M-1グランプリ2005 大阪1回戦4日目

この日については先に合格者について一通り触れた後で、気になったコンビについて書いていきたいと思います。とにかくこの日は「ゲンセキ」芸人、ここ最近にビーイチに勝ち上がったコンビが複数登場で、この五日間の大阪予選でトップ3ぐらいの出来もあったので、要注目でした。
合格者リストはM-1の公式サイトか、¥15,000日記さんにてご覧になってください。

まずは合格者から。

フロントストーリー

ここはBグループのはずだったのに、会場入りしたときにフロントストーリーがネタをやっていてビックリしました。一時間間違えたのかと思ったら、フロントストーリーはこの日のガンガンライブのMCということで出番順を早くしたとか、でもガンガンライブのMCやることはもっと早くに決まっていたんだから、最初からこうの順番にしたら良かったのに、baseでよくやっている占いのネタでした。
前年は島田紳助曰く「ここで落とされる漫才師は辞めろと言われていると思ってほしい」という2回戦での敗退でしたが、一年経っていまや押しも押されぬbaseよしもとのエース格に成長しているフロントストーリー、今年の躍進に期待したいです。

ホーボーズ

腹の立つ強盗のニュースというネタでしたが、その肝心のニュースキャスターのコント部分にはいるまでの枕のしゃべりがどうしようもなかった上に結構長くて、前半は×、後半は○で、総合△という評価をしていたのですが、これは後でも書きますが、どうも設定に入るまでの話がつまらない上に長いという失敗をするコンビが1回戦を通じてみて多かったです。

ビルドアップ

本ネタはドラえもんサザエさんを題材にして英会話を教えるというネタで、これは結構面白かったんですが、前半にドラクエとかアメリカ国歌の話をしたんですが、これがあんまり面白くなくて、それならさっさと導入時に「あの俺英語の先生ってやってみたいねん」という入りで、さっさと設定に入った方が良いなと思いました。

けもの道

相方の言ったしょうもないダジャレとか小ネタに、過剰に「むっちゃおもしろい」とか「天才が現れましたよ!!」と反応するというネタ、ここに入ったら力が違ったけど、このネタ自体はけもの道の中で見たら普通。

ジャルジャル

漫才風の導入も、「コントしまーす」みたいな言い訳もなく、いきなり自己紹介もなしにコントで始まる開きなおりっぷり、しかもネタが3日のビーニビーコードでやった職業差別、病気差別満載ネタで、「おまえら決勝どころか準決勝にすら行く気がねえだろ」と思いましたよ、ホンマに好き勝手やってやるという宣言に取れましたね、ただ流石に職業関係の所は完全に削られ、病気関連も一つだけ残っただけだったんですが、これがこういう場ではそういうネタはいけないという判断からなのか、単純にネタ時間が短いから削っただけなのかは微妙なところだと思いました。
「おまえには俺がHEP FIVEに見えるだろ」という今日のMVPフレーズも飛び出して、危ないネタも織り込んだ敢然コントにもかかわらず合格しました。

ジェシ

吉本ホルモン女学院で中等部から高等部に復帰して、そのまま居残るきっヵけになった応援団のネタを持ってきて当然合格。いやあ良かった良かった。

隆司剛史

サラリーマンのアマチュアコンビ、相方が緊張し過ぎてお釜になるというネタで、僕はそんなに好みではありませんでしたが、確実にお客さんを笑わせていました。

プラモデル

マチュア女子高生コンビ、お姫様のシミュレーションというネタだったんですが、掴みが自分たちの胸が貧乳だという話で、そこからも時々思い出したかのようなタイミングで、物凄い下ネタをぶつけてくる、また嬉々として下ネタ言いまくる方の子が、高橋愛風の美人さんで、会場中の男を思いっきり照れさせていました。いやあ女の子は強いわと思いましたよ(笑)。

タローと、マイコ

相方を亡くした平川タロー師匠が、娘さんかお弟子さんか分かりませんが、若い(といっても30代ぐらいだとは思う)女性を連れての出場、天気予報のネタなんですが、なんか今風にしようしようとしている感じが逆に違和感になっていて、これだったら浮いてしまうかもしれないけど、タローさんの世代にあったネタをやった方が良いんじゃないかなと思いました。

