大阪府の財政再建プログラム試案が発表、黒字の大阪府立体育館の廃止も

大阪府:「おおさかの顔」も売却方針 不満の声も - 毎日jp(毎日新聞)

いま話題の大阪府の府営施設の統廃合問題について、どの施設を存続・縮小させて、どの施設を廃止するかという試案がまとめられました。黒字施設であり、大阪でやる大きなスポーツイベントを多数やっている、大阪府立体育館の廃止が最大の目玉で、跡地として売り出す事になるのか、黒字の体育館という事を考えて、体育館としての機能を存続させる意図のある買い手を求めていくのかは分かりませんが、黒字施設ならば買い手もあるでしょうし、ネーミングライツ的な広告効果、また経営効率を良くしたりすることで、黒字を膨らませる事も可能でしょうから、体育館として運営を続けるという前提で、買い手が付く可能性はあると思われます。
しかし本当に厳しい内容を突きつけられている施設、法人が多い事を考えると、やっぱり場所を移設した上で、資料館のみを存続させるという方針を提示されている、「ワッハ上方上方演芸資料館)」がかなり恵まれている、というのが本当によく分かります。
最初「ワッハ上方」が廃止されるかも知れない? という話が出た際には、「移転はかまわない、劇場施設が無くなっても良いから、資料館だけは守らなければいけない」と言っていた人たちが、いまだに存続運動を「移転はダメ、劇場施設がなくなると若手芸人が困る」と言って、存続運動を続けているのは、僕もそうやって存続運動に誘われたことがあったのですが、そう言っていた人たちが未だに活動を続けていることには、僕としては、もっと厳しい言葉を書けても良いんですが、不思議な気持ちになる、とだけ言っておきます。
僕は上方芸能の殿堂を作って、資料館として戦前からの貴重な文献や写真などを保存・展示する一方で、現代の上方芸能として多数のテレビ番組やビデオなどで、現代の芸人さんの映像を保存していくということは、凄い大きな価値があると考えています。ただそれを必要とする人たちは、場所がどこにあろうが見に行くのではないですか? 場所にこだわる必要は全く無い。千日前だけが大阪のお笑い文化の中心地であり象徴でないのは、ワッハ上方の小演芸場の中にある、大阪のかつての寄席のメッカの地図を見れば分かります。「千日前じゃなければダメだ」と言っている人たちは、資料館の展示物をきちんと見て勉強されていないのでしょうか? 千日前以外にも、上方芸能の殿堂にふさわしい場所はいくらでもあります。
僕は資料館の展示物では、殿堂入りした芸人さんの経歴などの展示物を読むのは大好きです。また宮川左近ショーが殿堂入りした際の展示されていた舞台上の写真が、いずれも素晴らしく格好良い物ばかりで感動したのを覚えています。ただ一方でカツラやツケ髭で紛争して写真を撮れるコーナーや、新喜劇の芸人さんの一発ギャグのビデオを見れるコーナーはいるのか? そんな物よりも上方芸能の貴重な資料を多く展示してくれよという気持ちや、どこのTSUTAYAに行ってもレンタルDVDとして置いてあるようなソフトを、無料閲覧させる必要はあるのか? 資料館を楽しみに来た来場者が、不快な思いをするような同施設の劇場を利用する若手芸人の振るまいというのは、そのままで良いのでしょうか?
