『新ソード・ワールドRPGリプレイ集Waltz (2)』(篠谷志乃,グループSNE/富士見書房)

朝一で読みましたけど、なかなか評価の難しい一冊になっていると思います。「猫は勘定にいれません」さんやAmazonのレビューでも、「善人プレイ」とでも言うべきPCの演技プランというか、GMよりもPC側が設定に対して課している制約がキツ過ぎて、白々しいとか息苦しいというのは確かにあるんですが、ただ僕は1巻の「旅立ち・お祭り・子供たち」の時の方が、それを強く感じていたので今回はマシになったなあと思いましたが、それでもまだクドイといえばクドイですよね、世間知らずでお人好しとするにしても、ナジカのキャラクターは今後レベルが上がって話しが大きくなったら、枷として大きくなりすぎてしまうと思うし、PCがお金を多く持てない、自分たちの為に使えないということで、アイテムや武器の補強も出来ないということを考えると、これは舞台が西部諸国ということを考えると、あまり大きな話しにしたくない、某バブリーズや某へっぽこーずや某ぺらぺらーずのように、救国の英雄みたいな話に持って行きたくないという意図はあるのかも知れませんが、このままで続けたら「アンマント財宝編」の失敗再びですよね。
ただやっぱり基本的にいいひとがいいことやって、ハッピーエンドな物語ですから、読後感がある程度さわやかなのは確かなんですが、というか歴代リプレイで考えても、GMとPCのどちらかがエゲツないこと仕掛けてくるリプレイをSWでは、延々とここ十数年読み続けていたから、山本弘GMの第2シリーズ以来の正統派リプレイとも言えるんですが、制約の多いロールプレイとナジカのキャラクターは読んでる最中のストレスが大きいので、キャラクターや設定に大きく変化を付けるとか、そろそろしないと三巻以降は苦しそうです。案外、そんなに長くない三巻か四巻ぐらいで終わらせるつもりなのかも知れませんが。
ただこのリプレイは、本来のリプレイ本の目的である、プレイ方法の例示とか、ゲーム世界のワールドガイドという目的は、過去のどのソードワールドリプレイより成功していると思いますし、前任者がグループSNEを抜けてから、時間が止まっていた西部諸国の設定やキャラクターが動き出したのは良かったと思いますし、こういう小さい話を動かしていくのに長けている篠谷さんのような人が引き継いだのは、良かったかなあと思いました。
山本弘だと、話がすぐに重くなっていって、ワールドガイドどころじゃなくなっていくし、清松みゆきは西部諸国ネタ考える時間あったら、早く「混沌の大地」の続きを書いてくださいとか、「赤い鎧」の最終回ってまだですか? とかいうことになるし、このまま西部諸国はSNEの若手の活躍の場所になってくれると嬉しいかなあと思います。山本先生ももうソードワールド関連の仕事は、ノベライズ以外はやらないっぽいですしね。
だから凄い正統なTRPGリプレイ本だと思うので、何とか人気が出る形で続いて欲しいですし、善人が基本的に性善説で動くというのは、歴代のSWリプレイではあまりなかったことで(笑)、その辺は藤澤さなえのあとがきには結構同調したクチなんで、巧く続いて欲しいんですが、やっぱり読んでる最中に息苦しいと読者に思わせている部分は、あまり上手くいっていないということだと思うので、次巻以降の方針として考えてみて欲しいです。
こういう一般常識のない正義感の強いキャラって、普通の物語でもなかなか扱い難しいのに、こういうリプレイ本のキャラとしては、難しいなんてもんじゃないと思うんですが、そう考えるとへっぽこにおけるイリーナというキャラクターと、イリーナの周辺の人の配置は絶妙だったなと改めて感心します。まああれはキャラクターはもちろん、GMも「世間はそんなに甘くないんだよ」というのを、突き付けてくる人だったからかも知れませんが(笑)。
あとこの本の帯で浜田よしかづ先生の「突撃!へっぽこ冒険隊できたて」が4月1日発売、そしてサブタイトルにある巻数を表す数字が「0」ということから想像するに、これまでの単行本には未収録の単発ネタと、お蔵入りになった幻の第一回が、おそらく収録されているであろう、ぺらぺらーずの新刊も4月20日に出るということで、こちらも楽しみです。

新ソード・ワールドRPGリプレイ集Waltz 2 (2)
新ソード・ワールドRPGリプレイ集Waltz 2 (2)
篠谷志乃 グループSNE

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