糸井重里の明石家さんま論は面白い

現在やっている「さんまシステム明石家さんまの睡眠論」「タモリ先生の午後 2008」も素晴らしいさんま論の連続でしたが、これは1999年の連載らしいですが、面白かった。

第16回 そして、タモリ : ほぼ日刊イトイ新聞 -吉本隆明・まかないめし。

ですから、「さんま御殿」は、
システムとしてだけ言えば、
僕は、そろそろ危ないなと思っているんですよ。
第16回 そして、タモリ : ほぼ日刊イトイ新聞 -吉本隆明・まかないめし。

引用した所ではなく、15回のケツにやっている話が一番面白いんですが、そこはもう読んでくださいと言うしかないです。しかしこういう指摘を1999年の段階で出来ているのは、やはり糸井重里は凄い。実際にこの後で続いて書いている「オンブに抱っこでダメになったTVバラエティのシステム」というものを2008年時点の現状を、確実にこの段階で予想していた。
もう一つ糸井重里の言葉から。

さんまさんの、やっぱ、天才性って、
あの、絶対に芸のない子供を相手にしての、
あっぱれさんま大先生」っていう番組ありますよね。
(略)
あれ、できる芸人さん、僕、
ほかに絶対いないと思う。
世界中にいないと思いますね。
第16回 そして、タモリ : ほぼ日刊イトイ新聞 -吉本隆明・まかないめし。

僕が以前に「『新婚さんいらっしゃい』を見て勉強しろ」と書いたときに、「なんで『恋のから騒ぎ』って言わなかったの?」と言われたのですが、僕の中では「恋のから騒ぎ」は違うんですよね、『あっぱれさんま大先生』はドンピシャなんですが、2007年の段階では番組の内容が変わってしまっていて言えなくて残念でした。本当は『あっぱれさんま大先生』と言いたかったし、『明石家電視台』のインタビューコーナーでも良かったのかな? まあでもあそこでは、あえて三枝さんの名前を出しておきたかった、という所もあります。
しかし糸井重里が面白いと言っている、さんまさん、タモリさん、鶴瓶さん論や、ナイトスクープの面白かった頃の話というのが、ほぼコミュニケーション論を中心に回っている所が面白いです。これは1999年の時点でも、2008年現在のインタビューでも同じで、糸井重里の興味がそこにあるというのが、僕にとっては凄い新鮮だし楽しい話題になっています。
さんまさんが「今の若い奴はネタは面白いがフリートークが面白くない。」と語ったのは二年前の事ですが、今読むとさんまさんの言いたかった事が、更によく分かるようになってきました。多分ですけど、さんまさんやタモリさんや鶴瓶さんなら、30分番組だったらゲストの話を聞くよりも、一人でネタとして完成している話題を話した方が、多分面白いんですよ、少なくともアベレージは絶対にそちらの方が高い内容になるでしょう。でもそれだとある程度の天井があって、それ以上には行かないというのを、誰よりも本人達が一番知っているんでしょうね。
いまの若手芸人が「トークの勉強」というと、すぐに『すべらない話』を持ち出して勉強していると言うんですが、おそらくだけど、さんまさんの言ってるトークには、入っていないと思うんですよ、どちらかというと『すべらない話』ってネタ話なわけで、それは漫談であって、フリートークではないですよね。
今の若手の芸人さんやタレントさんは、「知らない人と、ある程度のまとまった決まった時間を、どうしても喋らなくてはいけない状況で会話をする」という訓練がされていない、その辺の能力差にさんまさんや鶴瓶さんと、いまの若手では歴然とした差があるし、それを埋めるための場所というのも、そういった番組が無くなっている。
楽屋ネタで盛り上がる番組や、お題について一方的に喋る番組やライブでは難しいし、フリートークを中心としたライブを、トークの勉強としてやっているのは、若手のお笑いライブなどで東西共にありますが、芸人だけの空間で視聴者や劇場のお客さんが、みんな出演者の人間関係を全て理解していて、約束事も分かっている状態の喋りというのは、さんまさんが重要と言ってる「どうしても話さなければいけない状況で話す」という行為ではないですよね、この辺のコミュニケーション能力というのを、発揮する場所もなければ、それが養われる場所もないままでは、そりゃいつまで経っても冠で司会をする芸人というのは、さんまさんや鶴瓶さんの世代が、いつまでも続いてしまうと思います。
結局この辺のコミュニケーション能力の無さというのが、共演者だけでなく、お客さんとのコミュニケーション能力というのにも跳ね返っているし、アウェーに弱いというより、普段の自分たちの劇場以外のお客さんの嗜好に合わせられないという要因にもなっている気がする。
伸郎さんや谷村さんが「若い人の感性にはついていけない」といって、ヤンタンを辞めたという話も、結局お客さんとコミュニケーションを取ろうとしているから、「分からない」と思えるんですよね、いまの若い芸人さんはその辺を理解しようと言う人が、少なくなってきている。いまのお笑いのブームが、コミュニケーションを伴っていない方向なのは、お笑いがマニアだけの物になっていっている状況や、テレビバラエティの現在の方向性の問題とか、若手芸人がアウェーに弱いという話に、色々と結びついてると考えています。
この前ファンダンゴ見ていて面白かったのは、「秒殺」というルミネの一発ギャグのイベントを放送していて見ていたんですが、そこで関西からただ一人ジャンクションの下林さんが行っていたのですが、一発ギャグ本編は別に僕はそんなに興味ないんですけど、下林さんはほぼ初対面みたいな芸人さんばかりだったし、そんなにルミネも経験がない感じだったのですが、東京とはいえ同じ吉本の芸人さんというのはあったにしろ、初めて絡む人たちの前で物怖じしていなかったのはもちろんですが、積極的にギャグの合間やギャグと絡めて、色んな芸人さんと接触していって、かなり早い段階で息の合う人を見つけて、最終的にハロバイ金成さんとコラボレーション出来ていたのは、別にギャグ対決で優勝とかなったというのは、別に今後のキャリアには何にも役に立たない事だから、どうでも良いんですが、そういう能力を示していたのは、今後のジャンクションの飛躍に期待出来る面が見れた気がしました。
しかし「楽屋話」「大喜利」「エピソードトーク」一つ大きな番組があって、ちょっとレベルの低い人たちが出る同種番組が一つあったら、それで良いやん、テレビやライブの作り手も、芸人さんもいまブームになっている物ではなく、違うものに自分の可能性を見いだしてほしい。

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TVバラエティ 笑福亭鶴瓶 松嶋尚美

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