その劇場施設の廃止というのも一つの争点というか、ワッハ反対運動で音頭を取っているような師匠クラスの芸人さんや、評論家や大学の先生は資料館が大切ですが、いま現場で署名を集めている人たちにとっては、この劇場施設の廃止というのが、反対の主眼となっています。しかしこれに関しては、僕にはなにが反対の根拠と出来るのかが分からない。安く借りれる施設として公共施設でないといけないというのなら、いくらでも大阪府の他の存続が決まった施設、大阪市の市営施設(区民センター、生涯学習センター、etc)もあるし、民間の施設だってインターネットや足を使って探せば、いくらでも安く使える劇場はあるんですよ、僕だって尼崎とか西九条とか東大阪とか豊中とか、いくらでもワッハと同じぐらい、ワッハより安い他の市営施設や民間の施設はあるのは、すぐに調べれば分かる事です。
そんな場所では客が来てくれない? それを言ったら、熱心な人はどんな場所でも来てくれるし、逆に場所が分かりにくい、遠い場所にあったら、お客を呼べないというのなら、そんなレベルのライブの為に、府民の税金は余計使わせる訳にはいかないでしょう。麒麟baseよしもとのレギュラーになる前は、大阪市内ではない郊外でライブやっていたらしいけど、最後はお客さんをそれなりのスペースの会場で満杯にしていたらしいし、良い場所にあるから客引きが楽だから、なんていう理由を持つ事自体が、芸人を育てる環境としてはマイナスでしょう。売れていない芸人の活動拠点は、「こんなしんどい場所からは早く抜け出したい」と思う場所でないと、良い環境が与えられすぎているいまの状況は良くない。
ワッハ上方は劇場設備が素晴らしい、区民センターでは演芸を快適に見る事が出来ない、演者も演技に集中できないというけど、それも同じ理由で贅沢なことですよ、東京や名古屋の芸人さんが、どんな場所で勉強会やライブをやっているか、そこにお客さんを呼ぶためにどれだけ努力しているか、そういう事を考えたら、これは大阪の若手芸人にとって、温室から出るチャンスと取っている人は、決して少なくないですよ、東京には会議室でやっているライブもあれば、自分の自宅マンションのリビングを開放して、お笑いライブをやっている芸人さんまでいるんですよ、売れていない若手芸人が何を贅沢言っているのか、そんな場所でも見てくれるファンが付くように、そんな場所でも見に来たいと思われる芸を磨くように努力しましょうよ、「ワッハでないとお客さんを呼べない」なんて情けない事を言わないでほしい。
そういう恵まれた場所ばかりでやっているから、大阪の芸人が売れていない状態で東京に行くと、「せっかく東京に行ったのに、事務所から浅草にばかり行かされている」と卑下するような言い草で、東京の演芸場や古いライブスペースを腐すような言い方を、大阪に帰ってきてするんですよ。
島田紳助なんかが「ワッハのリストラに反対」と、堂々とテレビ番組で表明したのは、その辺のことを全部知っているからじゃないか? という気持ちにもなっていますよ、絶対にあの人は色んな状況を見て聞いて感じて知っている気がして仕方ない。
しかしこの財政改革案を見ていると、目立つ府営施設の統廃合よりも、医療や教育、老人福祉や少子化対策、空き交番などの治安対策の予算が大きく削られているのが目に付きます。