ロデオボックス

今日のトップ3の一つが登場、本来はコントのコンビらしく、完全に設定に入り込んだネタで、学級会の設定でお互いの悪口、特に親の悪口を言い合うというネタで、ここまで前三日も含めて一番の客ウケでした。いくら素人に囲まれて役者が違うとはいえ、正直漫才形式でここまでやってくれるとは思いませんでした。準決勝は確実に上がるでしょうし、そこそこ受けていたにもかかわらずこのコンビが先月のビーイチバトルで落ちたのは本当に理解不能、投票した客もバカだし、そんな結果になるシステムをやっているbaseよしもともどうかと思う。

さるつかい

高校生、もしかしたら中学生とも思えるような幼い感じの男の子二人組、ファーストフードのネタでしたが、西のツインズといってしまえるほどの実力がありました。素人コンビ特有の立ち位置や話し方がなく、3回戦ぐらいまでいく可能性はあります。

田中上阪

はい今日のハイライト、もうここに関してはこのネタをやってM-1グランプリの決勝の舞台で爆笑取っている姿が目に浮かびましたよ。一緒に見ていた人ともそういう話になったのですが、ズバリ田中上阪が今年の「麒麟枠」でしょう。このネタ以外にも他に良いネタは三つ以上ありますし、このネタを本番で持ってきても掴みの電話の部分で確実にお客さんと審査員の心を鷲掴みにするでしょう。元々そんなに台本が優れているというコンビではないだけに、いまの絶好調の調子さえ維持できれば、一気に準決勝の壁を越えられるでしょう。このコンビはいまのピークが10月で終わってしまうか、11月まで持つかということだけが鍵、11月を乗り切ればM-1本番までは惰性でいける。

ペットボトル

電車オタクをベースにしたリアクション芸、こういうキャラネタは1回戦は強い。

天竺鼠

実はこの前の出番がハートハットという、おばあちゃんコンビで、ミュージカルというか歌謡漫才で、最後が斉藤清六ばりの「ばいなら」で終わるという、飛び道具というか完全に会場の空気が変わってしまった直後だったため、この後のコンビは可哀想と見ていたら、見事に掴みで前に出ていたコンビを使って会場の空気を戻して、そのままこの日の前日のビーコードでやっていた「コント栃木」の漫才を始めたのですが、前日に盛り上がった良いイメージを引き継げたこともあったのでしょうが、ある程度尺のあるネタをM-1予選の持ち時間である3分に短縮する際のチョイスが見事で、昨日面白かった部分だけを綺麗にチョイスして爆笑が途切れないネタを持ってきたのは見事でした。
実は10分ぐらいある劇場サイズのネタを3分や4分のテレビサイズといわれるバトルやこういった賞の審査用のネタにチューンナップするというのは、凄く難しいというか、この自分たちのネタの中から受ける部分を抜き出すというのは、案外例えばbaseの人たちで見ても、キャリアが6年目や7年目以上の人たちでも案外失敗しがちで、いまトップ組やビーイチにいる人たちでも、自分たちの面白いところを客観的に分析して、長いネタを短くチョイスするということを苦手としている人たちは多いです。
しかし天竺鼠は自分たちを客観的に見て、どこが一番受けるかというのを分かっているわけですから、これは非常に大きいですね、ネタ選択に失敗しないタイプになる可能性が高く、あっさりと来年、再来年の賞レースを取っていって、そのままの勢いで売れていくんじゃないでしょうか。

難波横山

サンタクロースやコカ・コーラトリビアのネタ、うまくまとまっていて当然の合格なんですが、正直、現役ビーサンビーサン経験者はこのぐらいの水準で皆来て貰わないとなと思ったのも事実です。
以下、落選コンビで印象的だったところです。

うぬぼれん

ネタはドラえもん欲しいというネタだったのですが、立ち位置、マイクの使い方、喋り方、いずれも素人丸出しで、おもいっきりグダグダだったのですが、漫才としての型は決まっていて全く噛むことも台詞を飛ばすこともなく進行するけど、クスリとも笑えないネタをする人たちが多かった中で、このコンビや合格したプラモデルのように、舞台上での細かい所作に素人丸出しの危うさがある方が、形ばっかり決まっている人たちよりずっと良かったです。

