サッカーマガジンの永井洋一の特集記事を受けて

色々と考えようとして練っていたらJ-KETで知り合いが色々と書いていたので、あっちで考えている途中の話をしてしまった(笑)。大きく白か黒かではなく、個別項目をきちんとみて項目ごとに評価しようというのは、典型的な物書き資質だなとは相方や他の1on1のゲストとしゃべっていても思いますが。
で、永井氏について。永井洋一氏に関しては主に二つの問題があると思います。

  • ジャーナリストとしての評価基準、公正性

ジャーナリストとしての評価基準、公正性については、今年のツールドフランスで現地のテレビ局のコメンテーターに、兄弟レーサーで有名だった兄の方がコメンテーターをやっていて、弟がレースに出ていたのですが、たかが中継するテレビ局のコメンテーターというだけにも関わらず、「レースに出ている人の身内がコメンテーターをしているのは公正ではない」という批判が起きていたそうです。そしてお兄さんの方はかなりそれを意識して、最終日(最終日は一部のポイント賞争いしている選手以外はほぼお祭りのパレードレース)まで一貫して弟であることを意識しないように気を付けていたということもおしゃっていました。実際弟の方はかなり苦しいレースの日もあったのにもかかわらずです。
こういう例を引くまでもなく、永井洋一氏の元教え子に対する評価の仕方は、仮にもサッカージャーナリストの肩書きもサッカーコーチとともに持つ人としては、あまりにもお粗末です。身内によるひいきの引き倒しと指摘されるような者は、著しく公正を欠いたものであり、日本のスポーツマスコミにおいてそれが横行しているというのが事実であったとしても、ちょっと永井氏の最近は度が過ぎていると思います(一時期のラモスさんに近い、というかラモスさんよりヒドイかも)。

  • サッカーのプロコーチであるという肩書きに対する依存度

こちらはスーパーサッカー後藤健生さんに働いた無礼でもう説明しなくて良いような気もしますが、W杯のときにスカパー!解説者の多くの人が視聴者に好感を持たれた人の多くが「視聴者にサッカーの見方を教えるなんてエラそうなことではなく、ちょっとでもお役に立てれば」視点というのがあった、湯浅健二さんなんかがいま支持されているのも、「教えてやる」目線口調ではないところが人気の要因だと思っています。
しかしワールドカップジャーナルでテレビで彼を始めてみたとき、あの人は最初から「おまえらにプロコーチのおれがサッカー教えてやる態度」が満々で、えのきどさんも相当嫌そうでしたが(笑)、さっきお題目に挙げたコーチという肩書きに依存というのとはちょっと違うかも知れませんが、困ったとき、自分の主張をとおそうとする際に「おれはプロコーチだ!!」という印籠というか看板を使おうとするところの反発というのは相当大きいと思います。
この二点が主に彼が嫌われる理由であり、彼の書いたものや発言に対する不信感につながっていると思うわけです。で、最初から自分の原始的というか最初の思想の部分に結論があり、そこに持って行く。そしてちょっと困ったら、「いや私はプロの指導者だ」と開き直るというのが彼の問題点と思うわけです。
総論がむちゃくちゃ……というか結論ありきの所に持って行くために、色々と各論を持ち出しているというのが彼のやっていることであって、おそらく雑誌の編集部やテレビにコメンタリーとして引っ張ってくる人も、そういった結論に持って行くための強引な話術にエンタメ性を、また特に読者に暴論として議論を巻き起こす所などから、正しい正しくないではなく議論点を導いてくれるなどというところで評価されて起用されているのだと思うのですが、まず「各論は正しいよ」といってもそれはどうかと思います。「4-2-3-1は素晴らしい」「中村俊輔は素晴らしい」と言う結論を導くために、それに導くための材料を持ってきて並べているだけという風に私は思えたので、各論は正しいと言われても、自分の中で最初から導きたい結論にもっていくために用意して並べただけの各論は正しいという評価はちょっと違うんじゃないかと思いますし。論議のネタを提供するといっても、それは声がデカイ人が勝ちみたいな話にいまはなってきていると思うんですよね。ゴールデンタイムの芸人は前に出てデカイ声でリアクションが大きければ勝ちみたいなのと同じ事になっている気がします。そりゃ西部謙司さんはマイナーなままのはずだよ(苦笑)。
とりあえず永井氏を評価する声というか、見るべき所はあるよという声は前から他にも言ってる人はいたんですけど、誰でも納得できる各論を色々と並べて、自分の導きたい総論に持って行こうとしている以上、各論に見るべき所有りといわれてもどうかと思うし、やっぱり読者とか視聴者をプロコーチという肩書きを使って下に見て話をする永井氏というのを客前に引っ張り出してくる編集長やテレビのディレクターというのは、やっぱりちょっと問題あると思います。
私は永井氏の「これが絶対に正しいんだ、他の考え方はみんな馬鹿なんだ、中村俊輔は日本で一番うまいんだ、おれがいってるから間違いないんだ、おれと違う考えのやつはみんな馬鹿なんだ」という物言い、物の書き方だけで、全否定しちゃって問題ないと思っております。そういう中でも見るべき所はみて議論を深めていこうというのは正直頭の良い人たちの中だけでやってほしくて、それに一般庶民の読者を巻き込まないでほしいので、やっぱり週刊サッカーマガジンであの人を出すのはどうかと思う(笑)。サッカー批評ならまあしゃあないかと思いますが(笑)。
とりあえず話している内容以前の人格の問題で、切って捨てる、全否定するというのはそんなに問題とは思えません。少なくともエンターテイメントレベルのマスコミ媒体に露出している以上。これが学会の研究発表とかなら違うんでしょうけど、それならそれで僕には関係ない世界ですしね(笑)。総論の結論だけで評価せずに、各論を個別評価していこうというのは、物書き資質のある方や研究家などの資質なんでしょうかね、相方なんかとも話していても思っていたのですが。