総額238億円の医療費助成事業の見直しでは、高齢者や障害者、ひとり親家庭、乳幼児を対象にした助成について原則、月1千円の自己負担額を1割負担とすることなどで、計13億6千万円を削減する案を提示した。
asahi.com:橋下知事、1100億円歳出削減案 「賽は振られた」 - 政治

財政再建試案は、改革PT自身が「非常に厳しい試案」と認めるように、府立施設や出資法人の見直しだけでなく、高齢障害者、乳幼児のための医療費助成や私学助成(授業料軽減)のカットなど、府民の痛みを伴う領域にまで踏み込んだ。
「【視点】大阪府の財政再建プログラム試案」政治も‐地方自治ニュースイザ!

橋下知事にかなり好意的な記事が目立つ産経新聞でも、こういう書き出しから記事が始まっていて、続く文面もかなり厳しい論調になっているぐらい、府民の生活に直接響くところに手を付ける試案となっています。
これを突きつけられている状態で、僕たち府民はワッハの事を気にかけている場合じゃない、ワッハ上方よりも少子化対策、空き交番問題、教育問題や老人福祉の方が大切だよ、自分の子供ではないけども、身近な人に子供が出来て、自分の親もそろそろ還暦を迎えようとしている、周りの親世代がほとんど老人になっていき、自分の同世代の仲間達の多くが、幼子を抱えるようになってきた。治安や教育、福祉や医療がカットされるのに、一部の人たちのための、民間でも代替えが可能な施設が、多くの税金を使って維持されるというのは、許されるべきではない。
博物館、資料館は府でないと運営できない、守るべき上方文化です。しかしそれが千日前でないといけないという理屈は、2億8300万円という巨費をかけてまで必要な事なのか? 演芸場やレッスンルームは民間施設や他の市営施設などで代替えの効かない施設であり、守るべき上方文化といえるのか? それらに対する説明や反論というのが、いまワッハ上方の存続運動をしている人たちは、あまりにも府知事や府庁、そして府民に対して説明しないままに、ただ反対とだけ繰り返しているのは良くない。それは完全に運動のための運動であり、完全に負け戦モードに突入しています。本当に存続運動を盛り上げたいのなら、府民に伝わる形での主張と説明、そして自分たちも血を流す決意を表明するべきです。それが出来ないんだったら、これはあくまでも試案ですから、反対運動している人たちが変な事を言ってるのを聞かれたら、「千日前にないと意味がないのなら、じゃあ潰しましょう」という事になっても知らないですよ? というか、一般の人に向けて伝わる言葉で言わないと意味がないよ、という普通の事を言う人がいないという所が、いまのあの施設の周辺のダメなところでしょう。本当に存続を現実的に求めていくのなら、もっと人の心に届く行動と言動をしてほしい。それをしてこそ芸人さんでしょう。

考古学者の直木孝次郎さん(89)は、「(中国古代に書物を大量に燃やした)秦の焚書(ふんしょ)にも比すべき暴挙だ」と憤慨する。
大阪府:「おおさかの顔」も売却方針 不満の声も - 毎日jp(毎日新聞)

例えばこれは違う施設の廃統合に反対している人の言葉ですが、こういう極端な事を言い出すと、人の心は離れていってしまう。「ワッハは演芸の育った千日前にあるから意味がある。」という言葉に対して、「例え2億8300万円を毎年払ってでも?」という言葉を向けられたときに、人の心に響く回答を用意してほしい、それが出来たら勝ち目はあるよ、ということを存続運動に身を投じている友人諸氏の皆さんに訴えたいです。芸人なら人の心をつかむ言葉で訴えてください。いまのワッハを巡る廃止運動は、芸人もワッハの職員もライブ主催者も、みんな必死なだけで、ちっとも人の心に響かない。お笑いの場所を守るための運動が、笑いの無い必死の形相でみんなやってどうする。
ただビルの貸し主が吉本で、賃料が2億8300万円というのは、新聞では既に報道されるようになったけど、テレビでは色々な気遣いでまだそれほど大きく扱われていないけど、それが表に大きく出るようになったときに、「吉本にビルの賃貸料値下げ」というのを求めなかったら、存続運動には多くの反対が寄せられるでしょう。今日はテレビである芸人さんが「2億8300万円は高い」と千日前での存続に懐疑的な意見を語っているの見たからね、芸人で存続に反対する人は島田紳助以外にも出てくる可能性もある。

  • おまけ

くいだおれ人形 - ネット番長日記

なんかねこっちの方が税金を使って守るべき、大阪文化という気がするよなあ(笑)。一私企業の収益物に過ぎないかもしけないけど、それを言ったらワッハも似たようなもんなのが現状なんだし、 「くいだおれ人形」ほどの認知も「上方文化の象徴」というコンセンサスも府民の中で取れていないのに、「ワッハ上方」が無かった12年前までは、大阪に上方演芸の象徴たる、顔となる場所は無かったんだろうか? ワッハは本当にいまそういう存在なんでしょうか?
いまワッハの歴史を確認するために、ワッハ上方のサイトを見たら、凄い変なコメントを見つけたので紹介します。発言者は作家の難波利三です。

難波氏も「お笑いは大阪の地場産業。文化で収益を上げることはできない。ワッハのような公の施設は大阪でしかできない。」
ワッハ上方

お笑いは地場産業なのか、「収益性を上げる事が出来ない文化活動」なのか、はっきりして頂けないでしょうか? こんな訴えが第三者に届くわけがない。直木賞作家の言葉としてはあまりにも残念です。