笑いを語りたがる人たちって、どうもお笑いとロックを同一視して語るのが、ある世代にあってそれが凄い嫌なんですよねえ、しかも本人達は否定すると思うし、そんなつもりはもちろん無いと思うんですが、微妙に「お笑い=ロック説」を語る人たちって、比喩として見立てているというよりは、お笑いとロックを同一視したり、下手したらロックの方が上位概念として語ってしまっている人がいる時があるんですよねえ、まあ「お笑い=プロレス説」の人たちよりはマシなんですが(笑)。
別にジャンルに貴賤はないし、お笑いとロックがどっちがエライなんて不毛な話は、もちろん僕はする気もないんですが、ただお笑いを主題に、お笑いについて語っている時に、ロックやプロレス、もちろん文学や映画なんかもそうでしょうが、そういったものを比喩とか分析などの見立てではなく、お笑いを持ち上げるための担保として語られてしまうと、お笑い原理主義者の顔が少しだけ出てきて、「お笑いはお笑いだろう」と言ってしまう。
お笑い関係者が、ロックやプロレスを誉めたい時に、自分の所属するお笑いというジャンルを落として、ロックやプロレスを讃えるのはアリでしょう。でもお笑い関係者がお笑いを語る時に、ロックやプロレスの威光を利用して、お笑いを語るのはもう止めにしませんか?
なんかもっとお笑いジャンルの人を讃える時に、別のジャンルから比較するのが矮小化している事例って、あると思うんですよね、例えば明石家さんまとかタモリとかって、他のジャンルの人では喩えようがないぐらい、唯一無二の存在だと思うんですよねえ。こういう話をするのは、本来ならば望むところではないんですけれど、そう言われてしまったら、売り言葉に買い言葉的に「明石家さんまの存在感に匹敵する存在なんて、ロックスターやプロレスラーにいるの?」って思わず言ってしまいそうになる(笑)。
まあただお笑いを主題について語る時に、他ジャンルの威光を利用したり、他のジャンルとの思いを混同するのは避けた方が良いでしょう。例えばお笑いをメインフィールドにしている人が、ロックを語る時にお笑いをダシにして、お笑いを下げてロックを上げて語るのは、話法のマナーとしてアリだとは思いますけどね、あとお笑いをメインフィールドにしていない人が、お笑いを語る際はそれでも良いけれど、お笑いをメインフィールドにしている人が、お笑いを語る時には、別にお笑いを唯一無二の最強の存在と思わなくても良いけど、他のジャンルに寄りかかる語り口は、避けて欲しいなあと思ってしまう。

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