三浦マイルドフルート白木

ピン芸人三浦マイルドさんが漫談をやって、最後の最後でフルート白木さんが出てきて「ありがとうございました」ということをいって終わり、しかも何故かヘリウム吸引の声でした。

ギリギリセーフ

という名前だったんですが、ギリギリアウト、というか完全アウトだよというネタでした。もうどう説明しても問題あるので、すみませんが流させてください(笑)。アウトの理由はマジものだったからという理由なんだすもん、説明できないよ(笑)。

クリームソーダ

大阪のオバチャンコンビ、片方はモロにもたいまさこ似だったんですが、ただいままでのオバチャンコンビと違って、どこか芝居慣れを感じたので、もしかしたらどこかの劇団とか素人芝居の経験者なのかもしれない。ただその芝居とかやってる設定が東京の小劇団っぽい感じで、東京の小劇団がコントで大阪のオバチャンの設定をやっていたみたいな漫才で物凄い違和感があったのですが、若干出オチ気味だったのが落ちた理由でしょうか。
ただどうもこの日か前の日ぐらいから、アマチュア、特にオバチャンコンビとか、キワモノコンビへの審査基準がかなり厳しくなっているようで、どうも初日や二日目にそういうコンビを上げすぎた帳尻を合わせているようにも見えました。実はこの1回戦は毎日のように審査員が変わっていて、前に吉村智樹さんが2回戦、3回戦、準決勝とステージ毎に審査員が違うのはM-1の問題と指摘していたのですが、ステージ毎どころか同じ1回戦でも日によって違うんですよね、1回戦は特に日数も多いので余計にそうなんですが、この辺がプロはともかくアマチュアコンビは日程の有利不利がかなりある、また前半の予選でこういう傾向のコンビを多く上げすぎたみたいな調整が後半以降働いたりするし、審査員が日ごとに違うのは27回も予選が全国であれば、審査員のスケジュールも押さえられないから仕方ないんですが、でもせめて審査基準をある程度均一化するような審査員ミーティングはきちんとしておいて欲しいですね。

河童

サザエさんをどろどろした番組にするというネタ、サザエさんがアナゴさんと浮気していてとかそういう内容でしたが、ここまで「サザエさん」と「ドラえもん」は本当にかぶりまくっていました。誰でも分かるネタということで選択しているんでしょうが、ここまで設定がかぶりまくるのはちょっとどうかと思う。老若男女が知っていて古典になっているアニメ・マンガということでは仕方ないんでしょうが、それなら「クレしん」「ちびまるこ」「両さん」なども使って良いのではという話に一緒に見ていた方となりました。

バーン

正直、ここが落ちたのは意外、というか落とされたところで、「なんでここが落ちたのか」という疑問をここまで強く感じたのはここが初めてでした。ネタがドラクエだったからかもしれませんが、しかしさっき書いたこととかぶりますが、「ドラクエ」とか「ドラゴンボール」とかは、もう漫才の設定として普通にやって良い、基礎教養と認めてあげて欲しいんですけどね、「鞍馬天狗」とか「児雷也」とかが日本人の基礎教養でなくなってきて、漫才やコントのネタに出来なくなったように、新しい日本人の基礎教養として、知らない方が悪いという設定はもっと増えても良いのではないでしょうか。「オタク的教養のない奴と話してるとイライラする」ではないですが、このぐらいのことは基礎教養として貰わないと、もう漫才やコントは見れないよということは、漫画やアニメ、野球やサッカーについてはあると思う、ただ本当に実力のあるコンビはいきなり『ヨハン・リーベル』ってタイトルでコント始めても余裕で大丈夫なんですけどね。

総括

ということで、ロデオボックス天竺鼠、そして田中上阪の三組が大きく実力の差を見せつけてくれました。この三組は普通に準決勝に残る候補として期待したいです。田中上阪に関しては決勝までの期待を持ってこれから見ていきます。